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第五章 双子と通り雨・外


 イルミンスールの街。

「……妙な雨でありますな」
 買い物に来ていた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が急な通り雨に慌てて軒下に避難していた。
「あれは、いつもの双子でありますな。何か匂うでありますよ!」
 吹雪は双子を発見するなりこれまでの経験から何かあると考えてイルミンスール魔法学校に連絡を入れた。
 その結果、
「ふむ、雨でも元気でありますな!」
 いつも通りの展開であると知った。
 それと同時に
「あの双子が何も仕出かさない訳が無い。未然に防がねばいけないであります」
 双子がきちんとアイスを買いに行くのを監視する事にした。
「早速、始めるでありますよ」
 吹雪は迅速に行動開始。

 通り。

「雨の中出たからには何か買い物して行くか」
「だな。しかし、面白い雨だよなぁ」
 双子はアイスを後回しにして自分達の買い物を始めた。何せ説教するうるさい人達がいないので。

 近くの店での買い物を終えてから。
「……ここはあんまり面白いものなかったなぁ。次はどこに行く?」
「そうだなぁ」
 楽しそうに店から出て来た双子を迎えたのは、
「♪」
 風船を持った麗茶牧場のピヨぐるみだった。当然、中身は吹雪である。声でばれてはいけないので一切喋らず、愛らしい動きで挨拶をする。
「び、びっくりしたぁ」
「ただの風船配りかよ」
 双子は音もなく現れた吹雪に驚くもただの風船配りと知るやほっとした。
「♪♪」
 吹雪は双子に風船を配り、ぶんぶん手を振って出て行く双子を見送った。
「……次は向こうの店に行くか」
「だな」
 風船片手に双子は仲良く買い物を続けた。
「ククク、楽しむがいいでありますよ。ただし、自分からは逃げられないでありますが」
 吹雪は着ぐるみ装着のまま恐ろしい事を口走った。
 双子が買い物を終えるまで吹雪のストーキングもとい監視は終わらない。
「……行くでありますよ」
 吹雪は着ぐるみを脱ぎ、『行動予測』とこれまでの経験で双子の向かう先を予測し、『疾風迅雷』で素速く先回りをして屋台で物売りを始めた。
 そこで同じ目的を持つ客と出会う事に。

「不思議な雨なのだ」
「ピキュピ(きれい)」
 天禰 薫(あまね・かおる)わたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)は仲良く通り雨を楽しんでいた。
「……まさかあの双子の仕業じゃないよな」
 熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)はこのような現象の原因の心当たりを洩らした。
「……噂をすれば何とやら」
 熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)は店から出て来た双子を真っ先に発見した。
 いつものように双子の所に急ごうとした時、
「……お客さん、本日も双子が元気でありますよ」
 屋台の主人が声をかけてきた。
「……ん」
 孝高は足を止めて主人、吹雪の呼びかけで事態を一瞬にして悟った。
「予想通りでありますよ。双子は元気に悪さをしたであります!」
 吹雪も孝高が何を悟ったのか察し、事情を話した。
「……つまり、この雨に双子は無関係だが、学校で悪さをした罰を口実に羽を伸ばしていると。当然、学校にいる奴らはそれも了承済みなんだろ?」
 孝高は聞いた事情を簡単にまとめた後、巻き込まれた人々の心情まで読み取ってしまう。これまでの経験で培った芸当である。
「そうでありますよ。ちなみに自分はこの通り監視をしているであります」
 吹雪はうなずき、自分の役目を話す。
「それじゃ、俺は声をかけにでも行こうかな」
 孝明は早速、双子と接触しに行った。
「……悪戯した後に懲りずにまた悪戯素材の買い出しか、なら俺もたまには悪戯してやるか」
 孝高は双子の図太さに溜息をつくなり、企みの表情に変貌。
「え、孝高、悪戯するのだ?」
 びっくりの薫。ただし、鈍感なため制止しないので双子にとっては涙もの。
「お前達は様子を見て後で来い」
 孝高は急いで孝明におちょくられている双子の元へ急いだ。
「良かったら、一つどうぞでありますよ!」
 吹雪が残された薫とわたぼちゃんに商品を勧めた。
「ありがとうなのだ」
「ピキュピキュ(ありがとう)」
 薫とわたぼちゃんは吹雪から食べ物を購入し、食べ終わってから双子の元に急いだ。
 吹雪は薫達を見送った後、しっかりと自分の役目を果たしていた。