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壊れた守護獣

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壊れた守護獣

リアクション

「もう、射っても射ってもキリがないわね。というか本当にダメージ与えられているのかしら」
「沙夢〜! ケガした人たちの回復終わったよー」
「そう、ついでに私もお願いしていいかしら?」
「りょ〜かい!」
 他の契約者たちの回復にあたっていた雲入 弥狐(くもいり・みこ)が『ヒール』を使用して、奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)の傷を癒す。
「ありがとうね。にしても、あれだけの攻撃をしても倒れないなんて考えられないわ」
「ううー回復で走り回って疲れたよー……甘いもの食べないとダメだー」
「これが終わったら何か食べさせてあげるから辛抱しなさい」
「ほんと!? わーい!」
 喜ぶ弥狐を横目に沙夢はどうするべきか考える。先ほどから、『野生の勘』を使用していて、何かあると踏んでいるのだがそれを見破れないのだ。
「実際に、見てみないことにはわからない感じ……だけど近づくのは危険か。とにかく今は攻撃を続けるしかないかしら」
 自分の力量不足を悔やみながらもタイニー目掛けて的確に矢で攻撃していく沙夢。だが、考え事をしながら戦っていた沙夢は一本だけ、矢をあらぬ方向へと放ってしまう。
「ああもう! 集中しないと!」
 一本だけよろよろと天に向かい丁度タイニーの真上で自由落下を開始する。そのままタイニーの液体金属へと吸い込まれるようにして落ちていく。
「あれじゃ、金属に弾かれて意味ない―――――」

―――――オぉぉぉぉォォォォぉぉぉぉぉおおぉオオおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉオんッッッ!

「うわっ!? なになに!? なにがあったの!?」
「……タイニーが苦しがってる?」
 あらゆる攻撃を受けても少しの苦悶の表情しか見せなかったタイニーがどうしたことか。今は苦しみのあまりに暴れ回っている。原因は沙夢の蝿も射殺せない撃ち損じた矢によるものだった。
「……もしかして!」
 ある一つの可能性に気づいた沙夢は『バーストダッシュ』を使用して高くジャンプする。そして見つけたのだ。タイニーの背中、その真ん中にある液体金属で覆われていない箇所、弱点を。
「二体の守護獣にある弱点がもう二体にはないなんて、ずるすぎるものね! 確かめてみないと!」
 ジャンプした状態から『ダブルインペイル』を使用して弱点と思われる箇所目掛けて弓を放つ。見事に狙い通りにタイニーの背中部分に奥深く突き刺さった。すると。

―――――ガアアッ、オぉぉぉぉォ、アアアぉぉぉぉおおぉオオおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉオんッッ!?

 更にタイニーが苦しむ。やはり、液体金属で覆われていないあの箇所は弱点のようだ。これだけ攻撃しているのに覆わないところを見ると、何かしらの理由で覆えないのだろう。
「どうしてかを考えている暇はないわ。他の人と協力してあの弱点をつかないと」
 沙夢はすぐさま他の契約者たちの元へと向かうのだった。

「という訳なの」
「なるほど。つまり背中の中央付近にあの液体金属では覆えない弱点があるのだな?」
「そう、だからここは協力してあの弱点をつきましょう。他の人にはタイニーの注意を引き付ける役に回ってもらいながら、各チームから弱点に向かう人を一人決めてもらったから、あなたのところからもお願い! 私が弓を雨のように降らしたら攻撃開始だから! それじゃっ」
 沙夢に話しかけられていたのは夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)だ。弱点の話を聞いていたところだったのだ。それを聞いていた彼のパートナーである草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)の三人は口を揃えて言う。
「そなたしかいまい」
「甚五郎しかいないでしょう」
「甚五郎、頑張ってください」
「ん、そうか。まあお前たちには気合が足りないから。ここは気合が足りているわしが行こう!」
 満場一致で弱点に乗り込むのは甚五郎となった。決まった直後に沙夢からの合図である弓の雨がタイニーに降り注ぐ。同時に甚五郎たちは駆け出す。
 当然、動きを察知したタイニーもそれを迎え撃とうと残った液体金属で向かってくるもの全てに攻撃をする。
 しかし、度重なるダメージのせいで狙いが甘いままの攻撃になってしまいすいすいと避けられてしまう。
「これなら楽勝か?」
「油断するではない。最後の攻撃が来るぞ! 用心せい!」
 羽純の予言どおり、タイニー最後の攻撃が全員に降りかかる。体を必要最低限守るための金属以外は全て棘状にし、全方向に射出させたのだ。
 こうなってしまえば狙いも何もない。無数の棘が契約者たちへと降り注ぐ。
「敵ながらあっぱれだな!」
「甚五郎、これを」
「ブリジット? ……これはおぬしのコアではないか」
「一度自爆します、許可を」
「するわけないだろう! というか何度目だ!」
「ですがそれ以外に私には何も」
「……ブリジット! 弾幕援護を頼む!」
「っ? 了解」
 ブリジットは言われるがままに『弾幕援護』を使用。飛来する敵の攻撃を打ち落としていく。その隙をぬって甚五郎は突貫する。
「助かったぞブリジット! 自爆以外でも役に立つじゃないか! これからも頼むぞ!」
「……はいっ」
「これはワタシも負けていられませんね!」
「じゃのう。こちらからもいくぞ?」
 負けじと羽純とホリイも攻撃に参加。それぞれ『サンダーブラスト』、『オートガード』を使用して甚五郎を援護。降り注ぐ棘の雨を掻い潜る。
三人の援護もあり、甚五郎は先行して弱点へとたどり着くことに成功した。ほとんど同時に他の契約者たち、それにアッシュと鉢合わせになる。
「まさかウィザードの俺が敵の体の上にいるとはね。驚きだ」
「……なるほどねぇ。これが弱点か」
「これは、一体?」
「見つけたときはただの体表部分だと思っていたけど、何か出てる?」
 順にアッシュ、誠一、トマス、沙夢が喋る。そして真人が弱点を見破る。
「多分ですが、この液体金属を液体に保つための器官の一つかと思われます。だからこそ、ここを覆ってしまうのは不可能だった。という感じでしょうか」
「つまり僕の攻撃でも弱点には当たっていたけどピンポイントで攻撃したわけじゃないから、ダメージが軽減されてしまった、てことだったんだねぇ。いやはや、恐れ入るよ」
「だが、それもこれで終わりだな! わしの気合の前には抗えんからな!」
「ええ。もう終わらせましょう、懸念はありますけどね」
「例え何があったとしても、今は前に進まなければ」
「同感。もう矢のストックだってなくなりかけてるし」
「それじゃ、終わらせるとしようか。おやすみだよ」
「援護ばっかりで疲れちまったよ。悪いが眠ってもらうぜ! タイニー!」
 六人が一斉にタイニーの弱点に思い切り攻撃を仕掛ける。すると、タイニーの動きがぴたりと止まった。
 数秒後、もはや形容することもできない叫び声をあげてそのまま大地に倒れたのだ。
 激戦の末、ようやく契約者たちはタイニーを倒したのだ。