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第4章 ケルツェドルフ村…調査 Part1
「先ずは情報収集ですわ!ノーン。セイニィ・アルギエバの行方について、村で聞き込みしますわよ」
セイニィ・アルギエバの捜索を行おうと、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は村の住人を探す。
「うん、おねーちゃん。わたしもセイニィちゃんを捜すよ!」
ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は渡部真奈美のフィールド・ノートを手に、エリシアの後を一緒に調査を行う。
「もしかしてセイニィを探してる?」
「そうですわよ」
「じゃあ私たちと一緒に探そうよ」
「構いませんわ。最初は店以外で情報を集めますわよ」
美羽とベアトリーチェも加わり、さっそく聞き込みを開始する。
「すみません、今、お時間よろしいでしょうか?」
ベアトリーチェが村人に話しかける。
「はい…?」
「探し人について尋ねたいことがあるんですが。
「ここにツンデレっぽい金髪ツインテールの娘が来なかった?」
「…ツンデレって何?」
「その……。この辺りで、山猫のような女の子を見かけませんでしたか?」
首を傾げる住人に、ベアトリーチェが美羽の言葉に付け加える。
「つい最近、観光に来たらしいんですの」
「あぁ〜…あの子ね。可愛い物を売ってる店がないか聞かれたわ。レストランの隣にショップがあるでしょ?そこの店を教えてあげたわ」
「ありがとう、おばちゃん」
ノーンはぺこりと頭を下げて礼を言う。
「セイニィちゃんは、お買い物に来たんだね?」
可愛い小物などを収集しに訪れたのだろうか、とノーンが言う。
「観光目的ならありえますわ」
「そうなんだ?じゃあ、誰かに呼ばれたりして来たわけじゃないのかな」
「もしそうなら、イルミンスールの校長に、それくらい伝えている可能性はありますわよ」
「エリザベートちゃんは、セイニィちゃんが誰かと出かけているなんて言ってなかったよね」
「おそらく、1人で来たんですわ。教えてもらったショップへ行きましょう」
エリシアたちは村人に教えてもらった雑貨屋へ向かった。
「ここですわね」
レンガ造りのショップの中には、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が好みそうな動物系のアロマランプが棚に並んでいる。
「グラスの中に、イルカちゃんがいるよ」
「これは、グラスにランプが入っているタイプですのね」
ピンクとオレンジのグラデーションのランプの中には、小さなイルカのキャラや貝殻などが入っている。
「真ん中の、白い糸みたいなのに火をつければいいの?」
「お客様。そこに火をつけると、中のランプが溶けていくんです」
「へぇー、そうなの?」
どうやって使うのかな?と考えていると、ショップの店員がノーンに声をかけてきた。
「イルカちゃんが泳いでる感じになるのかな…」
「…ノーン、ショッピングよりも先に、やるべきことがありますわよ」
「あ、そうだった!…店員さん、ここに金髪の女の子が来なかった?」
「髪型はツインテールですわ」
「同じような髪型の方は何人かいらっしゃいましたが…」
「山猫っぽい目をしてるの」
「服装は…たぶん、かなり軽装だと思うのですけど」
4人の説明を聞き、店員は何とか思い出そうと記憶を辿り…。
「そうですね…。確か…、小熊のランプを購入していただいたかと…」
「あれですわね」
浮き輪を使ってミニプールの中で遊んでいる雰囲気の、小熊のランプへ視線を向ける。
「その後は、どこへ行ったか分かりますか?」
「トートバッグがないか聞かれたのですが。あいにく当店にはござませんので、バッグを探しに行かれたのではないでしょうか」
「バッグを販売しているような、店の場所は知ってます?」
「はい、宿泊所の近くにございます」
「ありがとうございます」
ベアトリーチェは軽く礼を言うと、美羽たちとバッグショップへ走る。
「セイニィが好きそうなものは…。やっぱり熊とかその辺り?」
ショップに入るとさっそくセイニィが選びそうな物を探してみる。
「ねぇ、ベアトリーチェ。こういうのとかどう?」
「パンダですか…?それなら、こっちのアビシニアン柄のほうが可愛い気がします」
「ぇー…。バンダのほうがいいと思うけど」
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「あ、ううん。えっと、金髪のツインテールの女の子が来なかった?ここで何か買ったなら、それも教えてもらいたいんだけど」
買い物客と間違えられた美羽はかぶりを振って、セイニィが来なかったか店員に聞く。
「夜中にいらっしゃいましたが…。あの…」
「あ…あの、私たちは知り合いを探しているだけなんです」
怪しむような目で見られたベアトリーチェは、慌てた口調で知り合いの捜索をしているだけだと説明する。
「急に連絡が途絶えてしまって、それで探しているのですが…」
「それはかなり心配でしょうね。早く見つかるとよいですね」
ベアトリーチェの説明に、店員は警戒心を解き、失踪してしまった者を心配するように言う。
「お探しの方でしたら…。パンダと猫の型、どちらを購入しようか迷っていたようですが、両方購入していただきました」
「どこへ行く…とは聞いていませんか?」
「いえ、そこまでは…」
「そうですか、ありがとうござます。…他の村人に聞いてみましょうか、美羽さん」
「ショップに来たのが夜なら、美味しいものでも食べに行ったんじゃないの?」
「夕食といえば、レストランでしょうか?」
「甘いものかもしれないよ?疲れちゃったなら、たべたーいって思うかも」
歩き疲れたんだとしたら、スィーツを食べてそうとノーンが言う。
「夜中にスィーツ?んー、セイニィならありえるかも」
「でしょ?行ってみよう」
美味しいデザート系とかあるのかな、と思いながら喫茶店を探してみる。
「あのお店っぽいね」
木造の小さな店を発見したノーンが走る。
「ドライフルーツとかも売ってるんだね」
ショーケースの中を見ると、お土産用のドライフルーツの詰め合わせや、ラズベリーやブルーベリーのタルトなどが並んでいる。
「テイクアウトもいいみたい。おねーちゃん、どれがいいと思う?」
「―…ノーン、情報集めが先だと何度言えば…」
「だってこんなに美味しそうだよ?ねぇ、買おうよ!」
「はぁ〜…仕方ありませんわね」
ノーンに甘いエリシアは、財布を開いてお菓子を買ってあげる。
「ありがとう、おねえちゃん!」
「食べるのは調査が終わってからですわよ。それまでポシェットにでもしまっておきなさい」
「はぁ〜い!」
元気よく返事をすると、買ってもらったオヤツを大事そうにしまう。
「ねぇ。ここにツインテールの金髪の娘が来たりしなかった?」
「友達と一緒に食べるとかなんとか言って、結構な量を買っていったかな。もう夜中なのに、これからそこに行くとかも言ってたっけな」
「この店で最後なのかしら…。どうもありがとう」
「籠手型HC弐式に、情報を入力しましたわ」
得た情報はエリシアがこまめに保存している。
「魔性の関与がないか、使い魔に聞いてみましょう」
召喚の儀式を行おうと、4人は宿泊用コテージに入る。
ノートを見ながら召喚し、今回の事件に魔性が絡んでいるのか問う。
「ビバーチェ。私が聞きたいことは、もう分かっていますわよね?」
「それが私の名前ね?ありがとう、エリシアさん。…で、あなたの問いだけど。魔性の仕業でしょうね。どんな相手かまでは分からないわ」
赤いドレスを纏い、若い女の姿をしたクローリス、ビバーチェが答える。
「やはり、そうなのですわね…」
「ルルディちゃん、こんにちは!」
ノーンも淡く清楚な白色ドレスを纏った少女の姿をしたクローリス、ルルディを呼び出して軽く挨拶をする。
「こんにちは…、ノーン。私にも名前をつけてくれたのですか?…ありがとうございます」
「えっと…ルルディちゃん、何か気づいたことある?」
「お知り合いの方が、なぜ失踪してしまったか…ですね。おそらく、呪術か…何らかの方法で攫われたのでしょう…」
「呪をかけられちゃったかもしれないってこと?」
「はい…。ですが、どのようなものが分かりません…」
「ん〜、そっか。ありがとう」
ルルディに聞いても、相手の正体などの具体的な情報までは得られなかった。
「他の人もセイニィの行方について、何か情報をつかんでるかもしれないから、とりあえず待機していよう」
後は情報交換の時に、失踪した彼女のことが分かるかもと思い、美羽たちは昼食までコテージで待機する。
失踪した村人や観光客に、どこか共通項がないか、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は住人を呼び止めて訊ねる。
「あの、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「…ん、何だい?」
「どんな感じの人がいなくなったか、教えてくれるかな。例えば、胸が小さくてショートカットの人とか…」
「んー…どうだろう。髪が長い人とかもいなくなってるからね」
住人は限定的な外見の者だけが、失踪したわけじゃないと答える。
「見た目は関係ないってことなのかな」
「そうなのかもね。ところで弥十郎」
「何?」
「歩き疲れたわ」
「―…斉民、まだ調査を始めたばかりだよ」
もたもた歩くパートナーにため息をつく。
「こうやって歩くのも、鍛練のうちだと思わない?」
「それはそうだけどね…。ちょっとやだ、押さないでよ!」
弥十郎に背中を押され、無理やり歩かされる。
「はいはい、歩いてね」
斉民の文句を聞かず、問答無用で進ませる。
「暑いわ…」
「うん、夏だから当たり前だね。…クリスティー君たちは、そんな恰好で暑くないの?」
「虫に刺されたりしたらいやだからね、長袖を着てきたんだよ。確かに少し暑いけど、そのうち慣れてくるよ」
「森の中にある村だし、普通の町よりは小さい虫が飛んでるね」
小さな虫が弥十郎たちの目の前を通過していく。
「ねぇ、そこに民家で聞いてみない?」
「うん。行ってみようか、北都君」
「―…あのー。ちょっと訊ねたいことがあるんだけど…」
清泉 北都(いずみ・ほくと)が民家のドアをノックする。
「はい?何でしょうか」
「今、村人や観光客が失踪したことについて調べてるんだ。ここの近くに住んでる人や、付き合いが長い人がいなくなったりしていない?」
「えぇ、隣に住んでいる奥さんが、明け方から姿が見えないんですって。旦那さんが言うには、森の野草摘みに出かけたらしいですが」
「その人がいなくなる前に、何か拾ったりした?」
「探してみたけど村の周辺には、何も落としていませんでしたね」
「それで…、戻って来なくなる前に、何か見たとか言っていなかった?」
「私は聞いてませんし、旦那さんも聞いてないみたいです」
「分かった、ありがとう」
北都は住人に礼を言い、民家から立ち去る。
その頃、リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)はパートナーと逸れたことに気づかず、1人で聞き込みをしている。
「すみません、ちょっと訊ねたいことがあるんですが」
「何…?今、タイムセールで急いでるのよね」
狙っている品があるらしく、村人の女はリオンをキッと睨む。
「そ、そうなんですか?申し訳ないです…。あの、ほんの少しだけ…いいですか?」
「しょうがないわね。手短に話してちょうだい」
「この村で、原因不明な失踪事件が起こっているのは、知ってますよね」
「えぇ…まぁ」
「それで、攫われた人の性別を聞きたいんですけれど…」
「―…えっ!?いなくなった人って、誰かに攫われたわけ!!?」
何人か失踪していることは知っているようだが、“何者かに攫われた”という確信はなかったようだ。
「あ……。たぶん、そうかもしれないと思いまして…」
リオンは女に騒がれないように、慌てて言葉を濁す。
「―…で、若い女性ばかりいなくなっているのでしょうか」
「ううん。行方不明者の中には男もいるわね」
「それは、女の人に見える男の人…というわけじゃないですか?」
「そういう人もいるかもね。でも、見た目も実際の性別も男っていう人も、失踪してるのよ。もういい?ホントに急いでるのよね」
「なるほど…。貴重なお時間をもらってしまって、ありがとうございました」
性別は関係ない…とメモ帳に書く。
「うーん、セイニィさんはうら若き乙女ですし…。よく何かの儀式に、生贄を捧げるとか本にありますよね。…北都はどう思います?…あっ」
女が店に走っていったのを確認したリオンは考え込むように言い、隣を見るとそこにいるはずのパートナーの姿がない。
ようやく逸れてしまったことに気づく。
北都もリオンがいなくなっているのに気づいたらしく、タイミングよく携帯の着メロが鳴った。
「―…逸れてしまってすみません。今、どこにいます?…クリストファーさんたちと、村の入り口付近にあるキャンドルショップにいるんですか。では、そっちに行きますね」
リオンは通話を切り、早く合流しなければとショップの方へ走る。
ショップのほうではリオンの到着を待ちながら、クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)がキャンドルを選んでいる。
「アロマキャンドルもあるね」
オレンジ風の香りや、ミントの香りなどのランプが、木の棚に並んでいる。
「俺としては、お香的な効果のあるものがいいな。出来れば森と調和するような感じのね」
「それなら除虫菊とかハッカじゃない?」
キャンドル選びに悩んでいる彼に、隣からクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が言う。
「除虫菊だと蚊取り線香の匂いか…。ハッカにしようかな」
海をイメージした青色のキャンドルを手にしたクリストファーはレジに行く。
「これを3つもらえるかな?」
「はい。ご自宅用とプレゼント用、どちらになりますか?」
「すぐ使うから、自宅用だね」
「かしこまりました。お買い上げ、ありがとうございます」
店員は代金を受け取ると、品物を紙袋に入れてクリストファーに渡す。
「少し聞きたいことがあるんだけどいいかな」
「何でございましょう?」
「最近、村で扱い始めた商品やお土産…、あるいはそれらの為に、変更した材料はないか?」
「当店では材料の変更はございません。他のキャンドルショップでも、そのようなことを行ったと耳にしたことはありません」
「スィーツなどのショップも変更はしてないってことか?」
「さぁ…、同業者以外のことは分かりません」
「そうか…、ありがとう」
アロマなどの香りの影響はないらしく、アロマキャンドルをカバンに入れる。
「―…はぁ〜。皆さん…、ここにいたんですね。同じような店がたくさんあって、道に迷ってしまいました…」
北都たちを探してたリオンが、息を切らせながら店内に入った。
「そんなにいっぱいあった?」
「えぇ…。しかもそれなりに、混雑していましたからね」
客の入れ替わりが激しく入るのにだいぶ待ったり、人が多すぎてなかなか発見出来なかったようだ。
「なんだか大変みたいだったね…」
「疲れているところ悪いけど、他の店にも行ってみないか?」
「―…あっ、はい」
「キャンドルショップに来る途中で、喫茶店を見つけたんだ」
クリストファーはレンガ造りの喫茶店へ、リオンたちを案内する。
「ショップで目ぼしい情報がなかったら、ここで聞いてみようと思ってね」
「アイスやフローズンドリンクとか売ってるんですね?」
看板に書かれているメニューをリオンが眺める。
「どれも美味しそうだけど。最近、新しいスィーツなどを販売したり、今ある商品の材料を変えたりしてないか?」
「近頃、新商品を考えたりはしてないね。材料も変えてないけど、何でかな?」
「いや…この村に初めて来たから、そういうのを頻繁にするところなのか、知っておきたかっただけだ」
なぜそんなことを聞くのか、不思議そうな顔をする店主に、クリストファーはかぶりを振る。
「(村で扱っている物が原因じゃなさそうだな…)」
“品物や材料に原因はない”というのも情報の1つか…とメモ帳に書いた。
「おやつでも買っていこうか。ケーキもいいけど、生菓子だからね…」
口の中にある苺ドロップだけでは物足りなく、日持ちのするグミを買った。
「アイスは買わないの?」
「この暑さじゃ、すぐに溶けそうだな」
「だったら、ここで食べればいいよ」
クーラーの効いた涼しい店内なら溶けにくいはずだと、クリスティーはアイスを買う。
「じゃあ俺は、抹茶アイスにするか」
「北都、ケーキアイスがありますよ」
「―…食べたいの?お昼ご飯食べられなくなるから半分こしょうね」
目をキラキラさせて、裾を引っ張るリオンにアイスケーキを買ってあげる。
「やっと休めるのね」
足の疲れが限界にきていた斉民は、まっさきに店内に入り、椅子に座った。
「あれ?この色って何だっけ?あ、黄色だから斉民…」
色別出来るように鍛練を兼ねて、情報収集中に発動させていたアークソウルが、パートナーの斉民に反応する。
光の色というよりも宝石の反応色別は、脳内に色のイメージが流れ込んできただけだ。
「げふっ!?」
斉民の耳に届いてしまい、リターンしてきた彼女に腹を殴られる。
「なんか聞こえたけど、気のせいよね?
「ぇ、ううん。気のせいなんかじゃ…どぅふっ!!」
弥十郎はパートナーの鉄拳をくらい、床に転がる。
「大丈夫ですか!?」
「う、…うん」
痛そうに腹をさすりながら、リオンに助け起こされた。
「酷いよ、斉民」
「あ、来た。なによ、自業自得じゃないの」
ご機嫌斜めな斉民はプイッとそっぽを向く。
「色別出来るのは、今のところ斉民だけみたいだね」
“黄色”と判断したのは斉民のみで、リオンや他の客に対しての色別反応はない。
「弥十郎だけおやつナシね」
「えぇ〜…っ。料理人としては、土地の甘味も覚えておきたいのになー…」
抗議の声を上げるものの、おやつを分けてもらえず、しょんぼりとする。
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