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調薬探求会との取引

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調薬探求会との取引

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「……薬の実験……まだまだ……」
 吹雪達のお仕置きから脱出した黒亜は魔法薬を相変わらず散布していた。自分を狙う者達がまだいる事もコルセアの知らせで自分の居場所がおおよそばれている事も知らずに。
「そこまでよ!」
 セレンフィリティが黒亜の面前に登場。知らせが入るなり『ゴッドスピード』で駆けつけて来たのだ。
「私達は被害拡大を防ぐために来た者よ。つまり、どういう事か分かるわね?」
 遅らせならばセレアナも登場。
「……」
 黒亜はじっとセレンフィリティ達をひとしきり見つめた後、顔を逸らし実験に戻ろうとする。
 しかし、その時
「もうこれ以上妖怪さんを困らせないで!」
 横から美羽が黒亜の腕を掴み、止めた。
「この薬は回収するわ。これ以上実験を続けるのはやめて直ちに被害を受けた妖怪達を元に戻すのよ」
 セレンフィリティは黒亜の手から魔法薬を回収した。
「出来るよね。こんな酷い事をする魔法薬が作れるなら元に戻す薬だって」
 美羽は黒亜から手を離し、必死の顔をで訴える。
「……元に戻すか……」
 黒亜はぼんやりとつぶやくばかりで動こうとしない。
「まずはこの子達をね」
 道具に戻った付喪神を回収した陽一が現れ、黒亜に実験の被害を見せつけた。
「しゃもじに草履と櫛……もしかして付喪神?」
 『博識』を有するセレンフィリティは陽一の手にある道具が何者かを察し、もしやと訊ねた。
「あぁ。捜索途中で見つけた物だ。てんに判断して貰ったから間違い無い。この子達に魔法薬を使ったのは覚えてるかな?」
 陽一が事情を説明すると同時に懐からてんが姿を現した。
「……妖怪、まだいたのか……」
 黒亜は虚ろな瞳をてんに向けるなりごそごそと魔法薬を探り始めた。実験する気満々である。
「駄目だよ。こんな可愛い妖怪に酷い事しちゃ」
 美羽が間に入り、黒亜の目隠しとなりてんが狙われないようにする。
「本当に出来ないと言うのなら別の方法を考えるけど、出来るのに拒否をするというならどうなるか分かっているわね?」
 セレンフィリティは拒否された際にぶちまける『しびれ粉』をこっそり準備。
「……セレン、なるべく穏便に」
 念のためにと釘を刺すセレアナ。
「分かっているわ。ほら、どうなの?」
 セレアナを一瞥しさらっと流した後、セレンフィリティは厳しい顔で黒亜を問いただす。
「……元に戻す実験も試す価値はある」
 黒亜は妙な魔法薬を取り出すなり道具に振りかけた。
 途端、道具に手足が生え動き出した。
「元に戻った!」
 美羽は元気な付喪神の様子に安堵した。
 その時。、
「黒亜を見付けたって聞いたけど」
「どういう状況だ?」
 黒亜発見の知らせを受けた歌菜と羽純も駆けつけた。
「それは……」
 セレアナが代表してここまでの事情を話した。
「妖怪も元に戻したのも実験の一つか」
 話を聞き終えた羽純はこの場の誰もが感じている事を口にした。
 その間、
「……効果確認終了……次はこの薬を試す場所を……」
 黒亜は魔法薬片手にうろうろし始めた。
「どこかに行くつもりね。さっさと捕まえて……」
 セレンフィリティは元に戻った付喪神から急いで黒亜に注意を向けた。
「まずは逃げ道を塞がないとな」
 羽純は逃亡防止にと『【剣の舞】剣の花嫁用』周囲に剣を突き立てた。
「悪い事しないように眠って貰うよ」
 瞬時に美羽が『ヒプノシス』を使い、動きを止めた。黒亜には全く警戒が無かった。少し前に酷い目に遭ったというのに頭の中は邪魔者への警戒ではなく魔法薬の事ばかり。
「あとは連れ帰るだけだが、途中で目覚めると面倒だな」
「そうね。また何もやらかさないとは限らないしね」
 羽純とセレンフィリティは魔法薬片手に寝息を立てている黒亜を見た。危惧するのは自分達が黒亜の被害者になるかもしれない事。
「その心配はねぇよ」
 現れた唯斗が不可視の封斬糸で捕縛し仕上げとばかりに『氷縛牢獄』で黒亜を氷柱の中に閉じ込めた。
「これで宿まで安全に運ぶ事が出来るはずだ。帰還した後は……」
 唯斗は氷柱に目を細めた。この場にいる皆、唯斗が帰還後何をしようと考えているのか知っているにも関わらず止める者はいなかった。
「このまま帰還してここ大丈夫かな? まだ被害が残っている所があるかも」
 歌菜が心配事を洩らした。いくら対処している人がいるとはいえ夜の上に範囲が広いため解除忘れがあってもおかしくない。
「帰還した時に言えば、何とかするだろう。それより、さっさと連れ帰るか」
 陽一は歌菜の心配事に答えてから漆黒の翼を使って黒亜を宿まで運んだ。
「山中にいる他の人達にも黒亜確保の旨を伝えておくわね」
 セレアナが皆を代表して山中で行動している者達に黒亜確保の知らせを入れた。
 それにより活動する者は皆胸を撫で下ろした。