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邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

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邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

リアクション

「足跡の様子から見ても、そろそろ出会えそうなものなんだけど……どう? センサーには何か引っかかってない?」
 しゃがみ込んでミッツ達捜索隊の物と思われる足跡を確認していたヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は、後方のリネン・エルフト(りねん・えるふと)を振り返って尋ねた。
「ちょっと待ってください……」
 リネンは銃型HC弐式を見つめて生命体の反応を確認した。
「駄目。何も――あ」
「何!? 見つかったの!?」
 ヘイリーは立ち上がってリネンと一緒に銃型HC弐式を覗きこむ。
 すると、画面の端っこの方に微かに反応が出ていた。

 走り出す 『シャーウッドの森』空賊団 団長 ヘイリーの後を、副長 リネンとフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が後を追う。

 ヘイリーが反応があった場所に到着すると、そこにはうつ伏せに倒れるミッツ・レアナンドの姿があった。
「……見つけたわよ」
「ん……あぁ、よぉ」
 ミッツは顔を上げて苦笑いを浮かべた。
「空賊団御一行がこんな所に何の用事だい?」
「何ってアンタを助けに来てあげたのよ。
 フェイミィ、手伝って!」
「了解だぜ!」
 ヘイリーが【ナーシング】と【歴戦の回復術】を、フェイミィが【治療】をミッツにかける。
「助かるな。いやさ、ここに来る途中で、こうビュッと飛んできて毒弓にやられてさ。
 もう一歩でも動いたら死んじまうなぁ。とか思ってわけなんだよなぁ〜」
「ちょっと、あんまり動かないの!
 なに? それともアンタ、このまま放っておいて欲しかったの?」
「あ、すいません。そのまま手当てをお願いします」
「いいわ。ちゃんとじっとしてなさいよ」
 言葉に合わせて手足を動かそうとしたミッツは、怒られてヘイリーに指示通りに大人しくしていることにした。
「ああ!」
 突然、フェイミィが声を上げる。そして納得いったようにしきりに首を縦に振っていた。
「なるほどなるほど……」
「どうかしたの、フェイミィ?」
「ん、いや……ミッツってこっちの方だったかと思ってな」
「おい、コラッ!」

「じっとしてなさい!」

 声を上げて上体を起こそうとしたミッツは、ヘイリーにおでこを叩かれて床に後頭部を打ちつけた。
「っぅ〜」
「次動いたら、この程度じゃあ済まさないわよ」
「す、すいません……」
 ヘイリーの怒られ、ミッツは母親に叱れた後の子供みたいに再び静かになった。
 フェイミィが頭に手を当てながら苦笑する。
「悪い悪い。なんかもう一人の奴とこんがらがってたわ」
「それってジェイナスのことか?」
「たぶんな〜、まぁ、いいじゃねぇの」
 ムッとした様子のミッツに、フェイミィは笑って誤魔化していた。

「ミッツ、これからどうするの?
 何かするつもりなら、協力するわ」
 どうにか歩ける程度まで治療が終わった所で、リネンがミッツに尋ねた。
「ありがとう。そうだな。このまま最深部に向かって心臓を……
 、と言いたんだけどさ」
 ミッツは自力で立ち上がろうとしてふらつき、フェイミィに支えられた。
「さすがにこんな状態じゃ最深部までは無理だろうな。
 歩くのもおぼつかないわけだし、ここは一端引き返した方がいいかな。まぁ、それも大変そうなんだけどな」
 残念そうに笑いながら、ミッツは頬をかいていた。
 すると、リネンが優しく笑いかけた。
「借りを返すわ。そこに行きたいなら、私達が支えて連れて行ってあげるわよ」
「借り……?」
 ミッツは記憶を思い返し、以前パーティー会場で≪アヴァス≫に狙われた時のことを思い出した。
「でもあの時助けてもらったのは僕の方だし、借りがあるのはこっちの方なんじゃないか?」
「そう? いいじゃない。その方がミッツにとっては嬉しいでしょう?
 ヘイリー、それでいい?」
「ええ、もちろんよ」
 リネンの好意によってミッツは彼らと一緒に遺跡の最奥部へ目指すことになった。
「……ありがとう」
 ミッツは心から感謝を述べていた。
 するとヘイリーがミッツの前に来て、中腰に屈んで背を向けてきた。
「ん、なんだ?」
「おぶってあげるから乗りなさい」
 ミッツがヘイリーの背中をジーっと見つめ――顔を真っ赤にした。
「ばっ、馬鹿か! なんで女に背負ってもらわなきゃいけないんだ!」
「じゃあ、抱っこ……お姫様抱っこの方がいいの?」
「いやだ! 絶対いやだ! そんなの恥ずかしすぎるだろうがっ!!」
 唾を飛ばして講義するミッツ。
 その様子に、ヘイリーは深いため息を吐いて呆れていた。
「アンタ、まともに歩けないくせに何を言ってるのよ。
 仕方ないわね、フェイミィ!」
「あいよ」
「うわっ、なんだお前ら!?」
 ヘイリーの指示でフェイミィと後方で待機していたオルトリンデ少女遊撃隊が、一斉にミッツを四肢を押さえつける。
 フェイミィが意地の悪い笑みを浮かべる。
「観念しなぁ〜」

「ハナセェェェェ!!」

 ジタバタと暴れていたミッツだが、結局強引にヘイリーの背に乗せられ、おんぶされる形になってしまった。
「くっそ、一生の不覚だ……」
 額をヘイリーの後頭部に押し付け、悔しそうにするミッツだった。
「いい加減、諦めなさい」
「だいたいなんで、そんな細い腕で背負えるんだよ」
「アンタと違って鍛え方が違うのよ」
 ブツブツとぼやくミッツ。
 ヘイリーは歩き出しながら、リネンとフェイミィに指示をだす。
「フェイミィ、アンタは罠に注意しながら遊撃隊と一緒に先頭を進みなさい!」
「あいよ。任されたぜ!」
「リネンはあたし達の護衛をお願い!
 それと、救助者が周囲にいないかも常にチェックしとくこと!」
「了解よ」
 ヘイリーを中心に陣形を組みながら、ミッツ達は最深部を目指して進みだす。
 ふいに、ミッツが顔をあげて呟く。
「おまえ……なんかいい匂いがするな」
「鼻に矢を詰めるわよ」
「あ、すいません……」
 またしても叱られ、黙り込むミッツ。

 その時――遺跡の外から爆発音が連続して聞こえてきた