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うそ!?

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うそ!?

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    ★    ★    ★
 
「ここが、鷽の巣か。どう見ても、巣っていう感じじゃないな」
 銀色の砂の原を見回して、緋桜 ケイ(ひおう・けい)が言いました。
「確かに。だが、今のこの姿が、巣の本当の姿であるとは誰にも言えまい?」
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が言い返しました。
「さてと、じゃあ、どうやってそれを調べるかだが……」
「なあに、ルーツを辿ればよいのだ。ふうむ……。そこだ!」
 トレジャーセンスで周囲をサーチしていた悠久ノカナタが、怪力の籠手の力を使って、いきなり魔女の大釜を投げつけました。
「うっ、うそ〜!」
 ふいを突かれた鷽が、大釜を被せられて捕獲されます。
「ふふふ、たわいもない」
 満足気に、悠久ノカナタが逆さになった大釜をポンポンと叩きました。中にはカオティックローブが仕込んであり、それで鷽をくるむと自慢げに片手で掲げました。巾着状に口を縛られたローブのフードの中で、鷽がジタバタと暴れています。
「で、どうするんだ?」
「もちろん、タイムワープだ」
 自信満々で、悠久ノカナタが策を披露しました。
「でも、あれって、鷽の作ったでたらめだろ」
 それじゃ、検証にならないと緋桜ケイが言いました。
「だが、一片の真実を含んでおるのも確かだ。要は、それを見極めればいいこと。さあ、行くぞ。今こそ旅立ちのとき! いざ、タイムワープ!!」
 緋桜ケイと手を繋ぐと、魔女の大釜をバンバンと叩きながら、悠久ノカナタが叫びました。
 とたんに、周囲の景色が変わりました。
 今立っているのは、普通の地面の上で、北には大きな雪山が見えます。
「俯瞰で見てみよう」
 そう言って、緋桜ケイが、空飛ぶ箒で舞いあがりました。悠久ノカナタも、魔女の大釜に乗って後を追いました。
 見たところ、ここは島ではなくて、パラミタ大陸から突き出た半島のようです。
 そのとき、突然空が割れました。
 本当に、空がまるで書き割りであったかのように罅が入り、漆黒の空間が現れたのです。その中から、何か巨大な物体が飛び出してきました。真っ黒な球体にも見えますが、その直径は一キロほどもありそうです。それが、墜落して地面に激突しました。また、周囲にも、銀色の大小の物体が降り注ぎ、地面に激突して砕け散ります。
「しっかりつかまって!」
 衝撃波に翻弄されながら、緋桜ケイが叫びました。空飛ぶ箒と魔女の大釜が、まるで木の葉のように空中で翻弄されます。
 激突の衝撃はそれには収まらず、半島が二つに砕けて雲海へと流れ出しました。先端の部分が、雲海を流れるパラミタ大陸を一周する気流に乗って、遥か彼方へと流されて見えなくなりました。大陸と繋がっていた方の半分は、途中で安定したらしく、浮き島となります。どうやら、それがこの鷽の巣があるという浮き島になったようです。
「これは……、巨大イコン!? いや、ヴィマーナ母艦か!?」
 墜落した巨大な黒い球体をさして、悠久ノカナタが言いました。かつて、茨ドームに隠されていた巨大イコンそっくりです。同時に、ヴィムクティ回廊から姿を消した、変質したヴィマーナ母艦とも同じ物でした。
 周囲に落ちたイレイザー・スポーンに寄生されたヴィマーナの破片と思われる物体は、細かく砕け散って銀色の砂原を構成していました。その中央に、魔方陣を浮かびあがらせながら、ヴィマーナ母艦が奇妙な黒い煙をあげていました。自然の煙とは思えないそれは、生き物のようにクネクネとうねっています。
「調べてみよう」
「待て、迂闊に近づかない方がよさそうだぞ」
 近づこうとする緋桜ケイを、悠久ノカナタが止めました。
 見れば、いつのまにか銀砂が、ところどころ盛りあがって不気味にうねっています。まるで、海か、巨大な生き物のようです。ところどころには、黒い煙やスパークのような物が混じっていました。
 鷽が作りだした物は、この場所の過去の記憶の再現かもしれませんが、安全かどうかまでは保証できません。
「いずれにしろ、わらわたちが干渉するよりも、成り行きを見守った方が正確であろう。へたに、存在しなかったはずのわらわたちへの対応を鷽にさせるよりも、この場所のルーツを演じること以外の選択肢を鷽に与えない方が肝心だ」
 そう言って、悠久ノカナタが緋桜ケイに充分な距離をとらせました。
「まどろっこしい……。そして時は矢のように流れる!」
 捕獲した鷽の入ったローブをちょんちょんとつつきながら悠久ノカナタが言いました。早送りです。
 風景は、現在の鷽の巣のようにおちついた銀砂の原になりましたが、ヴィマーナ母艦はまだあります。
 見ていると、どこからか数機のポータラカUFOが現れました。どうやら、ポータラカからの調査団のようです。
 ヴィマーナを調べていたポータラカ人たちは、中から十二人の剣の花嫁と一人のポータラカ人を救出しました。
「よかった。サイコメトリで出てきたという彼女たちは助かったみたいだ」
「そうだとよいがな」
 急いで搬送されていく十三人を見送りながら、悠久ノカナタが言いました。
 ヴィマーナの構造を知っているらしいポータラカ人たちは、真っ先にブリッジにいる操縦装置の中の彼女たちを救出したようです。とはいえ、長い眠りについていたらしく、目覚める兆しのない彼女たちをポータラカUFOで急ぎポータラカへと運んだのでした。
 そして、事件はその後起こりました。
 変質してしまったヴィマーナを調査するために、ポータラカ人たちが再起動を行ったときです。蠢く銀砂に、突然何人かのポータラカ人たちが襲われました。その様は、イレイザー・スポーンに寄生されたかのようでしたが、少し様子が違いました。寄生されたポータラカ人たちが変質していき、その姿がまったく別の者へとなっていったのです。その者たちは、変質に耐えられなかったのか、そのまま倒れてしまいました。
「あの姿は……」
 その倒れている者たちの姿を見て、緋桜ケイたちが絶句しました。それは、紛れもなく、オプシディアンたちだったからです。
「それでどうなったのだ。早く見せい!」
 悠久ノカナタが、鷽の入った袋をポンポンと叩きました。
 また早送りです。