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リアクション
エピローグ
百合園の会議室にて。
「君のパートナーが事件に関わっているという噂があるが、どうなんだ?」
「救護艇派遣より前に、ダークレッドホールに突入した百合園生が多いようだが、イリアーノ副団長の指示と考えていいんだね?」
白百合団副団長、ティリア・イリアーノのパートナーモニカ・フレッディが瑠奈のパートナーのサーラ・マルデーラの側で、怪しい行動をしていたという噂が、広まっていた。
「モニカの居場所については、未だ判明していません。百合園生の突入については……」
「私が指示を出しました」
窮地に追い込まれているティリアの代わりに、そう発言をしたのは、もう一人の副団長のロザリンドだった。
「救護艇の派遣を除くこれまでの団員達の行動につきましては、私の指示によるものです。私の判断ミスで、皆を危険な目に遭わせてしまったため、以降の指揮をイリアーノ副団長にお任せしていました」
訝しげな顔をするティリアに目配せをして、ロザリンドは話しを続ける。
「しかし、イリアーノ副団長のパートナーもまた行方不明になり、今後もしものことがあった場合、イリアーノ副団長が指揮を続けることは困難となります。
そのため、白百合団の次の作戦の立案と指揮については、再び私が担当させていただきます」
ロザリンドが凛とした声で言うと、ティリアに疑問を投げかけていた者達の声が止まった。
「白百合団では、近日もう一度ダークレッドホールへの救護班の派遣を行います。
次の救護班である第二班の班長をご紹介いたします」
ロザリンドがそう言った後、会議室のドアが開き、長身の女生徒が姿を現した。
「救護二班の班長に任命されました、システィ・タルベルトです」
ロザリンドの隣に立つと、その人物――システィ……女装したシスト・ヴァイシャリーは皆に頭を下げた。
「あなたは契約者ではありませんよね、タルベルト家のお嬢さん」
会議に出席していたミケーレ・ヴァイシャリーが問いかけてきた。
「はい、私は契約者ではありませんが、救護や護身に関する能力を身につけているため、自ら志願して白百合団に入れていただきました。これまでは百合園内で団活動の手伝いをする程度の活動しかしていませんでしたが、今回の件については、私が適任であるとセリナ副団長に申し出まして、未熟ではありますが班長に任命していただきました」
「ダークレッドホールの先の世界の環境は苛酷だと聞いている。契約者でもなく、人間の貴族でしかない彼女には荷が重すぎると思いますが」
ミケーレはロザリンドに問いかけるが、ロザリンドではなくシスティが会議室にいる皆に向かって、ハスキーな声で語りだす。
「私の亡き母は、遠縁ではありますが、ヴァイシャリー家と血縁関係にあり、私も古王国の王家の血を引いています。
また、護身術としてテレポートが使えます。
未熟なため、テレポートは自分一人移動させるので精一杯ではありますが、ヴァイシャリー家には、魔力を増幅する効果のある女王器の杖があったと記憶しています。こちらの杖は強力な力を秘めていますが、古王国の王家の血を引く者にしか使えなかったはず。そちらを貸していただければ、重傷者と共に戻ってくることも出来るかと思います」
「すまないが、その杖は現在使用できない状態にある。それにテレポートは体にかなりの負担がかかる魔法だ。大して訓練をしていな者が、大幅に魔力を増幅させて使用したのなら、命に関わるだろう」
そう言ったミケーレをちらりと見た後、システィは皆に向かって言葉を続けていく。
「その杖ではなくても、魔力を多少増幅させる装置の手配は、ヴァイシャリー家やお集まりいただいている有力者の皆様なら、出来るはずです。それがあれば、重傷者1人と、収集したデータくらは運ぶことが可能でしょう。
更に、貴族である自分がいけば、皆様達だけではなく、関心を持っていないシャンバラの貴族たち、権力者の皆さんにも白百合団の活動をもっと見ていただけるのではないかと考えています。私が帰れないなどという事態に陥った時には、百合園の学生たちだけではなく、ヴァイシャリー家の方々も勿論、全力で助けてくださるでしょうから」
システィは軽くミケーレに挑戦的な目を向け。
ミケーレは一瞬、システィを睨んだ。
「テレポートに必要な物質や、資金についても学生の白百合団には得ることが出来ません。私の家、ヴァイシャリー家の忠臣であるタルベルト家の両親は、白百合団の救出活動に全面的に協力すると言ってくれました。
皆様もどうか、ご支援ご協力をお願いいたします!」
システィがそう言って、頭を下げると……会場から拍手が上がった。
「ツァンダ家では、現在陰陽師の手配をしている。現在は、シャンバラから向うの世界を見て情報を得ているが、逆も出来るのではないかと考えている。
つまり、陰陽師をダークレッドホールに派遣し、式神のみテレポートでシャンバラに帰還させる方法だ」
レグルス・ツァンダがそう言い。
「救護艦だが、小型飛空艦をこちらで用意させてもらおう。ヴァイシャリーや百合園にばかり負担させるわけにはいかないからね」
薔薇の学舎からはそんな申し出があった。
更に、ザンスカール家の使者からは、テレポートを使える魔術師達に打診をしているところだという話があった。
その他にも、医療具や食料の支援の声が次々に上がり……。
「ヴァイシャリー家も全面的に支援させてもらうよ」
最後にミケーレが微笑んでそう言った。
が、シストに向けられた目は笑ってはいなかった。
二人は目で、会話をする。
(やってくれたな……己の立場を考えろ。ここまでお前が愚かだったとは)
(ミケーレだって、相当無茶してきただろ。叔母さんだって、イコンに乗って前線に出たこともある。俺にも今やらなきゃならないことがある)
どちらにしてもシスティ・タルベルトという存在は、来年3月には消えてなくなるはずだった。
シストは、また別の名で男性として、ミケーレが所属している大学への進学が決まっている。
そして彼自身、シスト・ヴァイシャリーという隠された人間が、世に現れることなく消えてなくなったとしても、世界は何も変わりはしないと理解していた。
「……これまでのこと、そしてこの作戦の全責任は、私ロザリンド・セリナにあります。全てが終わりましたら、如何なる処分も刑罰もお受けいたします」
ロザリンドがそう言うと、再び会場は拍手に包まれた。
――白百合革命第3回 完――
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