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第2章 交換デート

「さ、これでケーキは完成! さすがダリルさん。プロ顔負けですね!」
「遠野もなかなかのものだ。おかげでつい凝った物を作ってしまったよ」
 歌菜とダリルは顔を見合わせ、ふっと笑う。
 二人の間に流れる暖かな空気。
 ダリルはふと思いついた様子で口を開いた。
「そうだ。今は彼氏なんだったな。なら、俺の事は呼捨てで構わない」
「きゃーっ! ダリルさんを呼捨てになんてできませんっ!」
 そんな恐れ多いとぶんぶんと手を振る。
「そ、それに……だったらダリルさんだって『遠野』はないですよっ」
「なるほど。なら、『歌菜』」
「だ、ダリル…………さん! あぁあ無理です無理ですごめんなさいっ!」
「何も謝る事はない」
 照れたり謝罪したり忙しい歌菜。
 ひゅん。
 そこに、お約束のように雪玉が飛んでくる。
「は、はわわ! 下がってください!」
 歌奈は即座に雪玉に対応する。

「……むう。なーんかあっちはいい雰囲気ねっ。羽純君、こっちも負けちゃいわれないわっ!」
「お、おお。行くぜルカ!」
「おー!」
 カップルとは微妙にズレた体育会系な空気を醸し出しつつ、ルカルカと羽純もまた共に行動していた。
「ルカはチョコレートが好きだったよな。どうだい、会場内スイーツ食べ歩きの旅、なんてのは」
「わーい、あっちのザッハトルテ狙ってたんだ☆ 羽純君も甘い物OK?」
「ああ。全然いける口だぜ」
 何故かダリルと歌菜に対抗心を燃やす二人。

 時は少し巻戻る。

「ダリル酷い!」
 ルカルカは叫んだ。
「羽純くんヒドイ!」
 歌菜は唇を尖らせた。
 発端は、歌菜の家事をダリルが褒めた事だった。
 ただ褒めればいいだけなのに、そこで余計な事を言ってしまったのだ。
 『ルカと違って』。
 それを聞きつけたルカルカが吼えた。
 更に羽純が、歌菜の掃除の腕前について苦言を呈したことで歌菜がルカルカに泣きついた。
 そして。
「そんな事言うダリルより、羽純君のがいいもん!」
「はひ?」
「なら俺は遠野を貰う」
「ふへ?」
「どっちが素敵なデートになるか、勝負よ!」
「「ほぇえーっ!?」」
 こうして何故か入れ替えデートイベントが発生したのだった。

「なるほど、つまりこれはスワッ……ぷへっ!」
 横から口を挟もうとした裕輝を、皆まで言わさずルカルカが即座に撃ち倒した。
「ね、ルカだってお掃除は得意でしょ☆」
「それは別の『掃除』だ」