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第四章 パワードスーツで制圧せよ!


 ごおおおおお……と、凄まじい音を立てて吹き出す火炎放射。機動要塞内の通路は、一面火の海になっている。
「……それにしても、本当にトラップだらけの要塞だな」
 パワードスーツの虚仮威弑00番機に搭乗した柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、要塞の中心部へと続く通路を眺めて思わずこぼした。
「なぁ、もう強行突破でいいんじゃないか?」
 同じく虚仮威弑の01番機に身を包んだ柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)は噴出する炎を見ながら提案する。
「確かに、もうそろそろフリューネたちがトラップをシステムダウンさせてもいい頃合いだとは思うが……」
「主、唯依。このような目立つ場所で待機していて良いのですか?
 ここは敵陣の中央、機関室や武器管制室に繋がる通路ですよ?」
 虚仮威弑の02番機、エグゼリカ・メレティ(えぐぜりか・めれてぃ)が恭也たちに問いかけた。
「後はパワードスーツ隊で要塞を制圧し、頭領を引きずり出すだけだ。下手に隠れて待機するより、現れた敵を撃破する方がいいだろう」
「それにしても敵自体あまりいませんね」
「陽動作戦が上手く行っているんだと思いたいね」
 恭也はそう言いながら、無線を取り出した。火炎の吹き荒れる通路から少し離れる。
『新しい情報は何か入ったか?』
『特になし、だな。捕虜からも新しい情報は出てきてないそうだ』
 要塞の屋上部に接舷された大型飛空挺、輸送トラック内で待機している馬 岱(ば・たい)が答える。
 岱は、接舷されている他の大型飛空艇の警護に当たりながら、空峡や村、要塞の情報を集めていた。
『早くしてくれよ相棒ー、こっちも待機は面倒なんだよ』
 ここぞとばかりに岱が愚痴る。
『そう言わずにしっかり見張っててくれよ。任せたからな?』
 恭也はそう言って無線を切った。と、ふっ……と轟音が消える。
「恭也、今度こそ乗り込んでいいよな! 機関室を目指すんだったな?」
 真っ先に駆けていく唯依の後に、恭也とエグゼリカが続いて行った。


 要塞の中央通路にて。
「くぉら誘拐犯どもー! 子供達かえせやー!」
 そう叫んで通路を駆けていくのは、猫バニー姿のパワードスーツ、宝貝・補陀落如意羽衣を着用した鳴神 裁(なるかみ・さい)だ。
 通路の奥から空賊たちが次々と現れる。武器は持っていない。格闘術の使い手だろうか。
「4人だけ? もっといてもいいんだよ☆」
 裁はそう言うなり、斜め前方の天井部に向けてワイヤーを放った。
 鉤爪を天井の割れ目に引っ掛けるとグラビティコントロールで重力を操りつつ、空を駆けるように通路を跳躍する。
 すれ違いざまに一人の空賊の顎に蹴りを叩き込んでノックアウト。
 飛び降りながら振り下ろした鉤爪を二人目の空賊に叩き付け、ワイヤーに絡まって身動きが取れなくなったところを殴りダウンさせる。
「ボクは風、風の動きを捉えきれるかな?」
 残り二人の空賊に対し、挑発的な態度を取る。そんな裁の無茶な機動を支えているのは、裁のパートナーである三人だ。
 ナノマシン拡散状態でパワードスーツの内側に入り込んだ蒼汁 いーとみー(あじゅーる・いーとみー)
 パワードスーツインナー型魔鎧となっているドール・ゴールド(どーる・ごーるど)
 そして、裁に憑依する物部 九十九(もののべ・つくも)
 この三人の補助を受けているからこそ、裁はパワードスーツを着て思う存分戦えるのだった。
「変幻自在の風の動きを見切れるかな?」
 地を蹴った裁は通路の壁に垂直に着地し、そのままのスピードで駆け抜けながらワイアクローを空賊目掛けて投げつける。
 が、空賊もアンボーン・テクニックを使ってワイヤーをかわし、瞬時に念力で鉤爪の方向を裁へと向ける。
 裁は咄嗟に重力を進行方向逆に掛け、バックステップで鉤爪を避ける。ついでに空賊の首筋目掛けて手刀、気絶させる。
(後ろから敵が来てるよ、気をつけて!)
 裁の脳内に、憑依しながら索敵をしている九十九が語りかける。
(おっけー☆)
 背後の曲がり角から裁を狙っているハンドガン目掛けてワイヤクローを放ち、襲い来る空賊たちの蹴りを床に倒れ込むようにして回避する。
 ハンドガンを弾き落としつつ角の壁に引っ掛けたワイヤーを勢いよくたぐり寄せ、死角に隠れていた空賊を飛び蹴りで倒す。
(どんどんぶちのめしてこう!)
 裁は九十九に脳内で声をかけ、一人逃げ出した空賊の後を追って要塞の奥部へと躍り出て行った。