イルミンスール魔法学校

リアクション

　
「鷽に、これ以上、好き勝手はさせぬ」
　蒼空学園の中から、どこにいるのか分からないコア・ハーティオン（こあ・はーてぃおん）の声が響きます。かこんと、校舎の窓に『嘘か真か？！　目覚めるパワー？！の巻』と書かれた看板が垂れ下がりました。
「Ｈ・Ｅ・Ａ・Ｒ・Ｔ機関フルバースト！　来い、ドラゴランダー！」
　その声に呼ばれて、龍心機　ドラゴランダー（りゅうじんき・どらごらんだー）が崩れかけた蒼空学園の中へと飛び込んでいきました。
　大きく空中にジャンプしつつ、身体を開いて変形します。まるで恐竜の開きです。
「とうっ！」
　蒼空学園の中から巨大な影が飛び出してきたかと思うと、龍心機ドラゴランダーを貫くようにして、その身に纏いました。
『龍心合体ドラゴ・ハーティオン！！』
　龍心機ドラゴランダーと合体したコア・ハーティオンが、残っていた蒼空学園の屋根を壊してその巨大な姿を現しました。
　当然、屋上にあった新風燕馬たちのブラウヴィント・ブリッツは、屋上から転げ落ちて粉々です。壊れて絵になるイコンはブラウヴィント・ブリッツと言われるまでによく壊れます。
『これ以上の不条理、このドラゴ・ハーティオンが許さん！』
「うしょおぉぉぉぉん！」
　見得を切るドラゴ・ハーティオンに、鷽が一声高く鳴きました。
『グレート・勇心剣！』
　一撃で決めようと、ドラゴ・ハーティオンが叫びました。胸部のドラゴランダーが、口から巨大な炎を吐き出します。それが一筋の光に集まって、炎につつまれた剣となりました。
「どこに、そんな物入れとくスペースがあるのよ！」
　それを見ていたラブ・リトル（らぶ・りとる）が、思わずツッコミました。
「だいたい、本当は、ハーティオンには合体機能なんてないのよね。格好よくドラゴランダーがサンマの開きになって、ハーティオンがそれを纏っている気になっちゃってるけど、本当はドラゴランダーがハーティオンを肩車してるだけなんだから。勇者フィルターって便利よねー」
　せめて、乗り込んでいると言ってあげてくださいと言いたくなるラブ・リトルのツッコミで、たまにドラゴ・ハーティオンの合体が、肩車に変化します。ちょっとめまぐるしいです。はたして、どっちが本当の姿なのでしょうか。それとも、両方とも嘘？
『必殺！　彗星！　一刀両断斬り！』
　ドラゴ・ハーティオンが、必殺技を放ちました。
　カキン！
『な、なんだと！？』
　あっけなく、勇心剣がポキンと折れました。
「うしょしょしょしょしょしょ……」
　全身をアーマーにつつんだ鷽が、三日月目をして笑いました。どうやら、フルアーマー・ジャイアントピヨを参考にしたようです。
『ならば、黄龍合体だ。来い、龍帝機キングドラグーン！』
　ドラゴ・ハーティオンが呼ぶと、残っていた蒼空学園の残骸の中から黄金の龍が現れました。
「どこにいたのよ！」
　思わず、ラブ・リトルが突っ込みます。しかも、その目の前で、龍心機ドラゴランダーがコア・ハーティオンを肩車したままキングドラグーンに乗っかりました。グレート・ドラゴハーティオンの完成です。
「何、あのできの悪い組み体操は……」
　ラブ・リトルが頭をかかえます。確かに、これでは、鷽といい勝負です……ホント？
　では、コア・ハーティオンヴィジョンで見てみましょう。
　機体中央を開いたキングドラグーンが、グレート・ドラゴハーティオンを背後からつつみ込むようにして合体しました。光の翼が広がり、グレート・ドラゴハーティオンがキングドラグーンの黄金につつまれます。
『黄龍合体！　グレート・ドラゴハーティオン！！　心の光に導かれ、勇気と共にここに見参！』
　グレート・ドラゴハーティオンが見得を切りました。
「うーしょー」
　鷽は興味なしです。足で頭を掻いてます。
『グレート・ドラゴハーティオン！　彗星！　一刀両断斬り！』
　カキン……。ポキッ……。
「うそ？　うしょしょしょしょしょしょ……」
　笑われました。
　またもや、剣が一本無駄になりました。
『そんな……馬鹿な……』
「当然の結果ね……」
　うちひしがれるコア・ハーティオンとは対照的に、ラブ・リトルはさもありなんという顔です。
「マダ、我が輩、イル……」
『おお、バグベアード！』
　突然声をかけられて、グレート・ドラゴハーティオンが勇気を取り戻しました。
　星怪球　バグベアード（せいかいきゅう・ばぐべあーど）が、巨大化してグレート・ドラゴハーティオンの後ろに現れました。さらに、星心合体ベアド・ハーティオンに変形します。
「ちょっとお、そのもう一つの巨大ハーティオンはどこから取り出したのよお！」
　容赦なくラブ・リトルが突っ込みます。まあ、当然の疑問です。
『今こそ、すべての力を合わせるとき。宇宙に邪悪が溢れても、心の力が輝く限り！　正義の炎は燃え盛り、いつか銀河を希望で照らす！』
　ベアド・ハーティオンの身体がバラバラになると、グレート・ドラゴハーティオンの各部にくっつきました。高下駄、グローブ、ヘルメットと、まあ、いろいろです。最後に、ハーティオン新しい顔よーが、どこからかせり上がってきてフェイスマスクが一新されました。
『超龍星合体！　キング・ドラゴハーティオン！　希望の心に照らされて、奇跡と共にここに誕生！』
「えっと、トーテムポール？」
　ラブ・リトルの目から見たら、コア・ハーティオンの上に星怪球バグベアードがちょこんと乗っかっただけです。
『よし、今、必殺の……なんだっけ！？』
　すでに、すべての剣を折られていたので、必殺技がまだありません。
『ハートビート・キャノン！　コスモハート・ブラスター！』
　とにかく光線技を叩き込みますが、鷽は、大丈夫すべて跳ね返した状態です。
『私たちの力では、鷽には勝てないのか……』
　最終回一回前の心理状態に陥って、キング・ドラゴハーティオンがうちひしがれました。もはや打つ手なしです。