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リアクション
★エピローグ★
「ドキュメンタリーの放送、ですか?」
「あ、もちろん通信局ができてからで結構ですけれど」
「いいんじゃない? 娯楽がまだまだ少ないし……広く募集してもいいかもしれないわね。流して欲しいもの。今ならせめて音楽とか、ラジオみたいになっちゃうけど」
「なるほど。では番組構成を考えましょうか」
真剣に話し合っているのは優希とロザリンド、リカインの3人だ。通信局の完成はまだだが、一番最初の放送をどうするか、優希とリカインが考えていたところ、ロザリンドが作成したドキュメンタリーをぜひ流してもらいたい、とやって来たのだ。
まだまだ設備が整っていない今、できることはすくない。しかしそれでも、彼女たちは今できることを必死に考えて行動していた。
そして彼女たちの目がアンテナ塔へと向けられる。通信局は、塔の内部に作られる予定なのだ。
アンテナ塔では、本体の建設はもちろん、外壁の準備も行われ始めていた。
「鉄筋……断熱材……ボルト、ネジ……うむ。すべて揃っているな。御苦労。休憩に行ってもかまわなんぞ」
「樹ちゃんもお疲れ様。僕たちも少し休憩入れよう」
「そうだな」
章にそう言われて樹はようやく、朝から休憩なしだったことに気がつき、空腹を感じた。
「おお、そういえば美味い店ができたらしいな。あー、その。どうだ。良かったら今から」
「そうだね。行こうか。ちょうどお昼時だし」
どこか歯切れの悪い樹に、章は笑って頷いた。
◆
ずら〜っと続いた行列。
ようやく一番前へとたどり着いたアキュートは、肩を回した。かなり待たされてしまった。
「大甲殻鳥の焼き鳥とスープ、それからビール」
「おっお主よくわかっとるの。やはりビールが一番、大甲殻鳥の焼き鳥に合うからの。ちと待っておれ。オーダー入ったぞ。焼き鳥とスープにビールじゃ」
「はーい」
衛がにっと笑った後、厨房の奥へと声をかけた。
そして運んできたのは
「えと、焼き鳥とスープにビールのお、お客様ですね。お待たせしました」
なぜかメイド服を着せられた陽だった。彼の名誉のためにいっておくが、望んでその恰好をしているわけではない。断じて。ユウが「メイドだー」と叫んで強要されたのだ。
『メイドなにそれ。頭おかしい。絶対おかしい。いや女装しねえって! しねえよ! やめろ! やめろーーー!』
そんな叫び声がしたのは、開店当日だったりする。もう今じゃ開きなお……れたらいっそのこと楽なのだろうが。
「おっうめぇ」
「じゃろじゃろ。あとわしのオススメは『カニちゅうの刺身』じゃ。……そう嫌そうな顔するでない。だまされたと思って食べてみろ? もちろん、ただでは出さんがな。カッカッカッ!」
「あ、でもほんとにおいしいから、オススメですよ」
「おーい、こっちスープおかわりと涅槃イルカ焼き2、追加で」
「はいはーい、あら、良い食べっぷりね。私、そういう人好きよ。……あ、それで注文はスープおかわりと涅槃イルカ焼き2、でよかったっけ」
リナリエッタは「好きよ」のタイミングで注文した男へと流し目を送った後、少し間をおいてから注文を確認した。
「い、いや! 涅槃イルカ焼5に、焼き鳥3人前だ」
「おれは刺身も行くぞ!」
「じゃあ俺は――」
醜い男の争いが沸き起こる中、リナリエッタはペロッと舌を出していた。もちろん、男たちには見えない位置で。
「すまんが、オススメはどれだろうか」
「一押しはやっぱり焼き鳥ですけど刺身も――」
この基地が、人の住む町として機能するのも、そう遠い未来ではないかもしれない。
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