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大迷惑な冒険はいかが?

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大迷惑な冒険はいかが?

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 魔王城、正門。

「街の皆に悪さをするのを今すぐやめさせて」
 オデットはヒスミの前に立った。庭の方はエース達とローズ達に任せてある。
「……やめる訳無いじゃん。ただの踊り子が勇者のまねごと?」
 演じるオデットに対してヒスミも魔王を演じて応える。
「あら、自分達が追い出した人間をもう忘れたの?」
 オデットは少し呆れたように言った。
「むぅ?」
 ヒスミが眉をしかめた時、
「旅の踊り子は、世を忍ぶ仮の姿。私はあなた達魔王軍にこの城を追い出されたこの国の王女よ!」
 オデットはドラマチックに正体を明かした。
「素敵な踊りを見せるためにわざわざ戻って来たのかな、お姫様」
 ヒスミは小馬鹿にした笑いで答えた。
「いいえ、修行の成果をみせるためよ」
 オデットはそう言って身構えた。
「って、物理攻撃かよ。全然職業関係無いじゃん。せめて魔法使えよ」
 ヒスミは予想外に声を上げた。王女と言えば魔王使いが定番のはず。
「俺もいるぜ」
 エヴァルトも登場。
「って、王女の次は裏切り者か」
 ヒスミは魔王としてエヴァルトの設定を踏まえつつ対応。
「二人だけかぁ」
 ヒスミはちらりと両脇に控える甚五郎とブリジットや大量のモンスター達を見た。何とかなると思いながら。

「ルカ達もいるよ」
「さて、この遊びも終幕だ」
 ルカルカとダリル。
「召喚士も来たぞ」
「ぴきゅぴきゅぴきゅきゅ、ぴっきゅー!(わたげうさぎの勇者、登場なのだ!)」
「大人しくするんだ」
 薫、ピカ、孝高。
「……待たせたな」
 キスミも乗る。

「……魔王と王女の邂逅、勇者達の戦い」
 カンナはひっそりと戦いの様子を見守っていた。

「これならどうかしら」
 王女オデットは勝ち誇った顔をした。

「どうだか。やって確かめてみようか」
 ヒスミは肩をすくめ、戦闘開始を合図。羽純に負け宣告を禁止されているので戦闘に入らなければならない。
「行きますよ」
「さて、勇者と魔王らしく戦闘するか!」
 ブリジットと甚五郎は戦闘態勢に。
 今まさに魔王軍が攻撃をしてそれを勇者が切り抜けてという形から戦闘が始まろうとした時、

「ぎゃっ!!」
 突然、ヒスミが吹き飛ばされてしまった。
「……って、長老?」
 オデットは現れた人物に声を上げた。

 現れたのは長老ではなく隠れ陰陽師の裕輝だった。
 そっと登場し素手で殴り飛ばしたのだ。それなりに力加減はして。陰陽師という肩書きなのにふるったのは拳の武闘派である。
「無茶をしにな」
 さっそうと隠れ陰陽師の裕輝登場。
「……長老に貰った毒の粉、とても役に立ちましたよ」
 オデットが門番を一掃した毒草の粉末の礼を言った。
「……そうか」
 裕輝は本性隠れ陰陽師の長老らしくうなずいた。
「ったく。まだ始まってないだろう。空気読めよ。卑怯者!」
 ヒスミがむくりと体を起こし、立ち上がって裕輝に非難を浴びせた。
「そうだそうだ。これからが面白くなるんだぞ」
 当然キスミも乗る。何かとめげる事はあれど面白い事には素直。

 裕輝の攻撃が合図となり、
「……一番空気を読むべきはおまえ達だ。少しは加減ってもんを考えろッ!」
 エヴァルトが瞬時に動き、足払いとラリアットを同時にヒスミにかけ、見事に決まった。そのままエヴァルトは体全体を背後に向け、首を脇に抱えるように腕を絡め後ろに倒れ込んだ。多少、加減をして。

「……隠れ陰陽師の登場と改心した魔物の戦い」
 とカンナ。

 ヒスミがやられている間、
「私達はモンスターを片付けるよ。役に立たないホープに代わって私が頑張らないと」
 何気に失礼な事を言いながらアスカは『ゴッドスピード』と『レジェンドストライク』を使ってモンスターを片付けていく。

「本気でいかせてもらうぞ」
 『百戦錬磨』を持つ甚五郎は緑竜殺しを手に『迅雷斬』を当然勇者であるキスミ目がけて放つ。本気と言っても勇者が死なない程度にだが。しかもモンスターも一緒に襲わせる。

「ちょ、待てよ」
 キスミはモンスターを樹に与えられた剣で対応するも甚五郎の攻撃には慌てる。いくら地獄の修行をさせられたからと言ってすぐに対応できるわけがない。

「修行の成果を発揮させろ」
 『エンデュア』を持つセリカが賢者からの助けとして登場し、『歴戦の防御術』でキスミの身を守り、攻撃をしかけた。
「助けとは小賢しいな」
 甚五郎は当然セリカの攻撃を難無く避ける。
 この二人のやり取りをみるキスミの背後に刺客が忍び寄っていた。

「……片付けるか」
「だね」
 ダリルは銃と『剣の舞』のエネルギーを四方から飛ばし大量のモンスターを一網打尽。ルカルカは、『我は射す光の閃刃』で離れているモンスターを消し去った。

「……魔王軍と勇者軍の獅子奮迅の戦い」
 カンナは頭の中に詩を書き込んでいく。

「姫とやら魔王の前にワタシの相手をして貰いますよ」
 ブリジットは悪者らしく前置きを並べる。
「いいわ。来なさい!」
 オデットは構え直して殴りにかかった。
 ブリジットは『歴戦の立ち回り』で軽く避ける。
「隠れ陰陽師も加えてもらおうか」
 裕輝が横から参加。一つ一つの攻撃を途切れなく繰り出し、鮮やかな動きを見せる。

「ぴきゅうぅーっ!!(他人の迷惑を考えろなのだーっ!!)」
 ピカはエヴァルトがヒスミの相手をしているのでキスミに狙いを定め、警戒を忘れているキスミの背後に『隠れ身』を使って忍び寄り背後に行き次第『隠れ身』を解除しつつわたげうさぎのままキスミの頬を蹴った。
「ちょ、痛いって」
 思わず頬に手を当てるキスミ。
 ピカは追い討ちをかけるようにヒト型に姿を変え、かかと落としをキスミの頭にお見舞いしようとするが、
「あ、危ねぇ」
 キスミはセリカの地獄の修行のおかげかギリで避ける事は出来たが、孝高の攻撃は避けきれなかった。
「ちょっと待てよ。何でオレ仲間に攻撃されてるんだよ」
 孝高に軽く殴られたところをさすりながら文句を口にするが、すぐに言葉を失った。
 孝高が巨熊に獣化し、追い込みにかかる。肩書きが忍者なので変化の術と言ったところだろうか。
「げっ、く……熊って、冗談だろーー」
 その姿にキスミは硬直してしまった。動物変身薬騒ぎの際、熊で寿命が縮むほど驚かされた事を思い出し、余計にキスミに恐怖感を与えていた。まだ心の方は回復してはいなかったようだ。孝高は獣化したままロズフェル兄弟を引きずって薫の前に連れて行った。

 ヒスミがエヴァルトの攻撃から目を覚ますのを待ってから
「負けを宣言する前に我の話を聞いて貰うのだ」
 薫が二人に向かって言った。
「魔法は悪戯の為に使っちゃだめなのだ! いい年だから、していい事と悪い事ぐらい、わかるよねぇ?」
 薫は両腕を腰に当て、説教を始める。
「……」
 沈黙するロズフェル兄弟。
「この世界で冒険して楽しい思い出が出来た人もいるのだ。我も少しだけみんなと冒険が出来て楽しかったのだ」
 薫は少しだけ優しい言葉をかけた。

 すると
「覚悟するのだ!」
 勇犬ポチの助登場。
「楽しかったですよ。花火や花びらも綺麗でした」
 ホリイとの戦闘を終えたフレンディスが楽しそうに感想を言いながら登場。
「そうだろ」
 二人同時にフレンディスの言葉に表情を明るくする。
「全ての者が楽しんでいる訳では無いぞ。自分達だけで楽しむようにしろ」
 ベルクは強く思いの入った言葉を投げた。すっかり疲れている。
「……」
 ベルクの言葉で黙るロズフェル兄弟。羽純に見せられたものや死にかけた修行などを思い出していた。
「自分やみんなが楽しめるように魔法を使ったらどうかな? その方がいいなって我は思う」
 薫は少しだけ笑顔で言った。
「……予想外だったんだ。な、キスミ」
「そうだ。少しだけ」
 ロズフェル兄弟は体の節々を痛めながらも言い訳をする。
 
「これを少しとは言えないよ〜」
 アスカはパレットナイフで景気よく二人を軽く叩いた。

「痛いって」
「やめろって」
 ロズフェル兄弟は声を荒げた。体中が痛くてたまらないというのに。

「とにかく、迷惑をかけたみんなにごめんなさいをして、おしまいにしょ?」
 薫は最後を締めた。

「……迷惑をかけてごめんなさい」
 ロズフェル兄弟は神妙な顔で謝った。

「また迷惑をかけたらその度に多少痛い説教を叩き込んでやる」
 エヴァルトが脅しを入れた。

「えーーー」
「また、あんな」
 ヒスミは悲鳴を上げ、キスミは地獄の修行を思い出していた。

「そうなるな。生来のものは変えにくいからな」
「怪我をしても大丈夫。ルカ達がすぐに治療してあげるから♪」
 ダリルは冷静に言い、ルカルカは明るく言った。

「……勇犬の登場と召喚士の力強い説教」
 カンナはあくまでも見守るだけで表には出ない。

 薫の説教が終わったのを見計らったブリジットは自爆の頃合いを確認。
「……二人ですか。次で終わらせましょうか」
 ブリジットはそう言った。この言葉が自爆の合図となる。

「……もうそんな案配か。巻き込まれない内に退散や」
 元々ヤル気の無かった裕輝は早々に避難を始めた。

「これで終わりよ!」
 オデットは威力を押さえた『ヒロイックアサルト』をブリジットにぶつけた。

 途端、計画通り自爆。


 ドガァァァァァァン。


 凄まじい轟音、砂煙、熱風。

 中心地にいれば、心身共に散り散りとなっているほどの威力。
 魔王城にいた者は、自爆数秒前に急いで避難をして間に合った。
 そして、ロズフェル兄弟にはたっぷりと爆発の様子を目に焼き付かせた。

 避難後、ロズフェル兄弟は
「……ごめんなさい……降参です」
 ぼんやりとした様子で謝り降参を宣言し、それによって元の世界に戻った。
 大爆発を自分達がドールハウスを弄った時に何か手違いを起こしたせいで起きたのだと勝手に勘違いして他人を巻き込んだ事に責任を感じ、さすがに心が瀕死の重体となっていた。ブリジットが再生し、自分達の計画の一部だと言ったりすれば元気になっただろうが。