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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

リアクション

『――騎馬武者……だというのですか……!?』
 驚いた“鼬”は思わずそう声に出していた。
 エネルギーを回復した魂剛は垂の愛機である漆黒の馬――黒麒麟へと跨り、騎馬武者の姿となっているのだ。
 しかし、一度は驚いたものの、すぐに“鼬”は落ち着きを取り戻す。
『確かに雄々しい姿ですが、貴方に武器はもうない』
 そう言われても唯斗に動じる様子はない。
 広域通信を開くと、唯斗は朗々と響き渡る声で叫んだ。
「ハイナ、聞こえているか? そこは鬼鎧の整備施設。ゆえに、そこには間違いなくある筈。今ここで、野太刀を出してくれ!」
 すると広域通信に乗ってハイナの声が聞こえてくる。
『で、でも……あれは鬼鎧サイズでは扱うのが難しいでありんすよ。ましてやエネルギー残量が万全ではない今の魂剛では……』
 躊躇いの色が見えるハイナに、対する唯斗は躊躇など一切なく言い放つ。
『心配無用! 今の魂剛は単騎で万全の状態にも勝る! 既に選択の余地も是非も無い――頼む!』
 しばしの後、ハイナがコンソールを叩く音が伝わって来る。
『了解したでありんすよ!』
 数秒後、施設全体が激しく稼働する音が響き渡る。
 聞こえてくるのは巨大なチェーンが巻き取られていく音、そして何かがせり上がって来る音だ。
 魂剛が見つめる中、施設の搬入口へと、凄まじい速度で上昇してきたリフトが現れる。
 まるで搬入口のあたりへと激突するかのように上がってきたリフトはその衝撃で、積荷を外に放り投げた。
 その積荷こそ、鬼鎧の一般的な武器である鬼刀――ただし、一般的なものよりも遥かに大きなものだ。
 地面に突き立った野太刀を魂剛は全力を以て引き抜く。
 その重量たるや、魂剛が全力を以て保持しても、その機体が傾く程だ。
 気を抜けばそのせいで魂剛は落馬しかねない。
 これを自在に振りかざすのが難しいというのは、確かにハイナの言う通りだ。
 魂剛はそれを持ち上げると、“ドンナー”に向き直る。
『“鼬”。今一度、尋常に勝負――』
 “鼬”に通信を送ってから、唯斗は垂に話しかける。
『さあ征くぞ。我が友よ――』
『おう! 見せてやろうぜ! この姿になった俺達の愛機の力を――』
 雄叫びを上げる唯斗と垂。
「おおおおおおおおおおおおおお!」
『おおおおおおおおおおおおおお!』
 それに呼応し、漆黒の馬は持てる全ての力を以て大地を駆ける。
『今こそ名乗ろう――」
『――我らが名は』
 唯斗と垂は互いに宣言しながら、“ドンナー”へと斬りかかる。
『騎神剣帝!』
『騎神剣帝!』
 会心の名乗りとともに叩きつけられた超重量の野太刀。
 “ドンナー”はそれを“斬像刀”で受けるが、耐えきれず遂に“斬像刀”は半ばからへし折れる。
『な……!?』
 咄嗟に身をかわしたものの、“ドンナー”は右肩から手先にかけてを斬り飛ばされ、その場に膝をついた。
「先刻の『』。そして、先程、かの機体と繰り広げた幾合もの打ち合い。それらは決して無駄ではなかったということだ。なぜなら、それにより貴様の刀は少しずつ痛みが重なっていったのだからな。ゆえに、そこに渾身の一太刀を浴びせれば折れるのは道理」
 唯斗がそう告げると、“鼬”は感心した様子だ。
『成程。紫月唯斗――実に見事な剣士の名前。覚えておきましょう』
 “鼬”がそう言った直後、後退してきた“フリューゲル”が頭上からプラズマライフルを放ち、地面に突き立った“斬像刀”の折れた方を完全に消滅させる。
 間髪入れず二射目、三射目を放つ“フリューゲル”の援護を受けながら“ドンナー”は飛行を開始し、どこかへと飛び去って行った。