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Cf205―アリストレイン―

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Cf205―アリストレイン―

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12.宴と旅の終わり
――、一般車両3号車


「ちょっと、なんですか!? あの部隊硬すぎであります!」
 WLOの組織だった攻撃に後退してきた吹雪が嘆く。防御に高く、室内戦想定の武装が彼らの優勢を推していた。
「加勢するよ!」
 笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)が【対物機晶ライフル】を構えて、2号車ドアをぶちぬきながら、紅鵡がアリサに挨拶する。
「はじめまして、僕は紅鵡て言うんだよろしく。ここは任せて先に行って!」
「ありがとう、紅鵡さん」
「早く上に!」
 真司が窓ガラスを割り、誘導する。ヴェルリアの【グラビティコントロール】でアリサを列車の天井へと上げようとする。
「外に出るやつを追え! 彼らがアレを持っているかもしれない!」
 ルイスが命令する。
「ファンドラ行くのじゃ!」
 唯斗と相対する刹那の横を抜け、ファンドラがアリサを追う。
「此処から先には行かせん」
 ファンドラの前にローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)が立ちはだかる。コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)を武器化して構える。アリサたちのいる3号車が危ないと聞いて、駆けつけたのだ。
「どいてくれませんか? これも仕事なので」
 《チェインスマイト》を構えファンドラが警告する。警告後、ローグが動く気がないとわかると、すぐに攻撃を打ち込みに行った。


――逃げた先には殺人鬼がいた。

「おっと、これはそこの車両はまだコンプリートしてなかったよ。」
 3号車の天井。
 このCf205は3種類の新車両によって構成されている。
 動力たる運転車両、豪華寝台車両とセレモニー車両、そして一般車両と本来別々の車両が連結していた。故に、殺人鬼トレインジャックにとっては殺し場が同時に3カ所も用意されているようなものだった。
 そして、殺す場所は車内でなければならない理由はない。マークを残せればそれでいい。
 アリサに殺人鬼が襲い掛かる。何の変哲もないナイフで斬りかかる。
 鴉が現れて、攻撃を防ぐ。
「やっとご対面できたな。殺人鬼」
「僕に何かようかい?。」
「殺しに来た。そういう仕事ってことだ」
「なるほど。困ったね。僕はオタクなんでね。コンプリートを埋める前に死ぬのは嫌なんだ。」
 拳で手のひらを叩く。
「そうだ。君をそこで殺せばこの車両は一応コンプリートだ。ちょうどいいからZAPZAPZAP。」
 デリンジャーの早打ち。鴉は《超感覚》で躱し《バーストダッシュ》で殺人鬼に接近する。
「そうはいくか!」
 《疾風迅雷》で刺殺しに向かった。



「えい! 逝け! 改造人間咲耶! と愉快な構成員(なかま)たち!」
「嫌です! 死にたくなーいっ!」
 ハデスの言うことを聞かない愉快な仲間たち。無謀にも前線に出てしまったら、文字通り蜂の巣であの世逝きだからだ。
「貴様らそれでも悪の組織の構成員か!」
「……ああもううっせー!」
 怒号が響いた。
 寝起きの頭を掻き、むすりとした顔で柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が起き上がる。
「ああもうねみぃ……人の静かな睡眠時間を邪魔しやがって。この罪重いぞ、オリュンポス」
「なんだ、貴様は……おい! 何をする!」
 すたすたとハデスに近づき首根っこを掴み。
「外道殺すべし。慈悲はないと知れ!」
 外へ向かってオーバースロー。窓が割れてハデスは異次元空間へと投げ出された。
「兄様!」
 咲耶の悲鳴が上がる。異次元に投げられたら助からない。
 首領を失いオリュンポス全員の動きが止まる。
「おい、そこのおっさんたち」
 ルイスを呼び止める。
「キケンブツってのはそこにあるみたいだから、とっとと回収してくれ。くれぐれも静かにな」
 そう言うと恭也は席に戻り、再び眠りにつくのだった。


 外の死闘にて、殺人鬼がなかなか倒せないでいた。
 《グラビティコントロル》で側面すら縦横無尽に動き回る殺人鬼トレインジャック。ただのオタクの殺人者かと思えば、全くもってそうではなかった。

 車体側面に対し垂直に立つ殺人鬼。
「頑張るねぇ。でも空間的に君等はボクよりフリだ。わかるかい?。」
 口調がオタクの時とも車掌の時とも違っていた。饒舌に喋る殺人鬼が問う。
「御託か?」
 煉が言い返す。自らに《グラビティコントロル》をかけて相対できるのは彼ぐらいだった。
「享受さ。ボクは世界中の列車という列車で殺しをやってきた。それこそ。新台でも出ない限り全ての。わかる? 言わば列車という空間はボクの独壇場さ。それが外だろうと関係ない。」
「確かに地的有利はお前にあるかもな」
「それにここは電柱も無ければ対向車もこない異空間。側面だって十分に活かせる。車体構造も研究していない君等が勝てる道理があるはずない。」
 殺人鬼にとっての勝ちとは、第一から第三車両において殺しを終え、印を付けること。
 そのあとはどう逃げてもいい。一人殺して逃げるだけなら、彼にとってこの状況難しくはない。自分だけこの異空間から脱出するプランもある。
 勝ちは揺るがないと殺人鬼は確信する。
 だがだ――
 彼の立つ側面、つまりは車窓が割れる。
 割れた向こう側からハデスが投げられたのだ。
「……な。」
 殺人鬼の足場が消える。いや、ハデスの体が足場に変わり、自身も何もない空間へと放り出された。
 瞬時に判断でハデスを蹴って、車両へと戻ろうとした。
 が、彼の体は列車には戻らなかった。蹴る方向が全く違っていた。
 鴉に足を切断されていた。
 切断された足とけった足場は列車の天井に飛んでいた。
 二人をタコ――イングラハムの足が伸びて回収した。
 殺人鬼の体は虚空に飲み込まれ消えていった。
「良かったな電車男」
 告げる。
「お前の足跡(スタンプ)で最後の列車がコンプリートだ」