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あの時の選択をもう一度

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第二章 犯人をさがして


 カフェの出入り口前。

「……何故この人、達は……寝ているのでしょうか……?」
「あら、本当に。どうして皆寝てるのかしらね」
 菊花 みのり(きくばな・みのり)の言葉にアルマー・ジェフェリア(あるまー・じぇふぇりあ)は周囲の異変に気付き見回した。あちこちで通りに人が倒れており大騒ぎが起きている。
「なんだ……? こいつら、寝てるのか……? おい、お前こんな所で寝てると馬にはねられぞー」
 グレン・フォルカニアス(ぐれん・ふぉるかにあす)は周囲を見回した後、近くに倒れている男性に声をかけてみるがどうにも反応が無いため、諦めてもう一度周囲を見回した。
「なんやなんや、皆お昼寝タイムでもしとるんか?」
 アフィヤ・ヴィンセント(あふぃや・ゔぃんせんと)はどう見ても異常事態というのに軽い調子の冗談を飛ばす。
 疑問符ばかりのみのりの元に双子に会った後の夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)達がやって来た。
「無事ですか? 今この町で大変な事が起きているんです」
 ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)がみのり達の無事を確認した後、衛兵の目撃情報も含んだ事情を話した。
「……急に皆寝てしもうた? そりゃ大変やなー」
 アフィヤの感想を先ほどと変わらず軽いノリだ。
「犯人の目星はついているけど犯人は分からないという事ね。みのりは平気? 何か調子が悪いとかはない?」
 アルマーは隣のみのりの心配を始めた。
「……大丈夫です」
 みのりは静かに答えた。
「そこでじゃ、そなたらは何か見てはおらぬか?」
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)の聞き込みが始まった。
「僕らは普通にここのカフェから外を優雅に見とったよー? いやぁ急に倒れていくもんやから、なんや美味しい匂いで倒れたかと思っとったわー、とまぁ、軽い冗談はこのぐらいにしてほんまに犯人は見とらんよ」
 とアフィヤは軽く答えた。事件が起きた際、みのりとアルマーは会話をしていて外を見ておらず、グレンは席を外していたため目撃していたのはアフィヤだけだった。
「そうか。相手が相手だけにまともな情報が無い事は予想はしていたが」
 甚五郎は頼りにならない情報でもそれほど気にはしていなかった。毎度の事なので。
「……正体不明の魔術師……少し、ワタシも……興味が、あり……ます。情報収集を……すれば……良いのですね……? では。【色んな人】に……聞いてみ、ますね……」
 正体不明の魔術師に少し興味を持ったみのりは情報収集の面で協力する事に決めた。
「お願いします」
 ホリイは改めてみのり達に情報集の手伝いを頼み、自分達の仕事に戻った。

 甚五郎達を見送った後、
「しかし、協力ねぇ……まぁ、みのりに変な事があったらいけねぇし……仕方ない、か……」
 グレンは神妙な感じであった。話で聞いただけでもかなり厄介である事は手に取るように分かる。下手をしたら自分達にも何かが襲う危険性があると。しかし、みのりが協力したいと言われては止める訳にはいかない。
「……たまたま来た町で事件に出くわすとは思わんかったわ。さてはて……」
 アフィヤはおもむろに適当なベンチに座りタロウ・カードを取り出し何やら占いを始めた。
「おお、なるほどなるほど。ホンマ、良い時に来たわ〜」
 占いの結果が出るなり満足そうにニンマリと笑った後、ベンチから立ち上がり、ふらふらと自由人よろしくどこかに行ってしまった。
「アフィヤ。もう、あの子は勝手にどっか行っちゃうし……困ったものだわ」
 アルマーは止める間もなく行ってしまったアフィヤに呆れた。みのりはアフィヤの意思を尊重し放置しているのだ。
「……すみませんが……今回の事件について……何か……知りませんか?」
 アフィヤの事は気にせず、みのりは常人には見えぬ聞こえぬ人からの情報収集を始めていた。
「ところで確認だけど、犯人を見つけたら腕っ節で押さえ込んだらいいのかしら? 殴ったりする訳じゃなくて力づくで止めるという事なんだけど。犯人がいるかもしれないと聞いたでしょ。みのりに何か危害を加えられてはいけないし」
 アルマーは同じようにみのりの護衛役のグレンに犯人に遭遇した際の事を相談し始めた。
「いいんじゃねぇか。手抜きをしてみのりに何かあったらいけねぇし」
 グレンはあっさり答えた。アルマーと正反対な所がありながらも意見が一致する事はある。アルマーはみのりの護衛、グレンは『イナンナの加護』で周囲の警戒に力を入れた。
「……そう……ですか……」
 いつの間にかみのりはあちこちにいる亡き人の聞き込みを終えていた。
「みのり、何か分かった?」
「……はい……見た人は……いません……でした……でも……事件が……起きた時……とても嫌な……魔力を……町全体……から……感じた……そうです」
 案配を訊ねるアルマーにみのりは聞いた事をありのままに伝えた。
「それはつまり話に聞いた以上に危ない奴って事か?」
「……だと……思います……もしここにいるのなら……会う事が出来る……かも……しれません」
 眉を寄せるグレンにみのりが遭遇する可能性を口にした。
「とりあえず、他の人に連絡しておくわね。占い結果に妙に満足していた様子からもしかしたらアフィヤもその魔術師に会おうとしているのかもしれないわ」
 アルマーはすぐに情報収集に励んでいる人達に情報を拡散した。
 その後もみのりは亡き人への聞き込みを続けいくつかの情報を得る事が出来た。
「……幽霊でも人でも……ないもの……形というものが……ありながら……幻のようだと……まるで……自分達と……同じように……生者か命に……惹かれている……ように見えるとか……何かの思いに……惹かれているように……見えるそうです……ただそれらが……確かな事か……どちらの証言が……正しいのか……全て不正解……なのかは……分からない……そうです」
 みのりは不明確な証言をそのまま言葉にした後、ゆっくりとどこかに向かって歩き出した。
「みのり、どこに行くの?」
「おい、みのり」
 みのりを追いかけるアルマーとグレン。
「……この先で……見かけた……そうです」
 そう言ってみのりは導かれた場所に行くも誰もおらず、またそこで聞き込みをしては向かいまた外れては聞き込みの繰り返して進んで行く。見かけたとはいえ状況は刻々と変わっているのでずっと同じ場所にいるはずがないのであちこち歩き回る事になった。

 その頃、
「僕の占いじゃぁ、おもろい展開が待ってるんやけど」
 アフィヤはアルマーの予想通りの動きをしていた。何かの攻撃を受けないようにと『エンデュア』で身を守りながら。あの時の占いの結果は“おもろい展開=犯人登場”であったのだ。