蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

うそ!?

リアクション公開中!

うそ!?

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「まさに、ラストダンジョンだな」
 生体要塞ル・リエーの変化した城に入った雪国ベアが、周囲を見回して言いました。
 なんだか、宇宙空間のような場所に、複雑に階段が上へ下へと繋がっています。遠くの方に、ボスがいるらしい玉座が見えてはいるのですが、はたして、そこに到達するにはどうしたらいいのでしょうか。
「とにかく、鷽を倒しましょう」
 ソア・ウェンボリスが、飛びかかってきた鷽の嘴を毛糸で縛り、身体もグルグル巻きにしてポイと階段の下に捨てました。雪国ベアも同様にして、つかまえた鷽をポイしていきます。
「悪魔め、我が輩と戦え!」
「お師匠様、止まってくださーい」
 猪突猛進していくアガレス・アンドレアルフスですが、完全に迷ってしまっていて、いったい今どこにいるのかすら分かりません。
 壁際の方では、セリス・ファーランドが鷽作業員と共にぺたぺたと壁にアワビモザイクを貼りつけていっています。
「ええい、悪魔の手下め。我が輩の最終必殺技を受けてみるのじゃあ!」
 イライラが頂点に達したアガレス・アンドレアルフスが、セリス・ファーランドと一緒にいる鷽たちに狙いを定めました。その全身が、光につつまれ始めます。
「こんな所で、最終なんたらを出してどうするんですかあ。動物虐待です!」
 そう言って、リース・エンデルフィアがグリモアチェーンで縛りつけたウィッチクラフトの秘儀書をブンブンと振り回しました。そのとき、勢いあまって、ドラゴンアーツのもの凄い勢いでウィッチクラフトの秘儀書が手からすっぽ抜けました。そのまま、吸い込まれるようにして、鳩の姿のアガレス・アンドレアルフスにクリーンヒットします。動物虐待です。
「ああ、お師匠様ー!」
 リース・エンデルフィアは、ウィッチクラフトの秘儀書と共に奈落の底に落下していくアガレス・アンドレアルフスを空飛ぶ箒に乗って追いかけていきました。
「何かが落ちていったぞ?」
 落ちていったアガレス・アンドレアルフスをチラリと見て、雪国ベアが言いました。
「お師匠様ー」
 後を追うようにして、今度はリース・エンデルフィアが落ちていきます。
「エンマー、どこじゃあ!」
 今度は、ザーフィア・ノイヴィントが、奇妙な戦闘ポーズをとったまま落ちていきました。
「早く、ボスを倒しましょう。長引くと、私の精神が持ちません」
「俺様もだ、御主人」
 なんだか、いろいろ落ちてくる物を無視しながら、ソア・ウェンボリスと雪国ベアはダンジョンの最深部を目指しました。
「はははは、よくここまで来たな。侵入者よ。褒美として、貴様らも、アワビにしてやろう」
 玉座に座っていた銀髪の美女が、すっくと立ちあがりました。頭の上には、鷽を一匹乗せています。
「あれも、鷽なのかしら?」
「不思議な親近感をいだくんだが、いや、ライバル心か? とにかく、やっつけちまおうぜ、御主人」
 ちょっと訝しみながらも、敵らしい敵はこの美女だけなので、ソア・ウェンボリスと雪国ベアは、攻撃することにしました。
 実際は、ポータラカ人であるマネキ・ングのもう一つの姿なのですが、本人ですらよく把握はしていません。
「えーい、くらいなさい、雪国ベアぬいぐるみ爆弾!」
「ちょっ、御主人、何を投げて。ひー!」
 どこかから取り出したのか、雪国ベアのぬいぐるみをちぎっては投げちぎっては投げし始めたソア・ウェンボリスに、雪国ベアが悲鳴をあげました。
「な、何をする!」
 飛んできたぬいぐるみを、マネキ・ングがあわてて避けました。着弾した雪国ベアのぬいぐるみが爆発して手足が吹っ飛びます。
「ひ〜!」
 まるで自分がバラバラになった気がして、思わず雪国ベアが悲鳴をあげて身体をおさえました。
『ボクと契約して……』
 ちゅどーん。
 ぬいぐるみ妖精も混じっていたようです。当然、バラバラになりました。
「なんと言うことをするのじゃ。爆発で、足場が崩れでもしたらどうする!」
 危ないと、マネキ・ングが叫びました。とたんに、いくつかの階段がガラガラと崩れ始めます。
「うわっ、作業途中なのに……」
 セリス・ファーランドが、アワビと共に落ちていきました。
「まずい。何かヤバいこと言って、嘘が本当になる前に、奴の口を塞ぐぜ」
「任せておいてください」
 雪国ベアに言われて、ソア・ウェンボリスが光学迷彩で姿を消しました。
「オラオラオラ、ぶっ飛ばすぜ!」
 かかえた緩世音菩薩像を振り回しながら、雪国ベアが派手に階段を駆けあがっていきました。
「我に逆らうなど、ええい、アワビ手裏剣を受けてみるのだよ」
 マネキ・ングが、アワビの殻を雪国ベアにむかって投げつけてきました。飛んでくるアワビの殻を、雪国ベアが階段の途中で立ち止まって打ち返します。
「ええい、お口にチャックです!」
 その隙にマネキ・ングの背後に回り込んだソア・ウェンボリスが、彼女に最新の雪国ベアグッズを被せました。最新の、雪国ベアパンツタオルです。パンケチの姉妹品として、パンツが数枚横に繋がった物となっています。マネキ・ングはその中央のパンツを頭から被らされ、左右にはだらんといくつものパンツを垂れ下げた姿にされてしまいました。
「なんじゃこりゃあ!?」
 思わず、マネキ・ングが両脇のパンツを掴んで下に引きました。完全に、荒ぶる変態のポーズです。そのため、頭の上に乗っていた鷽が、パンツに押し潰されて消滅しました。とたんに、マネキ・ングが元の招き猫の姿に戻り、足許の床が崩れました。もちろん、ソア・ウェンボリスと雪国ベアも巻き添えです。
「きゃああああ……」
 鷽空間の消滅と共に、中にいた者たちは、全員生体要塞ル・リエー内のアワビ倉庫のプールの中へと落っこちていきました。