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【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引

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【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引
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第九章

 駆けつけた教導団員が、現場検証のために続々と会場に入っていく。取引にかかわった貴族達は事情聴取をされていた。
 そんな騒々しさを横目に、生徒達は救出されたポミエラ・ヴェスティン(ぽみえら・う゛ぇすてぃん)を囲っていた。
「よかった……」
「く、苦しいですわ」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はポミエラを見つけると駆け寄り、想いの分だけ強く抱きしめた。
 存分に抱きしめた後、自分の上着をそっと着せる。
 後から追いついたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はポミエラの前にしゃがみこんで尋ねる。
「怪我はないか?」
「手当はしといたわよ」
 大きな怪我はなく、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)によって手当てを受けたポミエラの体は元気だった。
 ダリルは安心してポミエラの頭を撫でる。
 すると、今度は月崎 羽純(つきざき・はすみ)が近づいてくる。
「ポミエラ、余り心配掛けるな。何で一人で行動した?」
 真っ直ぐ見下ろしてくる羽純。ポミエラは叱られているのだと思い、泣き出してしまった。
「ああ、違うんだ。怒ったわけじゃない。俺が言いたかったのは……お前はもっと、俺たちに頼ってもいい。……いや、違うな。仲間……友人として、頼って欲しい」
 羽純が恥ずかしそうに頬をかきながら話す。
 その様子を見ていた遠野 歌菜(とおの・かな)は、ニヤニヤ笑っていた。
「泣き止むんだ」
「ダリル、それで泣きやむ子はいないよ」
「そう……なのか」
 ルカルカの言葉に戸惑いながら、ダリルは「ごめん」と謝りながら苺飴を差し出す。
 なかなか泣き止まないポミエラ。しかし、口元は嬉しそうに笑っていた。
 遠くから彼らのやりとりを見ていた月詠 司(つくよみ・つかさ)は、なんだか胸が暖かくなり微笑んだ。
「……よかった」
「え!?」
 司の言葉にシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が驚く。
「もしかしてツカサってロリコンだったの!? しかも泣いてる女の子が好みとか!?」
「ち、違いますよ! 私はただ無事に帰ってこれた事が――」
「アイリスも気をつけないとダメよ。狙われてるかもしれないから」
「……わかった……」
 司の言葉を無視して、シオンはアイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)に注意を促す。
 アイリスは司から逃げるようにシオンの後ろに隠れていた。
「だから違うって……」
 司は地面に膝をついて項垂れた。
 ポミエラの元へ想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が近づく。
「ポミエラ、無事でよかった。あと、誕生日おめで、ってなんで泣いてるの!?」
 夢悠が話しかけていると、ポミエラが顔を真っ赤にして今にも大泣きしそうなくらい涙目になっていた。
「……もうお嫁に行けませんわ」
「え――あ、そうか……いや、あれは事故っていうか、その……」
 夢悠は捕らわれて一緒の部屋になった時のことを思いだす。
 少女にとって、醜態を晒してしまったことが相当ショックだったのだ。
 どうにか慰めようと考えるが、良い言葉が浮かばない。
 そんな時――
「がはは、泣いてんじゃねぇ!」
 曇天をも掻き消すようなゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)の笑い声が響き渡る。
「いいか。泣いてたら何もうまくいかねぇ! 嫌なことがあったら、ガンつけて、蹴り飛ばす! それでいいんだよ!」
「ゲブーさん……」
 励まそうとしてくれるゲブーの姿に、ポミエラは一瞬感動――
「安心しろ、あと一年したら、そのおっぱい俺様が嫁にもらってやるから!」
 本当に一瞬だけ感動して、ポミエラはすぐさま胸を両手で隠して生徒の影へと隠れた。
 その後も生徒達から声を掛けられるポミエラ。
 ふと、大切なことを思いだす。
「あ、そういえば雛は……」
「雛なら今治療を受けてるから、すぐに会えるはずだよ。あと、これポミエラの……」
 安心して顔を綻ばせるポミエラに、夢悠が回収された彼女の私物を渡す。
 イルミンスールの制服に、白と黄色のガーベラの花を模したヘヤピン。それに、透明な魔法の水晶に入れたオルゴール。
 それらをポミエラは大事そうに抱きしめた。


「喉が渇いたね。飲み物を用意してくれるかな?」
「かしこまりました、ベルテさ――って、なんでやっ!」
 思わず反応してしまった自分への怒りも含め、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)へ外したタイを投げつける。
「もう、家族ごっこは終わってるだろうが!」
「そうか。そうだったな。うん、残念だねフレンディス」
「え、あ、はい」
 肩を掴んで同意を求めてくるベルテハイトに、フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)はよくわからないまま頷く。
「ああ、もう。フレイにばっかくっつくのやめろよ!」
「別に彼女だけじゃないさ」
 ベルテハイトはグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)にも手を伸ばし――
「……」
 無言のままウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)に手をはじかれた。


「やれやれ、とんだ災難だったな」
 変装を解いた四代目 二十面相(よんだいめ・にじゅうめんそう)は、路地の影から楽しそうな生徒達の姿を見つめていた。
 何故か運び出すのを手伝わされ、ろくに盗みが働けなかった。
「今回一番のお宝はこれかな」
 二十面相は袋から七色に輝く宝石を取り出す。それは『常世の七色桜』だった。
 大きい物は無理だったので、ポケットに入れられるこれだけは確保したのだ。
 嬉しそうに笑うと、二十面相は気付かれぬように別れを告げ、街の闇へと消えて行った。


「身元のわからない子達は、保護という形で預かってもいいのかしら?」
 教導団に会場から助けだされる動物や子供を見ながら、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が呟いた。
 すると、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が横に並んで答える。
「聞いた話ですが、動物の方は教導団で保護する形になるらしいです。子供達は場合によっては養護施設に預けられるそうです」
「そう……」
 亜璃珠は背を向けて、その場を立ち去って行く。
 貴仁も賑やかな仲間達の元へ戻ろうとした時、一人の少女が近づいてきた。その少女は、貴仁は監禁されていた部屋から助け出した女の子だった。
 少女は感謝を述べると、まるでヒーローみたいだったと貴仁の事を称える。すると貴仁は咳払いをして――
「あいつは確かに盗んでいきました。……それはあなたの心です」
 星が煌めく夜空を見つめながら答えた。


「ポミエラさん!」
 ポミエラが生徒達と話していると、突然名前を呼ばれた。
 振り返ると、佐野 悠里(さの・ゆうり)が今にも転びそうな勢いで駆けてきていた。
「悠里さん、なぜ――んにゃ!?」
「もう、心配かけさせないでよ! 心臓止まるかと思ったじゃない!」
「私が連絡したですぅ」
 ポミエラが助かった後に佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)から連絡を受けた悠里は、慌てて飛び出してきたのだ。
 悠里は心配のあまり、ポミエラを見つけるなり飛びつき泣きながら抱きしめていた。
「でもホントに無事で良かったわ……」
 色々尋ねてきた悠里だったが、元気そうなポミエラにようやく平常心を取り戻していく。
 そんな時、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が一言呟いた。
「寒いですの、お腹がすきましたの……」
 鳴り響く腹の虫。さらにもう一つ、ポミエラのお腹の虫も鳴きはじめた。
「わたくしもお腹すきましたわ……」
「じゃあ、ここは悠里ちゃんが手料理を披露しなくちゃですねぇ」
「ええ!? お母さん!?」
 イコナとポミエラが期待の眼差しで悠里を見つめる。
 少女二人の視線に悠里は、額から大量の汗を流し――
「うぅ、頑張る、しかないのかな……」
 了承するしかなくなった。
 そんなわけで悠里の家に向かうことになった一向。
 悠里は歩きながらメニューを考える。
「シチュー……は大変そう。カレー……寝かせた方がいいんだっけ。冷しゃぶ……『冷』とか駄目だよね。えっと、あとは……」
 いくつものメニューが浮かんでは消えていった。
「そうだ。ポミエラは何が――あれ?」
 最終的に好きな物を作ってあげようと考えた悠里が振り返ると、ポミエラとイコナは生徒の背中で涎を垂らしながら眠っていた。
 呆然とする悠里の肩にルーシェリアがそっと手を置く。
「手料理はまた今度ですかねぇ」
 悠里は安心したような残念なような気持だった。
「そうだ。暖かい布団を用意してあげよう」
 生徒達はそれぞれ帰宅の途へついていく。

(END)

担当マスターより

▼担当マスター

虎@雪

▼マスターコメント

 この度は『【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引』に参加していただきありがとうございました。
 リアクション製作を担当させていただきました、虎@雪(とらっとゆき)です。

 まずはご参加いただきありがとうございました。
 素敵なアクションが多く、楽しかったです。

 初めて【】を使いましたが、今回のアクションの結果、今後どう展開するか考え中です。
 でも……ほのぼの系か……今回少なかったアクション系か……。
 それはお楽しみということで。

 いつものことながら素直な感想が聞ければ、嬉しいと思います。

 機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとございました。