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村にて

「そう言えば、前に来た時に聞いて回っていたのですが、どうも……この村の騒動には、粛正の魔女と名乗る人が、関わっている……らしい、ですね。」
 郁乃が温泉にて妄想にふけっている頃。相変わらず村に観光に来ていた非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)はパートナーたちにそう話を振る。
「粛清の魔女? 怖い名前ですわね」
 近遠の言葉にユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)はそう返す。
「粛清でございましょうか? 魔女が、でございましょうか?」
「勿論、粛清がですわよ。魔女だというだけで怖がられては、かないませんわ」
 魔女であるユーリカはアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)の言葉にそう答える。
「此処には種族として魔女と呼ばれる人達がいますからね。地球でだと一部、そういう意図をもって使われる事もありましたけれど」
 恐怖の対象として魔女と呼ばれる存在……あるいは概念が地球にはあったと近遠は言う。
「しかし、粛清と言うと何か悪いものを排除、取り締まって、正しくしようとしている様にも聞こえるのだよ」
 話を横で聞いていたイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)はそう感想を言う。
「何か、時に誰かの命の損失を伴って排斥をする様な印象もありますけれど、本来はそうですわよね」
「何故かそういう印象が伴いますけれど、元々はそういう意味は無いのでございますか?」
 ユーリカの言葉にアルティアは疑問を持つ。
「そうですね……本来、意味には無くとも……伴い易いもの、では……あるかも知れませんね。パラミタにくる前、地球で読んだ書籍・記録では、主に”そう”でした」
 それこそ『粛正』の名のもとに行われた『魔女狩り』を始め、粛正と共に血が舞う記録は数知れずある。
「結局、何者かが正しい事と思って、村を存続させない為に働いている……という事に、話が戻るだけなのだよ」
「情報が足りないのでございましょう」
「意図も理由も、何もわかってませんわね」
「少し気になって、イルミンスールの図書館も、浅い層を少し探してみたのでございますが、それらしい書籍は探せなかったのでございます」
 ただ、と置いてアルティア。
「この村の近くに昔大きな街があった……その街の名は『アルディリス』。それだけは気になったのでございます」
 そんな名前の街があっただけで詳しいことは分かっていないがとアルティアは言う。
「この辺の歴史書か何かが、あるとは限らぬであろうが、今度皆で行ける範囲で少し深い層も探しに行ってみるのも良いかもしれぬな」
 その街について調べれば何かわかるかも知れないとイグナは言う。
「まぁ、何か新しい情報も……あるかも知れませんし、村の人達に色々聞いて回りますか? 観光のついでに」
 話が一段落した所で近遠はそう言う。ここで話し合っても進展はないと判断してだろう。
「そうですわね。大きな温泉施設作るという話も聞きましたし、村長に会いに行くのもいいかもしれませんわ」
 そうしてミナホのもとに向かった四人は何故か村興しの相談に乗ることになったのだった。



「できた〜!」
 完成した祠を前にアニス・パラス(あにす・ぱらす)はそう喜んだ様子を見せる。
「どうかな? どうかな? 『皆』の希望にそえられてるかな?」
 アニスが『皆』と言う相手にいろいろと聞きながらアニスは祠作りをしていた。ミナス像のある広場、その端の一角に小さいながらもしっかりとした祠を作り上げていた。
「さて祠が無事にできたのは良かったが……」
 祠の作成を手伝った佐野 和輝(さの・かずき)は祠の完成にひとまずの安堵を浮かべながらも少し難しそうな色をして見せていた。
「スフィア、何か新しく分かったことはあるか?」
 その難しい顔をする原因について和輝はスフィア・ホーク(すふぃあ・ほーく)に聞く。
「いえ、現在調べられる情報端末からはもう新しい情報を手に入れることは難しそうです」
 粛正の魔女と名乗る存在。そのことについていろいろと調べていた和輝だが、めぼしい情報は集まらず行き詰っていた。
「村の情報設備も大分整って来ましたが、そこからではやはり過去の情報は入手できないようです」
「となると……やはり、あの人に話を聞くしかないか」
 どこまで話してくれるだろうかと思う。あの人――前村長――の考えは分かっているが、だからこそ自分のようなタイプには教えて貰いたいと思う。
「今までに集めた情報をまとめた資料としてプログラムデータを作りました。今後分かったこともこれに追加していきます」
「助かる。だが……」
「はい。和輝とアニス……あとはハーム氏にしか閲覧できないようにしておきます」
 和輝の言いたいことを理解してスフィアはそう補足する。

「ん? アニスって『ミナス』って人に似てるの?」
 『皆』と話しているアニス。その会話の中に気になることを聞き和輝は注意を向ける。
「ふ〜ん……見た目は全然だけど雰囲気とか似てるんだ」
 ミナス。それは和輝が追っている情報の一つだ。
(……どこから情報が入るのかというのは分かるもんじゃないな)
 そうして和輝はアニスの話に耳を傾けるのだった。