リアクション
○ ○ ○ 「美少女型発見!」 エアバイクを運転していた牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、少女の姿をした敵を発見するとエアバイクで近づいて、殴り飛ばした。 「さよちゃん、ちょっと休憩。こっちこっち」 他の巡回しているロボットや生物に見つからないよう、少女を引き摺って岩陰へと入る。 「水分補給しよ。お菓子も少しならあるよ」 アルコリアが言うと、冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は弱い笑みを浮かべた。 「……ああ、そうか。そういう手があったわね」 小夜子は吸血鬼と契約をしており、吸血の能力を持っていた。 彼女の渇きは限界に達しており、選択の余地はなかった。 少女の首筋に噛みついて、身体が満足するまで血を啜った。 「吸血鬼が血を飲むのは恥じることじゃないよ、私は人だけど飲みますが」 アルコリアは吸血鬼ではないが、彼女の血を舐めて乾きを癒しておく。 それから、お腹が空いたのでお菓子を取り出して食べておく。 「さよちゃんもたべるー? それともそれ焼肉にする?」 「え? それは遠慮するわ……。お菓子はいただいてもいいかしら?」 「どうぞ」 小夜子はアルコリアからお菓子を分けてもらって、口の中に入れた。 血の味が残っていて、お菓子の味はわからなった。 「ありがとう」 「ん?」 小夜子の言葉に、アルコリアは不思議そうな顔をする。 「私だけでは完全に詰んでたでしょうから。 ……非常時とはいえ、美緒にはこんな姿は見せたくないですね……」 ボロボロな自分の身体を見下ろしながら、小夜子は苦笑いをした。 「ううん、さよちゃんのその姿ぞくぞくするほど素敵だと思うけどなー。むしろ恋人に見せたくなる」 うふふふっとアルコリアは笑って立ち上がる。 「さてと、大体の場所はわかったし、エアバイクはもう捨てるよ?」 「うん。捨てた方がいいでしょうね。この先に何らかの施設があるのでしょうから」 小夜子は魔鎧のエンデ・フォルモント(えんで・ふぉるもんと)の迷彩塗装の能力で準備を整えていく。 「いいわね、絶望的で、なんだかわくわくしてきちゃう」 アルコリアと小夜子は注意深く周りを確認し、岩陰から岩陰へ移動して、体力を温存しながら進んでいった。 数キロ歩いた先に存在したのは、大きな門だった。 門の裏側には何もなく、周囲に建物も存在しない。 「この先にも、建物らしきものは見えませんね……」 小夜子は不自然に存在する門を調べて、通過してみるが何も起きはしなかった。 「……あら?」 門の側に石が置かれており、挟まれた白い紙が覗いていた。 「これは……百合園の生徒手帳?」 紙には百合園の紋章の透かしが入っている。 「んん?」 小夜子が抜き取った紙を、アルコリアも覗き込んだ。 その紙には、簡単な地図が書かれていた。 更に走り書きで、以下が記されていた。 『この空間の地図。面積は100平方キロメートルくらい。 パラミタの4分がここでは1秒。 あたしは、攫われて人体実験をされた。 生き残った地球人達は、生体エネルギーとしてシャンバラに還るまでここから出ることはできないと言われた。 ヴァルキリーの女に風見団長を連れてくるよう命じられた。 女は、団長を連れて来たら、自分とヴァーナーを開放すると言っていた。 白百合団所属、マリカ・ヘーシンク記』 「もう一枚あるよ」 アルコリアがもう一枚の紙に気付いて引っ張り出した。 『地図の×の場所で、団長とゼスタ先生と合流した。 先生はヴァルキリーの女の攻撃で負傷していた。 団長を渡せないと言い、団長の血を沢山吸い、団長は倒れた。 先生はあたしと共に、ここまで来た。 エアバイクに括り付けられていた「リン」という少女と共に、先生は門の先の恐らくあの女がいる場所に向かった。 あたしは団長の元に行く』 「マリカさん、ありがとうございます」 小夜子は思わずメモに礼を言った。 このメモを残すことも命がけだっただろう。 「この門の先に、リンちゃん達いるのねー。4分が1秒ってことは、こうしている間にも、パラミタでは何日も時間が過ぎてるわけだ」 数時間ここで張り込んでいたら、巡回から戻り、帰還するロボットと遭遇出来るかもしれない、が。 それを待ち、試す時間はなさそうだった。体力的にも。 「さよちゃん、アレお願いしていい? 何が起こるか確実じゃないけど、助けるように努力はする」 「……ん、分かった。後の事はお任せしますわ」 他に手段はないし、アルコリアの事を信じてるから。 小夜子はアルコリアが門の影に隠れたことを確認すると「わー」と大声を上げた。 少しして、小夜子の声に気付いたロボットが近づいてきた。 リン・リーファ(りん・りーふぁ)と同じように、小夜子はばったり倒れてみせた。 ロボットは小夜子に、光の弾を打ち込んだ。 「ピピ、ホカクカンリョウ。ホカクカンリョウ。ピーピー」 ロボットは信号のようなものを、門に向かって発していた。 少しして、男性の姿をした仲間が訪れ、小夜子を抱えた。 その後に、門が光を放った。 小夜子を抱えた男性が、門をくぐる。瞬間、アルコリアもダイビングするかのように、光の中へ飛び込んだ。 |
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