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コンちゃんと私

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コンちゃんと私

リアクション

 
 
「さあて、それじゃスタッフで美味しくいただきましょう!」
 嬉々として美夜が言った。
「ええええ」
 積み上げられた大量の邪神焼きを見上げて、霧羽沙霧が涙目になる。
「うう……僕の知ってるたこ焼きじゃない……うー、無理。多分無理絶対無理……あれ、美味しい?」
「ほらっ、だから言ったじゃない。コレも功徳よ!」
「邪神焼きっ! 邪神焼きっ! うれしいなっ」
 むしろ目を輝かせて、セレンが山を崩しにかかる。
「コンちゃんは確保し損ねるわ、ララはまだ復活せんわ……あとはもう邪神でも食うしかあるまい」
 なんとなく物騒な目つきで、リリ・スノーウォーカーがそっと竹串を手に取った。
「アレを直視して倒れた人たちには、コレはちょっと刺激が強いですからねぇ」
「再度SANチェックが発生してしまうな」
「仕方ないですね、私たちでいただきましょうか!」
「納得いかん、何故お好み焼きではダメなのだ」
「……悪いけど、あたしはちょっと……」
「……ん、なんか、気の毒で……」
 ステージゾーンにいたメンバーに辞退者が多かった原因は、わかっていない。

 喧噪の中で邪神焼きを頬張るルカルカを呼び止め、事件解決に協力を感謝すると伝えた鉄心は、その反応に困惑した。
「え? 事件解決って……え?」
 ルカルカは目を丸くして、鉄心とダリルの顔を交互に見た。
「え? 邪神? 本物の?」
 こういうイベントだと思っていた、と顔に書いてある。
「……どうりで、テンションがおかしいと思った」
 横でダリルが脱力しながら呟くのを聞いて、鉄心は、どういうコメントをすべきか悩んた。
 しばらく考えていたが、結局、彼は無言でため息をついた。


 そしてパークを襲った「巨大な邪神のような何か」は、それから小一時間で彼らの冒涜的な胃袋に収まった。


 コンちゃんの姿は最後まで見つからなかった。
 その「抜け殻」と疑われるものの一部はいくつか発見されたが、ほとんどが引き裂かれて原形をとどめておらず、半ば本物のタコに変質している部分もあり、それが本当にコンちゃんの成れの果てなのかは確認することができなかった。
「安易に邪神に関わった者の宿命ですよ」
 エッツェル・アザトースの言葉に、誰も答えられる者はいなかった。
 

「……コンちゃん、いないの」
 モンロちゃんが、お父さんの腕にしがみついて泣いている。お父さんは黙って彼女を抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「……たこ焼き、いかがですか?」
 作業服のスタッフが一人、異様な盛り上がりを見せているファクトリーの方からやって来て、たこ焼きを一皿差し出した。
 たこ焼きなのか邪神焼きなのか、一見して区別はつかない。まだほかほかと湯気を上げ、削り節がふわふわと踊っている。
 その動きが少し、先刻散々追いかけ回された不気味なもののの動きを思い出させるような気がして、お父さんは丁重にそれを断ろうとした。
 しかし……
「……ありがとう」
 モンロちゃんは涙に濡れた顔を上げ、丁寧にお辞儀をした。お父さんは何も言わず、微笑んだ。
 たこ焼きを受け取って食べ始めようとするモンロちゃんに、彼は聞いた。
「たこ焼き、好きですか?」
「だいすき! たこやきも、コンちゃんも!」
 そう答えて、モンロちゃんはたこ焼きを食べ始めた。
 たこ焼きは元来凶悪な食物だ。だから、食べるときはみんな真剣な顔になる。
 真剣な顔でたこ焼きを頬張るモンロちゃんを、男は優しく見つめた。
「貴女のおかげで、コンちゃんは最後まで、みんなの人気者のタコのコンちゃんでいられたんです。ありがとう。どうか、ずっとたこ焼きを好きでいて下さいね」
 そう言ってお父さんに頭を下げて去ろうとする男に、モンロちゃんがふいに顔を上げて、小さな声で聞いた。
「コンちゃん?」
 彼はモンロちゃんを不思議そうに見て、それから微笑んでもう一度頭を下げ、去って行った。



 おしまい。
 

担当マスターより

▼担当マスター

寒月堂

▼マスターコメント

こんにちは、寒月堂です。今回は、ご参加&ご拝読ありがとうございました!

さてさて。
モンロちゃんは無事お父さんと会えました。きっとこれからもたこ焼きが好きな素直な子でいてくれると思います。助けてくださった皆様、ありがとうございました!
一方、コンちゃんは……因果応報という結末になりました。
たこ焼きパークは、人死には出なかったものの一般客に多くの被害を出してしまったこと、施設の被害が大きいこと、新オーナーと現スタッフの不協和音が解消されないことで、残念ながら、再開の予定が立たない状態のようです。
それから、コンちゃんが何故「あんなもの」を召喚できたのか、また何故「あんな方法」で解決できたのかについての説明も入れようかと思ったのですが、あまりにダラダラしてしまうので、略!
大体のところは中で書いてしまった気もしますし、そんな大それた設定ではなくて「あんな感じのアレなのかー」って雰囲気で大雑把に考えていただければ……という感じでございます。とほほ。

いつもそうなのですが、期限いっぱいいっぱいで中々個別メッセージや称号に手が回らないことが多く申し訳なく思っています。
もっと精進せねば……っ!

それでは、また次回があることを祈りつつ……。

※追記
2012.06.04 キャラクター名のミス、誤字・脱字、改頁ミス等を修正しました。