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夏合宿、ざくざく

リアクション

    ★    ★    ★

「例の物は、きっちりと埋めてきたでありますな?」
 大洞剛太郎が、ソフィア・クレメントに聞きました。
「ちゃんと埋めましたわよ」
 やれやれという感じでソフィア・クレメントが答えました。
「じゃあ、手分けして宝を探すであります。その方が、発見の確率が高くなるでありますからな。ただし、幽霊が、ちょっと不安材料ではありますが……」
 言いかけた大洞剛太郎の視線が、急に泳ぎます。その先には、源鉄心たちとともにパトロールに出かける巫女さんたちの姿がありました。大洞剛太郎の視線は、一歩ごとにポヨンポヨンとゆれるテンコ・タレイアの胸に釘づけです。
「じーっ……」
「えっ、あっ、コホン。では、出発するであります」
 ソフィア・クレメントの冷たい視線に、大洞剛太郎が一つ咳払いしてごまかしました。

    ★    ★    ★

 くいっくいっ!
「何をやっているんだ?」
 なんだか右手をくいくいさせているマネキ・ング(まねき・んぐ)を見て、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が訊ねました。
「決まっているだろう、宝を招き寄せているのだ。我の招き寄せる力の前に、宝もきっと我に媚びすり寄って来るのだよ!」
 自信満々で、マネキ・ングが答えます。
「出ましたー。宝は13と44の場所にあるのだ!」
「オウ、すばらしいねえ」
 マネキ・ングの、もはやお告げともとれる予想に、マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)が墓掘りのスコップでリズミカルに地面を叩きながら歓声をあげました。
「不吉な数字としか思えないんだが……。幽霊が出たらどうするんだ」
 思いっきり疑わしそうにセリス・ファーランドが言いました。
「ふふふ……。幽霊だと? ちょうどいい、とっ捕まえて見世物にしてくれるわ! さあ、みんな手を貸すのだ」
「承知した。俺自慢の手で、根こそぎ掘り起こしてやるぜ」
 タバコを持った巨大な右手にしか見えないゆる族の御手洗 ジョウジ(みたらい・じょうじ)が気勢をあげ、マネキ・ングを先頭にマイキー・ウォーリーと一緒に宝探しに出発しました。
「幽霊か……。こちらは、まさに百鬼夜行だな。その一員になったつもりはないんだが……」
 マネキ・ングたちの後についていきながら、セリス・ファーランドが溜め息交じりにつぶやきました。招き猫に、怪しい墓掘りに、巨大な手……。確かに百鬼夜行でした。

    ★    ★    ★

「と言うわけで、お宝を見つけたら、借金生活ともおさらばできます。それに免じてクレカを復活……、いえ、ちょっぴりでいいので、月の限度額をお恵みください。お願いします」
 アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が、ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)にむかって両手をついて懇願していました。
 野戦築城やらイコンやらの修理代がかさんで、アキラ・セイルーンのクレジットカードは停止されたままです。思えば、ネットゲームの課金アイテムを買いまくっていたので自業自得ではあるのですが。
「いいじゃろう。ただし、貴様がわしらの中で一番いいものを見つけたら……考えてやらぬでもない」
 さすがに哀れに思ったのか、ルシェイメア・フローズンが承諾しました。
「本当だな。うおおおお、一番いいお宝はどこだあ!」
 トレジャーセンスを全開にすると、アキラ・セイルーンが走りだしていきました。繰り返しますが、トレジャーセンスで反応するのは、この地域全体です。方向は分かっても、距離は分かりませんので、三角測量すら難しい状態でした。
「こういうギャンブルじみた物は、いい結果になることは少ないのですけれどもねえ」
 堅実なやりくりで貧乏を乗りきってきたセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)は現実的です。とりあえず、宝探しには参加です。けれども、探すのは、お供のミケタマトラポチたちのミャンルー隊に任せてののんびりとした出発でした。

    ★    ★    ★

「よし、みんなお宝は埋めてきたな……。アルテミスはどうした?」
 再集合した部下たちを見回して、ドクター・ハデスが怪訝そうに聞きました。
「さあ、兄さんが変なこと押しつけるから、サボって泳ぎに行ったのではありませんか」
 すでに水着に着替えた高天原咲耶が、きっとそうだという感じでしきりにうなずきました。
「あー、ずるい。デメテールたちも早く行こうよー。もぐもぐ……」
 ドーナツをかじりながら、デメテール・テスモポリスが言いました。
「仕方がないな。だが、遊びに行くのではない、これから海岸を征服するのだ。さあ、ついてこい!」
 バッと白衣の前をはだくと、下はすでに水着に着替えていたドクター・ハデスが、海岸にむかって走りだしました。