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朱色の約束

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朱色の約束

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終:朱色の空





 夕日が沈んでいこうとしている頃。
 全てが終わった荒野の片隅では、事後処理の慌しさの最中にあった。
「負傷者はそっちに……あ、軽症者は学人の方へよろしく」
 ローズがそうやって治療やその指示に追われていると、その横をアリーセが慌しく通り抜けると、こっち、とイコンを手招きしていく。
「破損が大きな部品から交換してくださるそうですから。急がず並んでください!」
 そして、丈二やルカルカたちもまた事後処理に追われているというのに、仮の現場指揮者であるはずのスカーレッドは、それらを任せてしまったまま、崩壊してしまったゴーレムの亡骸の前から、まだ動こうとしなかった。
 嘆くことはせず、悲しんでいるような素振りも見せないが、毅然としたその背中は、いつもより僅かに頼りなく見える。
「迷惑をかけたわね」
 隣に立つクローディスに向けられた言葉に、言われた方は肩を竦めた。
「お前が絡むとだいたいこうなるんだ、今に始まったことじゃない」
 冗談めかしながら、その肩にぽん、と手を置いたクローディスに、振り向きはしなかったが、スカーレッドは小さく笑うようだった。
 そんな二人に、やや控えめに天音が声をかけた。
「……止めることは不可能だったのかな?」
「命令を認識できなくなってたし、無理でしょうね」
 首を振ったスカーレッドは、悲しむでもなく静かに言った。
「もう、守るべき家も、主人もいなくなってしまっていたのに、ね」
 体の殆どを失って、守るべき場所を失って、眠っていたゴーレム。
 傷ついた体を引きずりながら、沈黙していた理由すらも忘れて、遠い昔の、たった一つ残った命令、いや約束を果たそうとしたのだ。最早、その約束は、守る意味さえも無かったというのに。
 それでもそれを、滑稽だと笑うものは、誰もいないだろう。
「せめて眠らせてあげるしか、解放する手段は無かったわ。だから……皆、ありがとう」
 しゃがみ込んで砕けた亡骸に触れ、それに祈るように、謝罪するように、スカーレッドは殆ど原型を失った紋章の上に口付ける。
 そんなスカーレッドに、最期に破片をサイコメトリしていた菜織が口を開いた。
「あのゴーレム、最期に手を伸ばしたであろう」
 その言葉に、意味を問うスカーレッドの視線に、菜織は複雑に笑った。
「気づいたのさ……”シア”だと」
 つまり、最後のあの手は攻撃ではなく、ただ彼女が幼い頃そうしたように、手を伸ばしただけなのだ、と。
 成長した姿を最後に見られたんだ、きっと、安らかに眠ったであろうさ、と続けられた言葉に、スカーレッドはほんの僅かに切なげに、笑って見せた。

「……そうだったら、良いのだけれどね」


 朱色に染まる空の下、そう言って目を伏せたスカーレッドの元に、ダリルの伝令から手術成功の報告が届くのは、あとほんの数秒後のことだった。



担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

ご参加された皆さま、大変お疲れ様でした
今回も皆様のこだわりや熱意を、大変楽しませていただきました
イコン戦も2回目と言うこともあり、ほんの少し判定は厳しくなったかもしれませんが
結果的に、ツァンダに到着されることなく、無事ゴーレムの軍勢を止めることに成功いたしました
本当のところ、ぎりぎりまで攻め込まれるかと思ったのですが

また、正直予想外なほどに細部までつっこんでアクションをかけていただきまして
本来おまけ要素的なものでしかなかったスカーレッドのあれこれを引き出していただき
この結果を迎えることができました
ありがとうございます

それでは、またお会いできることを、心よりお待ちしております