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リアクション
「アルカディアさんお久しぶりです」
「ああ、生駒さん!」
某守護天使ことアルカディア・ヴェラニディアは、笠置 生駒(かさぎ・いこま)に名を呼ばれると、ぱっと顔を輝かせて足早に彼女の元へやって来た。
アルカディアの容姿は、五年経っても全くと言っていいほど変わっていなかった。ほんの少しだけ大人っぽい顔になったくらいだろうか。守護天使の寿命を考えればさほど不思議ではないが、順調に齢をとった生駒から見ると逆に年齢が下がったようにも見えてしまうから不思議なものだ。
「生駒さんは今日はどうして?」
「ワタシはお茶会のご招待を頂きまして、懐かしい友人と会いたいなと」
「そうなんですか」
アルカディアは無邪気にふんふんと頷いている。素直なところは変わっていないようだ。
「今は天学でイコン関係の開発に関わっているんですが」
生駒は二十五歳になる。天御柱学院に残って整備士として相変わらず仕事にまい進しているようだが――、
「あと趣味でスクラップからイコンを組み立てたりして、よく爆発で給料が……」
――爆発の方も、相変わらずのようである。
「仕事で爆発しないんだからすごいじゃないですか! 失敗は成功の母ですよ!」
そしてアルカディアの褒め方も相変わらずであった。本気で言っているらしく屈託のない笑顔を浮かべている。
「実際ですね、生駒さんはずっと好きな仕事を続けてるんですから、凄いと思いますよ。僕は家業の手伝いずっとしてて、試験とか就職活動とかしてないわけですし。あ、転入試験なら一度やりましたけど。……で、ほんとにすごいと思ってるんですよ。……爆発に巻き込まれるのは痛いからちょっと嫌ですけど」
「はあ、それでアルカディアさんは今は何をしてるんですか?」
「僕ですか?」
一瞬きょとんとしてから、彼は薄い胸を張って軽く叩く。
「僕は族長代理補佐代理・兼・ヴァイシャリー臨時派遣員としてこの五年頑張ってきました!
その関係で時々お茶にご招待されまして……こうして顔を出して顔つなぎです。あ、最初は女の子に会えるからって喜んでましたが、もう諦めました……」
彼は今度は一転して肩を落とす。モテないのも相変わらずのようだが、今度は本気で落ち込んでいるようには見えかった。
多分、慣れたのだろう。それがいいのかは別として。
そうしてアルカディアは気を取り直して顔を上げると、
「そ、それでですね、今はパラミタ内海の水位の調査とか植物の調査とか、ドリュス族の持続的な生活のための環境保護活動的なことをしていますよ!」
「そうなんですか、良かったですね。あ、そうだ暇が有ったら海京に遊びに来ませんか案内しますよ」
生駒はさらっと言う。相変わらずの二人のやり取り。
一応互いに年頃の男女なのだが、そんな色っぽい雰囲気はなく同性の友人のようだった。
守護天使は少し腕組みして考え込んでいるポーズを取っていたが、すぐに顔を上げて、
「海京ですか……海の上の都市なんですよね。地球って行ったことないですし、視察兼休暇ってことで、行ってみます! 生駒さんが案内してくれるなら道に迷わなくて助かりますよ!」
そしてまた胸を張り、
「それじゃあ代わりにここを案内しましょう! 道には迷わないですが、何度も通ったのでお勧めのお菓子を教える事ならできますよ」
いつ海京に行こうか、どこが楽しそうかなんて計画を立てて。
ヴァイシャリーはどうか、最近の樹上都市の動向は?
そんなことを話しながら、二人はお茶会を楽しむ。
まるで、五年前と同じように。
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