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第三回葦原明倫館御前試合

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第三回葦原明倫館御前試合

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一回戦

   審判:プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)(葦原明倫館)

○第一試合
一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)(葦原明倫館) 対 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)(シャンバラ教導団)

「では、これより第三回葦原明倫館御前試合を始めます」
 無表情に淡々と、プラチナムは試合の開催を告げた。今年も着用しているのは、菊綴の着物に袴、烏帽子、帯に短刀、そして軍配である。御前試合公式審判の制服だ。
「始め!」
 軍配が振り下ろされ、まずは小次郎が悲哀へと斬り――いや殴り――でもない――叩きかけた。
 ハリセンで。
 武器はこれでいいかという試合前の確認に、小次郎は胸を張って「おう!」と答え、プラチナムは「そうですか」と深く追求することもなく、許可した。要は殺傷能力がなければいいのである。
 一方の悲哀は、「ナラカの蜘蛛糸」の代わりに、やや丈夫な普通の糸で申し込んだが、こちらは見えないという理由で許可されなかった。素手か、明倫館で用意した武器から選ぶよう言われ、悲哀は木刀を取った。
 小次郎のハリセンが救い上げるよう、悲哀の足元を狙う。悲哀はそれを、木刀で軽くいなした。そしてそのまま、【実力行使】で小次郎を取り押さえようとしたが、軽薄なようでいてさすがは教導団の一員。悲哀が力を溜めた瞬間を見逃さず、ハリセンが彼女の脳天を直撃した。
 パシイッ!!
「ああっ……!」
「それまで!!」
 悲哀のか細い悲鳴と同時に、プラチナムが軍配を小次郎へ向け、試合終了を告げた。

勝者:戦部小次郎


○第二試合
マネキ・ング(まねき・んぐ)(葦原明倫館) 対 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)(薔薇の学舎)

「ポータラカ流ニャン斗真拳伝承者、マネキキュール(中略)ユングであーる!!」
 高らかに名乗る招き猫を前に、クリストファーは戸惑った。
「これいくら何でも、狡いんじゃ?」
 的が小さすぎる。当てるのが大変だ。
「それもそうですね。では人型になって下さい」
「何だとぉ!?」
「嫌なら失格です」
 審判に言われては仕方がない。マネキはいったん引っ込み、人型になって戻ってきた。かなりの美女である。本当にさっきの招き猫と同一人物かクリストファーは怪しんだが、
「さあ、参れ!」
と居丈高に叫ぶのを聞いて、間違いないと納得した。
「行くぞ! ドラゴンライダーは地上でも戦えるって事をみせてやるぜ!」
 クリストファーは、スピアを構え、マネキの足元を狙った。だがマネキはスピアを蹴飛ばし、拳でクリストファーの腕を強かに殴りつけた。
「打つべし!」
「くっ!!」
 痺れる左腕を庇い、【百獣の王】でダメージを回復させながら、再びマネキの足元へ狙いを定める。――これは誘導だった。最後の一手のための。
 ところがマネキもまた、全く同じ動きで、クリストファーの胸へ拳を突き出した。
「打つべし!」
「しまっ――!」
 同じ攻撃はしてこまい――そう考えていたクリストファーは、最後の大技をかけることなく敗れたのだった。

勝者:マネキ・ング


○第三試合
マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)(葦原明倫館) 対 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)(シャンバラ教導団)

「イイイーーーッ、YA!!」
 ルカルカは、対戦相手がくるくる踊っている様子をぽかんとして眺めていた。
 高級スーツに中折れハット――明らかに試合に相応しからぬ格好だが、まだそれはいい。問題は顔に施されたメイク――ひょっとしたら素顔かもしれない――、踊り、奇声etc。
「だんだん体が温まってきたよ! さぁ、僕らの愛を試そうか!」
「あ、愛?」
「そうさ! ボクは愛の戦士! さぁ! この試愛で、お互いの愛を試そう!!」
 字が違っているのだが、生憎、耳で聞くだけではその違いが分からない。ルカルカは首を傾げながら、二振りの木刀を構えた。
「行くよっ!!」
 マイキーはくるりと反転し、ルカルカに側面を向けた。そして爪先と踵を使って、カニのように移動していく。
「ええ!?」
 一体これは、どういう技なのだろう? クラブステップを武術の足捌きと勘違いしたルカルカは、思わず身構えた。
 マイキーはルカルカの間合いに入ると、くるりと回転し、左足で彼女の足首を払った。が、警戒していたルカルカはそれを飛び上がって避け、逆にマイキーの手を強かに打った。
「Oh! やるね!」
 ルカルカはいったん距離を取ったが、マイキーはそのまま、するすると近づいていく。サイドウォークだ。
「うえ、気持ち悪い……」
 ルカルカは顔をしかめ、早めに決着をつけるべく、マイキーの額に木刀を振り下ろした。
「甘いね!!」
 マイキーのリズムを読み切れず、ルカルカの木刀が空を切る。間髪入れず、マイキーは彼女のふくらはぎを蹴りつけた。
「きゃあ!」
 がくり、とルカルカは膝をつく。マイキーはとんとんと地面を蹴って、再び距離を取った。くい、と帽子を軽く持ち上げ、ウィンクする。
「ボクの愛はどうだい?」
「……すっごくムカつく」
「Oh、哀しいこと言わないでおくれ!」
 マイキーはルカルカに背を向けた。――今度は分かった。ムーンウォークだ。
「これは舞踏会じゃないんだからね!」
 ルカルカの木刀が、救い上げるようにマイキーの足を狙う。マイキーもまた、くるりと回転し、それを脛で受け止めた。
 バキリ、と音がした。
「オー……」
 マイキーがか細い悲鳴を上げた。「……折れた」
 プラチナムが傷の具合を確認し、マイキーは高峰 結和(たかみね・ゆうわ)新風 燕馬(にいかぜ・えんま)の待つ救護所へ運ばれていったのだった。

勝者:ルカルカ・ルー


○第四試合
エメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)(イルミンスール魔法学校) 対 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)(天御柱学院)

「…yyよ よろしく ぉぉぉnねね、おねが お願いs、まs」
 エメリヤンは頭を下げながら、言葉にならぬ挨拶を口にした。申し込むときには、結和相手に「前回いいところまで行ったからね。今度は目指すは優勝だよー!」と張り切っていたのだが、やはり話すのは苦手だ。
 だが、上がっているわけでも、緊張しているわけでもないことは、その表情でリカインにも分かった。やる気が満ち満ちている。
「行くわよ!」
 リカインは、盾を構えた。武器はなく、これだけだ。
 エメリヤンは模擬戦用ナイフを二振り握り締め、【古代の力・熾】を使った。【先の先】でスピードアップしているものの、その隙を見逃すリカインではない。
 彼女の盾が、エメリヤンを真正面から襲う。
「う、うわっ!」
 術を発動するより速く攻撃を食らってしまった。だがエメリヤンは咄嗟に盾を掴み、そのままリカインへを押し返すように突っ込んだ。
「勇気あるわね!」
 リカインは盾を手放し、さっと横へ移動した。勢い余ったエメリヤンは止まることも出来ず、無防備な状態になる。そしてリカインの手刀が、エメリヤンの首筋に叩きつけられた。
「それまで!」
 プラチナムの軍配が上がる。
「……」
 エメリヤンは相変わらず無口だったが、ずどんと落ち込んでいるのが背中を見るだけでも十分すぎるほどに分かった。

勝者:リカイン・フェルマータ