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第三章


 DSペンギン侵攻のため、中断された武道大会。
 闘技場中央では、対戦を反故にされたイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)が掃討にあたっている。
「神聖な決闘を邪魔するとなんて許せませんわ」
「確かにな」
 そこへ顔を出したマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)
「あらマイト。あなたも大会へ?」
「ああ、イングリット嬢と対戦したくてな」
「奇遇ですわ。わたくしもあなたとお手合わせしたいですわね」
 同じ武術を扱う友人でライバル。ともすれば、時には本気で戦ってみたい。そう思っていたのだが、
「しかし、今のままじゃ大会は続きそうに無いな」
 DSペンギンと人が入り乱れる闘技場。
 こんな所で本気で戦うとなると、被害は計り知れない。
 故に、開催者は間違っても行わないだろう。
 落胆で溜息が漏れるマイト。
「あら? 今から諦めてしまうおつもり?」
 だからと言って、今後再開されないわけではない。
 とにもかくにも、この反乱を収めてから。それから話をつければいい。
 イングリットはまだ、屈していない。
 それならマイトもまた、諦めるわけには行かない。
「そうだな。これもいい腕慣らしと考えればいい」
「その通りですわ」
 ならば早期終結のため、手を取り合っての共闘が最善策。
 互いの呼吸はわかっている。
 後は鐘を鳴らすだけ。
「俺と当たるまで負けるんじゃないぞ。ましてや、キロスになんて」
「当然ですわ。わたくしを甘く見ないでください。誰にも負けるつもりはありませんの。それはあなたにも同様」
 二人、口元だけで笑いあう。
「それじゃ、前哨戦といきますか!」

――――

「ぶち殺すわよ、害鳥!」
 こちらも数少ない真剣勝負の場を奪われ、マジギレ中のリネン・エルフト(りねん・えるふと)
「フリューネとの試合、楽しみにしてたのよ!」
 近くに居たDSペンギンを【エアリアルレイブ】で吹き飛ばす。
「人の楽しみを邪魔した罪は……命で償いなさい!」
「リネン、容赦ないわね……」
 対戦相手のフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)は、そう感想を漏らした。
「手加減抜きで戦える舞台なんてそうそうないわ。それをこんなことで無駄にされるなんて。腹の虫が収まらないわよ!」
 フリューネ絡みの騒動で、彼女の理性の限界は超えてしまっていた。
「そうよね。こんなことで簡単に無し、ってのもね」
 フリューネもまた、リネンとの試合を望んでいた。
「さっさと退治しましょ!」
 獲物の槍を携え、羽をはためかせて飛び上がるフリューネ。
「空中戦なら、キミ達に遅れをとらないわよ!」
 有利な状況を作り出す。戦術における基本。
 リネンもそれに同伴する。
 しかし、その考えを逆手にとったDSペンギン。
 上空から攻撃するということは、その更に上への警戒心は薄れてしまう。つまり死角。
 彼らは屋上からの滑空という形で、その死角を突く。
「フリューネ、危ない!」
「えっ?」
 反応が一歩遅れたフリューネ。彼女を庇いつつ、リネンは【マニューバストライク】を放つ。
「飛べない鳥は地を這い蹲ってなさい!」
 勢いを殺され、DSペンギンは落下。地へと叩きつけられた。
「ありがとうリネン。助かったわ」
 礼を言うフリューネだったが、リネンの耳には届いていない。
「フリューネを狙うなんて、いい度胸しているじゃない!」
 DSペンギンを見つけるや否や、マグナム弾をヘッドショット。手当たり次第に打ち倒していく。
「ほんと、容赦ないわね」
 先程と同じ言葉を呟く。
「フリューネは私が守るんだから!」
 尚も叫びつつ攻撃を重ねるリネン。
「リネンに守られてばかりは居られないわね。私もリネンを守るわ!」
 空中戦での共闘を開始した。

――――

「お菓子の国、それは子供の夢かも知れねぇが、てめえらがやってることは目的が違う!」
 チェーンソーを振りかぶり、王 大鋸(わん・だーじゅ)は更に続ける。
「そこに笑顔がなけりゃな、ただの“悪(アク)”なんだよ!」
 振り下ろしたそれは、DSペンギンの毛を見事に剃る。
 外見から不良と言われる彼。
 悪ぶってはいるものの、根は心優しい漢。
 “悪(アク)”と“悪(ワル)”は違うのだ。
「そう! ダーくんの言うとおり!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)もそれに同調する。
「“悪(アク)”は懲らしめないといけないよね! ダーくん、やっちゃって!」
「おう、美羽! 任せとけ! 一匹残らず剃りとってやるぜ!」
 電動音が唸りをあげる。