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うそ!?

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    ★    ★    ★
 
ヌーベル・フランスを出港。コースをコンロンへとむけます」
 アストロラーベ号の舵をとって、フルリオー・ド・ラングル(ふるりおー・どらんぐる)が言いました。
「よろしい。進路そのままだよ」
 満足そうに、フラン・ロレーヌ(ふらん・ろれーぬ)が言いました。
 鷽の討伐にむかった黒乃 音子(くろの・ねこ)たちと分かれて、フラン・ロレーヌたちは別の目的地へとむかっています。そのため、鷽時空とも無関係で、のんびりとした通常航海のはずでした。
 こういうときには、ベースとなる機動要塞は便利です。ヌーベル・フランスは公称長径18000メートル、短軽8000メートル、全高850メートルもある巨大な浮遊都市でした。もちろん、情報操作は当然ですから、正確な大きさが数字通りであるとは限りません。
「後方に、アンノウンが三機。イコンです。識別信号を出していませんね」
「敵かい。不審機は海軍として検閲する必要があるんだよ。即時停止の発光信号をあげなさい」
 フルリオー・ド・ラングルの報告を受けて、フラン・ロレーヌが命じました。
 けれども、発光信号に返信はありません。逆に、不審機から攻撃がきました。
「回避行動とれ。反撃開始!
 急いで、フラン・ロレーヌが命じました。
 
    ★    ★    ★
 
「うそおぉぉぉん!!」
「ついに現れたか、巨大鷽。きっと奴が、ここのボスなんだよね」
 現れた巨大鷽を見て、黒乃音子が言いました。フィーニクスタイプのEsprit M(戦闘形態)のコックピットの中で、パイロットスーツ代わりのにゃんこアーマーに身を固めています。
「周囲の鷽が、次々と合体していることから、間違いないと思うよ」
 サブパイロット席の長曽禰 サト(ながそね・さと)が答えました。
 敵は巨大ですが、黒乃音子と長曽禰サトもイコンに乗っているので、少しも負ける気がしません。けれども、時間と共に大鷽はどんどん巨大化していき、じきに機動要塞ほどの大きさになってしまいました。
「イルミンスールからの正式な依頼だから、遠慮なく攻撃するよ。ああいう、冗談みたいな敵に、イコンのまともな攻撃が通じるのかどうか、確かめるいい機会だもんね。それに、うまくやっつければ、いろいろと御褒美もありそうじゃない」
 軽く舌なめずりして、黒乃音子が言いました。見あげるほどに敵が巨大になっても少しも怯みません。むしろ、的が大きくなって狙いやすいぐらいです。
 イルミンスールからの報酬は、パラミタ鱒の食べ放題かなんかだったらいいかもしれません。
 ところが、そんなことを考えてしまったものですから、聡くそれを察知した大鷽が鱒を口からミサイルのように発射してきました。
「きゃああ、生臭い、生臭い!」
 コックピットの中まで臭ってくる魚臭さに、黒乃音子と長曽禰サトが怯みました。
 その一瞬を見逃さない者がいました。
「イコン、滅ぶべし!」
 大声で叫ぶと、22式レーザーブレードを持ったシルフィスティ・ロスヴァイセが、六熾翼を広げてEsprit・Mに突っ込んできました。同時に、大鷽が目からビームを発します。
 ゴトリ。
 Esprit・Mの左腕が光の剣とビームを同時に受けて切り落とされました。
「左腕損傷。使用不可です」
 長曽禰サトが、叫びました。
「何!? 鷽に洗脳された人がいるんだもん? 仕方ないよね、フランソワに連絡して、増援を要請して!」
 黒乃音子が言いました。
 せっかく、フランソワ・ポール・ブリュイ(ふらんそわ・ぽーるぶりゅい)のヌーベル・フランスが近くにいるのですから、戦力の出し惜しみをするのは愚かです。
「ふ、見たか……」
「いいかげんにしなさい!」
 勝ち誇るシルフィスティ・ロスヴァイセを、リカイン・フェルマータがシバいて大人しくさせました。
 そのときです、突然鷽の巣全体が翳りました。太陽の光が、何かによって遮られています。
「ヌーベル・フランスです。来てくれたよ」
 モニタで確認しながら、長曽禰サトが言いました。
『どいて、どいて、どいてくだされ〜!!』
 Esprit・Mに、フランソワ・ポール・ブリュイから通信が入りました。
 どうやら、巨大になってしまっているヌーベル・フランスを制御できないようです。
 なにせ、公称で縦18000メートル、横8000メートルの巨大要塞です。そんな大きさの物体を、浮遊島の上部に移動させてまともに操作できるはずがありません。
 つまり、超巨大機動要塞が、墜落してきているのです。
「オイ、アキラ。なんとかするネ」
「む〜り〜」
「潰される! これもみんなフィスのせいだからね」
「イコンがすべて悪いのよ」
「なんで落下してくるんだもん!」
「呼ぶんじゃなかったよね」
「ピヨちゃん、なんとかして!」
「せめて、男として死にたい……」
「悪魔め。いいだろう、その挑戦受けてたつ!」
「無理ですよ、お師匠様」
「なんで、こんな大きな物が存在するんです」
「間違いなく、鷽時空の産物でございます」
「どこかに退避を」
「あーん、もう嫌ですわ」
「このままでは、全滅エンドです」
「ぢゃ、そゆうことで。俺様は、先逃げるわ」
「せっかく、手がかりを得たというのに」
「いや、まだ諦めるでない!」
 もう、調査隊全員がパニックです。逃げ場がありません。
「こうなったら、Esprit・Mで、受けとめるよ!」
「不可能です」
「無理でもやるの!」
 果敢にも、黒乃音子がEsprit・Mでヌーベル・フランスを受けとめようとしました。
「Esprit・Mは、男の子ぉ!!」
 無理です。
「うしょおぉぉぉぉ!!」
 ずずーん。
 ヌーベル・フランスが、鷽の巣に激突しました。もうもうたる砂煙と共に、すべての者が下敷きになりました。
 激突の衝撃で、ヌーベル・フランスが崩壊していきます。
 
 BAD END.
 
 すべてが消え去りました。空中に、変な文字が浮かびあがります。
 いいえ、ちょっと待ってください、完全に崩壊したヌーベル・フランスの下から何かが現れました。
 超巨大アワビです。
 生体要塞ル・リエーの表面についたアワビが急成長した物のようです。さすがは、パラミタアワビ、大きさと成長速度がハンパありません。
 その殻の表面に、一筋の亀裂が走りました。
「剣神一閃! ファナルカリバン・ブレイク!!」
 突如亀裂から神剣エクス・カリバーンの切っ先が現れました。それが、亀裂に沿って走り、アワビの殻を真っ二つにします。
「し、死ぬかと思ったあ」
 尻餅をついて倒れていたラブ・リトルが、ほっと安堵の息を吐きました。なんとか、全員アワビの下にいて助かったようです。
「えねるぎー切レ」
「形態維持デキナイ……」
 ハデスの発明品と星怪球バグベアードが同時に報告しました。
「合体が解ける……」
 コア・ハーティオンと龍心機ドラゴランダーとその他大勢が、合体が解けてバラバラと地面の上に転がります。
「ううっ、戦力差がありすぎじゃん……」
 いつの間にか一緒に墜落していたアストロラーベ号の中で、フラン・ロレーヌが呻きました。
 大鷽は、落ちてきたヌーベル・フランスに押し潰されてしまったのか、すでに消滅していました。ヌーベル・フランスも、本物だったのかどうか、跡形もなくなっています。
「鷽も、エネルギー切れのようだな」
 一面に広がる銀砂を手に取ると、ドクター・ハデスがつぶやきました。