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リアクション
第5章 スカイレイダーVSバンディッツ
反撃の狼煙は確実にあがっていた。
至る場所で、雌雄の決着が行われていく。
六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、記者の感でそれを悟った。
【ライトニングランス!!】
雷属性を帯びた槍で高速の二突きを繰り出すと、武器を落としたバンディッツは戦意を失う。
当初、空中戦では経験差が出ると思っていたが、次第に差が縮まってきた……。
いや、基本能力の差で逆転したと言っても良い。
【サンダーブラスト!】
グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は空中に雷雲を呼び出すと、稲妻を解放させる。
周囲のバンディッツは、それを逃れるために周りを旋回するが、ドラゴンの【スティリア】がソレを許さない。
【スティリア】は吹雪を撒き散らし、その氷の角を振り回すと、敵を撃ち落す。
「主よ、敵前に立つのは私にお任せ下さい。私は主の鎧にして槍! 主には指一本触れさせません!」
【龍鱗化】したアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)は、まさに鉄壁の防御を誇っていた。
向かってきた弓を身体で受け、【シーリングランス】で宙に飛ばすと、必殺技でトドメをさす。
『全ては我が主の為に! ランスーバレストーッ!』
宙に浮いて、受身の取れなくなったバンディッツに怒涛の突進攻撃。
ただでさえ、強力な攻撃なのに、彼の乗っているのはドラゴンの【ガディ】である。
ガディの重量×スピード×突撃は、方程式では計れない。
これでは、敵もたまらないだろう。
「私も、見ているだけでは駄目ですね。」
ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)も、イコンのプラモデルである【ミニアインス】と【ミニツヴァイ】を取り出す。
ミニでプラモデルと言っても、戦闘兵器イコンを元に精密に作られており、再現度は高い。
内部に仕込まれた機械で、ロアを護るように空を舞っていた。
「そろそろ、降参するべきだと思いますが……。」
「ぎぃやあぁぁぁ!!」
浮島の一つでは、断末魔の叫びが響き渡っていた。
バンディッツを捕らえた、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)とヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が尋問を始めたようだった。
最初はどうすればいいのか、戸惑っていた呼雪だが、ヘルは鞭を手渡すと笑いながら言ったのだ。
「尋問と言えばコレだよ!」
「ひぃぃぃっ!!?」
「踏まれて悦ぶくらいになれば、きっと何でも喋ってくれるようになるよ!」
優希がゾッとするような、サディスティックな笑顔であった。
「踏まれて喜ぶなんて、ただの変態じゃないか。でもまぁ、それが効果的なら……。」
呼雪は鞭を振るうと、バンディッツの身体を打つ。
「ひえええええぇええぇっ!!」
その後のバンディッツは哀れ、貪り食われる小動物のようであった。
悲鳴、戦慄、官能……。
バンディッツは切なげに身悶えしていく。
☆ ☆ ☆
「歴戦の回復術!!!」
目の前で戦う杜守 柚(ともり・ゆず)は、指を高く上げると周囲の仲間の身体を回復させた。
白い輝きは不思議と傷を癒し、疲れを無くしてくれるように思える。
「何だよ。こいつら素人じゃねーぞ。」
「やばいな。腕利きの連中が揃ってやがる。」
バンディッツの方も、生徒らの実力に気づいたようだ。
地の利を活かした前半とは違い、いつの間にか防戦一方になっている。
たがが、少女だと思っていた目の前の柚にも、武器を石化させられてしまっていた。
「今だ、轟雷閃!!!」
杜守 三月(ともり・みつき)は雷属性の武器を奮い、ヒットアンドウェイで責めたてていく。
そこに優希が参戦すると、敵は戦意を失い、降参する者も出てきた。
「お、俺たちの負けだ。命だけは助けてくれ。」
「私たちは、貴方達の命を取りに来たわけではないです。」
柚と優希は、言葉を揃えて答えた。
だが、三月だけは強い口調で問うた。
戦略的には、当然と言えば当然であろうが。
「君らはアンバー・コフィンを知っているか?」
「んっ、アンバー? コフィン……ってなんだ。」
「あ、あぁ……あの伝説のお姫様の事か!」
最初、何の事だがわからない様子だったが、空賊の中の一人が思い出したように答えた。
「お前達、琥珀の眠り姫を探しに来ただか?」
「えぇ、それもあるけど、ここはドラゴンやらワイバーンやら色々なモノが集まるし、ここに何か特別なモノでもあるのかなと思いまして……。」
「特別ねぇ……、でも、琥珀の眠り姫はただの噂話だと思うぞ。俺達は何回もここに通っているが、誰一人見たことはねぇな。」
「じゃあ、貴方達はどうして、このセンター跡に来ているのですか?」
優希の記者魂が、言葉を紡いでいく。
しかし、その返答は平凡なモノであった。
墜落する飛空艇や飛行船、そのパーツや物品を取る為であり、別にアンバー・コフィンの為ではないようだ。
「…………。」
落胆する柚ら。
下の方でも、呼雪とヘルが腕で×印を作っていた。
尋問の効果はあったが、情報はたいしてなかったらしい。
☆ ☆ ☆
アンバー・コフィンの謎はわからないままだが、空中戦はクライマックスを迎えようとしていた。
「よっしゃあ! 『シャーウッドの森』空賊団の実力発揮だぜ! まずはこっちに来てもらうよ。」
フィンと言う名のワイルドペガサスに跨ったシェルティス・ラグナ・イース(しぇるてぃす・らぐないーす)は、両手を大きく広げると【風術】で、気流を変化させた。
「な、何ッ!? 引き寄せられる。」
バンディッツらはヒポグリフの手綱を握ると、抵抗するように身体を動かした。
だが、同じく『シャーウッドの森』空賊団の長原 淳二(ながはら・じゅんじ)による、光条兵器が敵を襲うと、それを避けるべくシェルティスに引き寄せられてしまう。
「俺は、俺のできる事をしただけだ。」
淳二はセミロングの髪をかき上げると、シェルティスに視線を送った。
立ち向かうしかなくなった敵は、腰のショートソードを抜くと、シェルティスに切りかかる。
だが、【歴戦の防御術】でそれらを避わしたシェルティスは、二刀の剣を舞うように扱い、敵を切りつける。
一の太刀、ニの太刀、三の太刀……四度目を切りつけたとこだろうか、天馬は下空しシェルティスは再び【空術】を使用した。
「うおぉぉッ!!?」
痛めつけられた身体に、吹き荒れる嵐のような風が追い討ちをかけ、敵は上昇していく。
フィンは、命令されなくとも天を駆け、先回りするように敵の目の前に立ちふさがる。
「まだまだぁ!」
「くそっ、簡単にやられるかぁ!!」
順手に持った右手の剣と、逆手に持った左手の剣を回転させ、連撃を与えるシェルティス。
金属音が何度か鳴り、反撃で切り傷を幾らか受けるも、剣技はシェルティスの方が上回っていた。
最後に【空術】をもう一度使用すると、バンディッツらは力なく墜落していく。
「さて、次は誰かな?」
シェルティスが、敵に睨みをきかせると向こうの方から、リネン・エルフト(りねん・えるふと)の声が響いた。
「シェルティス!! 淳二!! こっちも手伝って!!!」
「副長!!?」
「リネン!!?」
リネンは『シャーウッドの森』空賊団の副長である。
彼女は、翼竜に跨ったキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)を筆頭に敵の殲滅を図っていた。
☆ ☆ ☆
「よし、死にたくない者は道を開けろ!」
中央からキロスが道を開くと、リネンらが後に続いた。
その流れはまるで波の如く、敵の動きを寸断していく。
「クスッ、同じ空賊でも、バンディッツとスカイレイダーの性能の違いを見せてあげないとね。」
リネンは、迫り来る弓矢を避けるように【バーストダッシュ】で加速すると、光の輪を作るように指を小さく回して、敵に向けた。
すると、敵の周りの気流の流れが変化し、翼力を失ったように落下していく。
それも一体ではなく、次々とだ。
「タービュランスの味はどう? 他にご馳走して欲しい人はいるかしら?」
リネンは投げキッスするように、妖艶な笑みを浮かべて、周りを見渡した。
バンディッツらは一時足を止め、冷や汗を流しながらこちらの動きを伺う。
「予告しておくわ。至宝はあたしたちの仲間が手に入れ、船の墓場は消える……あんたら、逃げ場はないわよ?」
ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は、その状況下で次のような言葉を放った。
『挑戦者』と名付けられた白鱗の飛竜も、口から小さな火炎を見せながら威嚇する。
この言葉の意味を読むのであれば、勝利を確信しての事だろう。
それは、義賊『シャーウッドの森』空賊団の団長の言葉でもある。
結末を伝えるように後方では、フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が遊撃隊を引き連れながら敵を叩く。
「ドッグファイトか! 面白れぇ! 相手になってやろうじゃねーか。」
互いに最も有利な、背後を占位しようとする様、ドッグファイト。
巴戦となったフェイミィは、天馬の背を蹴り、自力飛行による戦闘を行った。
空中で乗り物を使わず、ヴァルキリーの機動力に勝てる者はなかなかいない。
この時も、彼女は敵の背後を取ると、リネンに向かって叫んだ。
「騎獣に頼り過ぎだぜ、遅せぇ! 今だ、リネン!」
その声を聞いたリネンは、空を駆けると聖剣を大きく振るう。
三筋の跡が空を走り、敵の叫び声があたりに響いた。
すると、バンディッツの武器、鎧がボロボロと海に落ちていく。
リネンは微笑むと、指先で敵の額を示した。
「エアリアルレイヴ……、次はココを切り裂くわよ。それとも降伏する? 交渉は『シャーウッドの森』空賊団、うちらの団長としてね☆」
剣を腰に差すと、リネンはハンドガンを取り出し、空に向かって一発撃った。
この空域を制圧した事を伝える、勝利の弾丸である。
その一筋の光は空のかなたへ消えていく。
☆ ☆ ☆
「みんな、すごい……すごいよ。」
南天 葛(なんてん・かずら)は東の空にて、キロスらの活躍を見ていた。
先ほどはキロスらに助けられたが、キワノやヴァルベリト・オブシディアン(う゛ぁるべりと・おびしでぃあん)を危険な目に遭わせてしまった。
ダイア・セレスタイト(だいあ・せれすたいと)は『気にする事はない。』と言ってくれたが、何かが心に引っかかる。
(戦いは嫌いだけど……、この傷はいいの?)
【ブライトブレードドラゴン】のキワノには、いくつもの傷があった。
ドラゴンライダー自身の戸惑いが、キワノに伝わり、それがこの結果を招いていた。
しかも、翼竜らはその戸惑いを見透かしたように、葛に襲い掛かってくる。
(ボクは戦いたくないのに、どうしてみんなは虐めるんだ!!)
葛は目を瞑った。
だが、大きな影が彼の上空に現れる。
「よぉ、坊主。めんどくさい事をしてるな。」
「キロスさん!!」
それはキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)だった。
西側の空を制圧した彼は、西の葛の元にやってきたのだ。
「お前、先ほど、オレの事を師匠と呼びたいって言ってたな。」
「う、うん。」
「オレは一匹狼だ。弟子はいらないが、一つだけは教えてやろう。龍を上手く乗るコツは意志の強さだ。」
「意思の……強さ?」
「戦う理由を考えてみろ。それが龍に伝われば、後は龍が勝手にやってくれるさ。最強なんだぜ、本来ドラゴンって奴はな。」
(最強……? ボクのドラゴンが……?)
葛はキワノを眺める。
最強だったら、どうして傷を負っているだろうか。
無論、戦う理由がないからだ。
じゃあ、理由とは何なのだろうか。
「ギャアアーーース!!!」
そうしている間にも敵は迫ってくる。
理由……、理由……、理由……、そんなものは見つからない。
葛は龍が大好き過ぎて、全ての龍と友達になりたいと思っているだけだ。
でも、全ての龍と仲良くなる為に、キワノは傷ついてしまった。
(ボクが……護れれば……)
その時、葛の頭によぎった言葉。
護りたい――それは簡単な理由だった。
最強なんだ、ドラゴンは――。
「えへへっ、そーだよね。キワノ、ごめんよ。戦いは嫌いだけど、仲間を護るために必要な事もあるよね。ボクだって、ドラゴンライダーなんだ。きっと上手くやれるはず。」
葛は一度キワノの身体を撫ぜると、大いなる意思を示す。
【龍の咆哮!!!!】
葛は一度頷くと、辺りを揺るがすような雄たけびを上げた。
その雄たけびは龍族のモノで、【ブルーブレードドラゴン】のプルーンとキワノに気合が入る。
そして、キワノは口を開くと、周囲から光を集中させた。
『ゴオオオオオオッ!!!!』
ドラゴンのブレスである。
一筋の光が海の上を疾り、波を巻き上げた。
その威力は、近づきつつある翼竜を慄かせ逃走させていく。
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