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【若社長奮闘記】動物とゆる族とギフトと好敵手、の巻

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【若社長奮闘記】動物とゆる族とギフトと好敵手、の巻

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★第八話「すみっこ」★



「スティリアとガディは、狩りや戦場では頼れる相棒で、日常では優しい自慢の友達だ。アマダスは見た目の厳つさに対して酒に目がなく、酔うと陽気になるのが可愛い」
 ドラゴンとヒュドラを笑いながら紹介しているグラキエスは、それはもう嬉しげな瞳で語った。
「あのように楽しげに話されて……私も誇らしいぞ、ガディ」
 グラキエスの姿に、アウレウスは胸を張った。
「もちろんアウレウスも俺の自慢だ」
「な、何と……私の事までお褒め頂けるとは! 身に余る光栄です、主いいいい!」
 感涙するアウレウスに、ジヴォートは良かったなぁ、と笑う。

「私も動物豆知識を披露致しましょう!」
 ずずいっと豆柴犬(ポチの助)をカメラの方へと突き出したフレンディス。ポチに女性たちが「可愛い」と声を上げる中、キラキラ輝く笑顔で豆知識を披露する。

「まず強く賢いワンちゃんを育てるには崖から落とすといいのですよ?
 私はそうポチを育てたのです!」
「えっへん」

 可愛いという声が消え、ポチを哀れむ目になった。
 グラキエスとジヴォートだけが「そうなのか」と納得しているのを見て、ベルクはとりあえず否定する。
「でも俺には突き落とすなんてできないなぁ」
「そこは愛情です!」
「そうか。愛情か……」
「いや、だから普通は駄目だからな!」
よい子は絶対真似しちゃ駄目だよ!

 その後もしばらく数多のボケと誰か1人のツッコミが冴えわたる中、柵の中でゆったりのんびりしていた動物たちが突如暴れ出した。
 混乱は混乱を呼び、グラキエスもその混乱に巻き込まれかけ、主人のピンチと判断したスティリアとガディ、アマダスが守るために攻撃態勢に入った。

「グアアアアオオオッ」

 彼らがこんなところで暴れては大変だ。グラキエスは声をかけるも、実際にかなり危ない現場になっているため、落ち着いてはくれない。
「やっぱりこうなるかよ」
「マスター!」
「ご主人様、こちらへ」
「グラキエス!」
「主!」
「あれまぁ、大変さね」
 
 その後はグラキエスやフレンディスらの活躍もあり、動物たちは大きな怪我なく大人しくなったのだが、少々止める側が暴れすぎて、セットの一部が壊れた。マリナレーゼが弁償はしたが、きっちり弁償分は働いて返すようにと彼らに言う。

「ちゃんと自分たちで働いて返すように。利子は付けないから安心するさね」
「マリナ姉。そう言う問題じゃ」
 ベルクのフォローのためについていくといったが、あれは嘘だ!
 


「おいっ突然どうしたんだ?」
 暴れ出した動物たちに驚いたのはジヴォートもだった。今回の動物たちは人慣れした子たちを選び、さらには数日前からスタジオに慣れる準備もしてきた。凶暴性のある者もいないので、突然暴れたりするわけがないのだ。
 慌てて動物をなだめに向かうジヴォートの背中に、近寄る人影があった。
「ジヴォートさんも、避難してください」
「え? でもあいつらが」
「大丈夫です。今ビーストテイマーの方を呼びに行っていますから」
 近寄った人影、女性はジヴォートへ避難するように言う。他のスタッフも観客やゲストへ同じように声をかけているので、なんらおかしいことではない。
 それでも躊躇するジヴォートの腕を女性が引っ張る。

「あれ?」
 動物たちを静めに行こうとした美羽ベアトリーチェは、観客席の最前列にいたため、ジヴォートへ近付く人影の姿をしっかりと目に捕らえた。
 少し前から、2人ともどこかスタジオの雰囲気がおかしいと思っていたので、もしかしてとその人影を観察する。
 どこかへとジヴォートを連れて行こうとする女性に対し、ジヴォートは抵抗しているようだった。ジヴォートは動物たちの方を気にしすぎていて気付いていないが、女性の身体からかすかに殺気のようなものがにじみ出ていた。
「美羽さん、あれは」
「うん、分かってる。またジヴォート君が狙われてるんだね……そうはさせないよ。えいっ」
 美羽が手に持っていた土星くん(ニルヴァーナにいる機晶生命体。詳細はマスターページをご覧ください)人形を、思い切り振りかぶって投げた!

『いてまうで!』

 人形は土星くんの声でしゃべりながらまっすぐに女性へと飛んでいき、見事に眉間に命中した。

「えっ? なんだ?」
「ごめ〜ん、ジヴォート君。ちょっとすっぽぬけちゃった」
「それはしょうがないな。ちゃんと気をつけろよ」
「すみません。彼女は私たちが医務室へ連れて行きますので、安心してください」
「悪いな。頼む」
「気にしないでください」
 申し訳なさそうな顔をして、ジヴォートは動物をなだめに向かった。美羽たちも女性を連れてスタジオを出る。そのまま医務室……ではなく、スタッフ証を確認。偽物だと判明し、治安当局に引き渡した。

 動物たちだが、どうも足に針が刺さった大型の動物が痛みで暴れたのが原因のようだ。大きな怪我をした動物がいなかったのは幸いだが、さすがのジヴォートもどこか変だと思い始めたらしい。
 動物たちやスタッフ、観客の安全を考えて撮影を中止すべきでは、スタッフと話し合っている。
「後はドブーツさんとの対談だけですし、続けませんか? 予定と損失も大きいですし」
「でも安全には変えられないだろう?」
「それはそうですが」

 話し合った結果、動物たちを全員別室へとつれていき、対談だけ撮影してしまうことになった。



「最後、もう1人ゲストが来ておられます、以上」
「ジヴォートさんのお友達さんなのですよぉ」
「ドブーツ・ライキさんなのでふ! 皆さん拍手でふよ」
「まさか本当に出てくれるなんて思わなかったよ。ありがとな、ドブーツ」
「……ふん。たまたま予定が開いていたからな」
 アシスタントたちの紹介で登場したドブーツはそう鼻で笑って言うが、反対にジヴォートは嬉しそうだ。動物が嫌いなドブーツが自分の動物番組に出てくれたのだ。
 ジヴォートは契約者たち以外に友人と呼べるのはドブーツだけなので余計に。

「俺思ったんだけどさ」
「……なんだ?」
「動物は駄目でも、召喚獣ならいけるんじゃないか?」
「いやそれは」
「ということで、シーアルジスト(召喚師)を呼んだんだ!」
「だからな、人の話を聞」
「咲耶! 頼むぜ!」
「おい」
 
 まったくドブーツの意思を無視して、今度登場したのは高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)だ。彼女自身は兄、ドクター・ハデス(どくたー・はです)
『さあ、咲耶よ! ジヴォートの番組に出演するのだっ!
 そして、思う存分、お前の召喚獣たちをアピールしてくるがいいっ!』
『え?
 ま、まあ、兄さんがそう言うなら、出てもいいですけど』
 そう言われて出ることになった。他のことは何も聞いていない。もしも聞いていたならば、断固拒否しただろう。

「高天原 咲耶です。今日は私の召喚獣【サンダーバード】と【ウェンディゴ】を紹介したいと思います」
 言うが否や、何もなかったはずのところに、召喚獣が出現した。
 咲耶が手を差し出すと、サンダーバードはそこに頭をこすりつけた。なんとも大人しい。
「ほら、この通り、ちゃんと召喚者の言うことを聞く良い子たちですから、とっても安心ですよ」
「なっ? これならお前でも大丈夫だろ?」
 キラキラした目で言われ、ドブーツは「うっ」と詰まった。
「触ってもいいか?」
「はい、構いませんよ」
「おおっすげぇ……ほら、ドブーツも」
 ドブーツは嫌そうな顔をしたが、スタジオ内の空気を読み取り、しぶしぶと召喚獣に近づいた。咲耶は笑顔で見守っていたが、そんな彼女に迫る怪しい影があった。

「目標確認。コレヨリ、作戦行動ヲ開始シマス」
「って、きゃ、きゃあっ!
 なっ、なんですか、これっ?!」

 うねうねと動く不定形の物体(スライムみたいだ)から伸びるこれまたうねうねした触手が咲耶の身体に巻きついていた。
 ハデスの命により動きだしたハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)である。
「ククク、咲耶の出演にまぎれ、我が発明品によって、番組を滅茶苦茶にしてやろう!」
 放送事故的なものを引き起こし、妨害しようとしているようだ。

「ひゃっちょ、な」

 うねる触手……本日のサービスカットである。
 だがさすがというべきか。彼らが引き起こしたのはこれだけではなかった。

「えらー発生。暴走シマス」
 咲耶だけを襲うはずだった発明品が暴走。無差別に触手を飛ばし始めた。そのうちの一本がドブーツへと伸び
「あぶねぇ」
 ジヴォートが腕を引いて助ける。
「大丈夫か?」
「あ、ああ」
 だがそんな2人へ再び迫る触手。
「2人はお下がりください、以上」
 エリスが間に入り込み、触手をなぎ払う。
「やっぱりこうなったね! エリスさんは2人をよろしく!」
「了解しました、以上」
 警戒していた紅鵡が飛び出し、続くようにジヴォートの護衛をしていたダンボール、もとい吹雪も飛び出す。
「行くであります!」
 一方、一般人の客を誘導しているのはルカルカだ。
「大丈夫だから落ち着いて移動してね!」
 実力者がひしめくスタジオ内。再び静けさを取り戻すのに、時間はそうかからなかった。

 ボコボコにされた発明品から、なんとも言えない哀愁が漂っている気がした。
「大丈夫か?」
 触手から解放された咲耶の無事を確認するジヴォートの後ろ姿に、ドブーツがびしぃっと指を突き出した。

「これで勝ったと思うなよ!」
「お、おうっ?」
 そのまま大声で言って去っていくドブーツを見送り

「なんであいつ怒ってるんだ?」
 ジヴォートは首をかしげた。



 肩を怒らせて歩いているドブーツの背中に、天音が小さくつぶやく。
「良かったですね。ジヴォートさん、怒ってないみたいで」
「ああ……! な、なんのことだっ?」
 もしや喧嘩でもしたのではとかまをかけてみたのだが、油断していたドブーツはあっさりと引っ掛かった。睨んでくる少年に天音は微笑み
「素直になったらどうですか?」
「…………」
 ドブーツはしばし無言だったが、やがて小さく言った。

「無理だよ……だって僕は、あいつの大事な友を殺したんだから」



「最初は緊張しすぎててどうなるかと」
「でも途中からはリラックスできてたし、よかったと思うよ」
「三月ちゃんの言うとおりです。私もくすくす笑ってしまいました」
「はい。いろいろありましたけど、楽しかったです。ね、イキモさん、涼司くん」
「そうだな」
「ええ。よく頑張った」
「まあ楽しかったわ」
「たいむちゃんにも会えたしー」
「これからも頑張って動物たちの現状を伝えて欲しいな」
 和やかに話しあう出演者たちとジヴォートの様子を、ルカルカは密かに下忍へと命じて撮影していた。その映像をどうするかと言うと、若社長奮闘記として番組化、放映するつもりなのだ。



 番組の撮影自体はなんとか終了し、和やかムードになっているスタジオの隅で、膝を抱えている者たちがいた。
「違うんだ。本当に違うんだ」
「もふもふ……もふもふ」
 パートナーにあることあること(?)暴露されたなぶらと、結局まったくもふもふできなかった勇平だ。

 ……こうして無事に番組撮影は終了したのだった!(完)

担当マスターより

▼担当マスター

舞傘 真紅染

▼マスターコメント

 こんにちは。皆から「この親子だからな」と思われていることに「計画通り!」とほくそ笑んでいる舞傘(まいかさ)です。
 もふもふ、出演、見学、妨害阻止、妨害などなど様々なアクションがあって、こちらも楽しませていただきました。ありがとうございます。

 動物たちは元より、お客さんにも大きな怪我なく終わることができたようです。

 これからもジヴォートともどもよろしくお願いします。あ、イキモやドブーツも!

 ではまたどこかでお会いできますと幸いです。

 もっふもふもふもふも!(訳:今回はご参加いただきまして、ありがとうございました)


※生き物を飼う際は、最後まで面倒を見るのはもちろんのこと。マナーはちゃんと守りましょう。マナーの悪い飼い主のせいで動物嫌いになる方もおられますから。
(犬ならリードをつけて散歩、袋や紙でフンをとる。水の入ったペットボトルを持って洗い流すとさらに◎)