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【創世の絆】光へ続く点と線

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【創世の絆】光へ続く点と線

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思索

 残された少ない時間を利用して、三々五々に散っていった契約者たち。その一人騎沙良 詩穂(きさら・しほ)も今回の遺跡破壊には強い疑念を抱いていた。
(なぜインテグラルたちは既に調査済みの遺跡の破壊ばかりを狙うのでしょうか?
 何か見つかったらマズイものであれば発見されていない遺跡を先に破壊すればいいだけですよね)
ニルヴァーナ知識、記憶術を使い、今までの発見物をさらってみる。パートナーのセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)はローグスキル、野性の勘で警戒を怠らない。
「うーん。発掘されたものの大部分は既に何らかの形で使用されている……。
 しかもそれはクイーン、ニビル……いずれの配下でもインテグラル側には不利になる効果を発揮していましたものね。
 HCのマッピング機能で見たら各通路の隔壁が降りた後と前の遺跡の構造の違いに何か不自然な場所がないかしら」
セルフィーナは首をかしげた。
「やはりヒトガタが会った部屋の周辺が怪しいですよね」
詩穂はヒトガタまでの道からもっと奥に行けるルートができていないか、隔壁によってできた、壁に囲まれた空間がないかのチェックを始めた。隔壁がただ単に警備ロボと同様に警備だけの役割を担っているだけではなく、新しい道ではないかと彼女は考えていたのだ。清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)が声をかける。
「騎沙良、セルフィーナ、アヴァターラの武具にしたほうがええぞ。
 今は警備用の機晶ロボしか見ておらんが……。
 もしかしたら遺跡破壊のために乗り込んできたインテグラルの連中と戦うかもしれないからのう。
 万一のためにも連中に有効な武具を用意して損はないはずじゃ」
「そうね……」
「マスターニンジャはローグの最上級クラスじゃけんのう、わしが見落とすお宝はないけん、任せとき。
 ローグのトレジャーセンスに加えて野生の勘。これでお宝の方に自然と足が向うんじゃ」

 やはり最奥部に近いエリアでザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)強盗 ヘル(ごうとう・へる)と共にヒトガタが発見された場に近い箇所を集中して捜索していた。ザカコの調査の動機は無力化されたはずのインテグラルの脅威を押さえ込めれば、というものだった。
(恐らくはあのヒトガタやインテグラルに関する物を残しているはず……。
 それならばあれが何の為に作られたか等の情報があるかもしれません。
 情報があれば研究も早く進み、まだ動いているインテグラルの脅威に早い段階で対抗できる)
彼は相棒を振り返った。ヘルはあらかじめ護衛と探索の手助けを頼むべく雇っていた、ドッグスオブウォーの傭兵団を駆使して周辺を片端から捜索させていた。
「あと僅かな時間で破壊される未知の遺跡……何が残されているのか、興味は尽きませんね。
 とは言え残された時間はあまりありませんし、調べるポイントは絞った方が良さそうです」
「お宝があるなら黙っちゃいられねえ、何としても見つけてゲットしてやろうぜ!」
「このピラミッドで一番価値のあるものは既に見付けられたクイーンのヒトガタかもしれませんが
 これだけの規模の遺跡ならば他にも何か残っているかもしれませんしね。
 かなりの確率で隠し部屋のようなものがある筈です。
 未知の遺跡の奥にはロマンがありますが……それは今回は置いておきましょう」
「ああ、わかってるって。金品よりインテグラル関連が優先だろ?」
二人はマッピングとヘルのトレジャーセンスを頼りにヒトガタが見つかった周辺の、探索されていない部屋等を中心に探索を開始する。普通の探索であれば遺跡を破壊はしないが、今回は状況が状況なので、ショートカットが必要と思った場合は必要に応じて壁を破壊して進む。
「あまり手荒な事はしたくないのですが……時間がありません。遺跡を傷つける事を許して下さい」
ザカコはカベを破壊しながら呟いた。

 元天御柱の生徒。技術者ででパイロットであった天貴 彩羽(あまむち・あやは)はは、軍以外の学生を戦争に使う輩に反感を持ち敵対したため、現在パラ実に放校中の身である、光条世界への鍵を求め調査隊に参加していたものの、彼女は当初から独自行動をとっていた。携行していた通信機がアラームを発する。
「……騒がしいと思ったら遺跡への襲撃が始まったのね。加えて遺跡の防衛システムが外部の人間を排斥している、か。
 時間もないし、狙いどころを絞って調べてみましょう。
 妨害電波が強い方角や、機晶ロボが多く警備しているところが怪しいと思うのよ」
「お手伝い〜、お手伝い〜」
自称、邪神ヨグ=ソトースこと夜愚 素十素(よぐ・そとうす)は、いつものように眠そうな様子で、それでもテクノクラートのスキルを目いっぱい働かせていた。フラー・ラガッハ(ふらー・らがっは)は剣の花嫁として光条兵器にかかわる物に何か感じるものがないかと、神経を集中していた。
「漠然とした何かは感じるんですけど……具体的にどこからという感じではないんです……。
 まだまだ力が足りないわね。もっともっと鍛えなければいけないのですわ」
時折行き会う機晶ロボット、こちらはただ巡回しているようだったが――に行き会うと、ベルフラマント、ナノマシン拡散などでやり過ごす。闘わずやり過ごせるならそのほうが時間の節約になると考えたからだ。
「ん〜、こんなとこあったかなぁ〜?」
素十素が眠そうに照合していたマップデータとの食い違いを見せる壁を指差す。そのすぐ横の壁が突然崩れ、3人はあわてて飛び退った。
「あ、これは失礼。人がいるとは思わなかったもので」
ザカコが丁寧にわびる。
「大丈夫。怪我はしてないし〜」
素十素が眠そうに応じる。そこに詩穂らも到着した。
「やはりこのへんじゃろう……と……」
青白磁が言葉を切った。
全員が怪しいと睨んだ壁が突如開き、機晶ロボが10体あまり現れた。
ザカコとヘルが身構え、ドッグスオブウォーも戦闘態勢をとり、迎撃体制に入る。カベの傍にいた素十素が飛び退った。
「ん〜〜〜、機械じゃヒプノシスはきかないか〜」
「下がって!」
彩羽が叫び、G.Gの重力弾で素十素の至近距離の一体を押し潰す。フラーがブライトクロスボウを続けて放ち、3体を打ち抜く。セルフィーナがグラビティコントロール、モンキーアヴァターラ・レガースでカベを駆け上がり、機晶技術と急所狙いを組み合わせ、ロボットの放つビームを避けながら一撃必殺で倒す。ロボットが片付くと、今開いた扉の奥を覗き込んだ。
「お宝の匂いはあっちの方からきているぜ」
ヘルが言って先頭に立って部屋に入った。フラーが続いて部屋に入り、目を閉じた。
「何かの気配を感じます」
年月を経て痛みがひどく、はるか昔に荒らされた様子のある部屋ではあるが、内装や部屋の広さ、家具の様子からもとはこの研究所の所長室か何かだったのだろう。扉が壊れて外れ落ちたからっぽのキャビネットやテーブル、ソファのようなものもある。
「インテグラルの研究をしていたなら、暴走した時の為の緊急停止させるボタンとかが都合良くあれば一番なんだがな」
ヘルがぼやく。8人は手分けして部屋の中を探った。残されていた大半のデータは飛んでしまっているものの、この部屋の持ち主が使っていたと思しきコンピューターに似た機械があった。素十素がインプロコンピュータで解析した結果を、ニルヴァーナ知識を持つセルフィーナが機晶ゴーグルとHC:ニルヴァーナタイプを使い、内容を解析した。
 ひどく飛び飛びの情報を継ぎ合わせると、シャクティ――インテグラル――の製造については、ニルヴァーナ議会によってほぼすべてが決められていたらしいこと、そしてニルヴァーナ政府の上層部の一部は“光条世界”についての知識があったらしいということがわかった。
「詳細はわからないけど、ひとつの資料ではあると思う」
詩穂が言った。
「ともあれ、この資料を持って早いところ脱出したほうがいですね」
ザカコの言葉に、彩羽が頷く。
「入り口まで戻ればマスティマがあるわ。
 ステルス機だから敵に襲われないで遺跡から本拠地に帰れると思う」
「わかった、急ごう」