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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・前編

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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・前編

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4 世界樹イルミンスールとイルミンスールの森

 サルヴィン川を渡り、ようやくエリュシオンへの旅路を半分ほどやってきたダークサイズ。
 羊や盗賊との戦いで、怪我や疲労もあり、そろそろ補給も必要だ。
 ちょうどよい中継地点として、イルミンスールの森は一気に通過せずに、世界樹イルミンスール内に宿を求め、逗留しようということになった。
 一行にはイルミンスール生も多いため、どうにか体を休めることもできそうだ。

(ふっふっふ……いらっしゃいませ、イルミンスールへ……俺の作戦を、いよいよ実行する時ですね)

 イルミンスールへ近づいてくるのを双眼鏡で確認し、ダークサイズを待ちうけながらニヤリとする、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)
 ダークサイズが到着すると、クロセルを先頭に何故かイルミンスール魔法学校の教師と生徒の数人が、ニコニコ拍手しながらダークサイズを迎える。

「?」

 イルミンスール魔法学校に歓迎される覚えなど全くないダークサイズ。
 クロセルは年配の女性教師を連れてダイソウに歩み寄り、握手をさせる。
 その女性教師は、温和な笑顔でダイソウに語りかける。

「あなたが責任者の方ですか」
「? うむ、そうだが……」
「紹介しましょう先生。『シャイゆえに悪ぶってるけど善行と募金活動の慈善法人ダークサイズ』の大総統、ダイソウトウさんです」

 クロセルは聞いたこともない法人名を出して、教師をダイソウに紹介する。
 女性教師は、

「イルミンスール魔法学校で、社会活動クラブの顧問をしております、ナサケハヒート・ノ・タメナラーズと申します。社会奉仕活動の旅の途中ですのに、お立ち寄りくださいまして、ありがとうございます」

 とダイソウに名乗って、タメナラーズ先生は深々と頭を下げる。
 ダイソウは手を出してタメナラーズ先生を制し、

「待て。何かの間違いであろう。我々は、謎の闇の悪の秘密の結社ダークサイズ」
「おっほほほほほ」
「?」
「クロセル君、あなたの言うとおりね。謎のとか闇のとかつけて、慈善団体であることをあえて隠して活動なさってるって。ダイソウトウさんは本名? だから責任者の役職も大総統なのね。シャレが効いてて素敵だわ」

 クロセルは一体何を吹き込んだのだろう。タメナラーズ先生はでたらめをすっかり信じている。

「わー、ペンギンがいっぱい! かわいい〜」

 社会活動クラブの部員達は、円と緋雨のペンギンに駆け寄る。ペンギン達もまんざらでもなく可愛がられる。
 タメナラーズ先生も、ペンギンを愛でに行く。
 その隙にダイソウはクロセルに、

「お前は一体何が狙いなのだ」

 と、本当にクロセルの狙いが分からずに聞く。

「くっくくくく。悪の秘密結社など、これ以上のさばらせません。ダークサイズにこれ以上大きくなられてもアレですからね。『パブリックイメージに縛られて悪いことができなくなるアタック』! あなた方は、ここイルミンスールではシャイな慈善団体。ここを出発するころには、ダークサイズは牙をもがれた獣! 毒にも薬にもならないNPO法人になり下がるのです!」
「何と遠回りな……」
「押してダメなら引いてみろというやつです」
「引くにも限度があるだろうに」

 クロセルは自信を持ってダークサイズ壊滅を予言する。
 ところが、

「助かったー!」

 と、カレンや明日香など、イルミンスール生たちが大喜びする。
 カレンはクロセルに握手をし、

「助かったよ! 校長や大ババ様に、ダークサイズやってることがばれたらどうしようって思ってたから」
「えっ……ふ、ふふふ。よいのです。俺の作戦のうちです」
「よーし、これで堂々と撮影できるぞー!」

 と、ジュレールを連れて走り出す。
 クロセルの作戦によって、かえって堂々とイルミンスールを歩き回る権利を手に入れた感のあるダークサイズ。

(作戦成功……成功、ですよねえ?)

 と、クロセルは自分に言い聞かせながら、ダイソウの後ろを突いていく。


☆★☆★☆


 カリペロニアを出発して以来、ようやく到着したまともな街と言えるイルミンスール。
 ダイソウは、何と言っても服が欲しい。
 彼は補給のためにも、自由行動として解散し、仕立て屋を探して去っていく。

「イルミンスールなら最高の立地だ。あそこの広場で始めよう!」

 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)の号令で、有志で企画した移動アトラクションの準備が始まる。
 浮遊要塞の購入資金と旅費を稼ぐためにトマスが発案したものだが、シャンバラ大荒野からサルヴィン川にいたる数々の困難の中で、なかなか開催できずにいた。

「おお、やるんかい! やろやろ! 機材積んだ馬車はどこや? テント小屋建てるで!」

 トマスの声を聞いて、生き生きと準備を始める大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)

「ふふふ。なかなか本番ができなくて、稽古ばっかりだったからね。私も腕がなるよ」

 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)も胸を張っている。
 トマスを筆頭に、この三人が中心となって、イルミンスールにダークサイズの見世物小屋が建てられる。

「どじゃあああ〜ん! 今回も天才的な発明を持ってきてしまったぜぇ。名付けて『超人力車』〜」

 ヴァンビーノ・スミス(ばんびーの・すみす)は、今日も自慢げに、誰とはなしに発明品を披露する。

「ダイソウトウはあの山羊から降りたがらないし、キャノン姉妹も飽きっぽいからあんまり乗ってくんなかったけど〜。こいつの真骨頂はそんな所じゃないんだよねぇ。トランスフォームっ」

 ヴァンビーノが人力車のボタンを押すと、

がしゃん! がしゃん!

 と、人力車が変形し、どこに内蔵されていたのか、大きな素舞台と形を変える。
 彼らの出しものはかなりバラエティに富んでいるので、結構場所を取ってしまい、思いのほか大々的なイベントとなっていった。

『旅劇団☆ダークサイ座』

 三人がダイソウに頼んで付けてもらった、彼らの劇団名。
 大きく作った看板を見て、彼らは満足そうだ。

「何でも『座』ってつくと、ちょっとかっこいいよね」
「あの『劇団☆』のあたり、日本でも見たことあるなぁ」
「ダイソウトウ、また思いつきでどっかからパクってきたのかな……」
「まあ素晴らしい! ダークサイズさんは、このような文化事業も行っているのですねぇ!」

 タメナラーズ先生が感嘆の声を上げる。
 それを見たクロセルは、

(あるぇ〜? ホントに慈善団体みたいなことしてる……)

 と、ダークサイズを倒すために考えた作戦が、違う方向に作用していることに、変な汗をかく。
 集客にはタメナラーズ先生はじめ、社会活動クラブの協力で上々の客入り。
 しかしながら、慈善法人のレッテルを張られたダークサイ座は、チケット料金の設定で『経費と旅費程度に』と、かなり低料金にせざるを得なかったのだけが玉にキズ。

「さあ! 『旅劇団☆ダークサイ座』旗揚げ公演の始まりや! 拍手とおひねりは大歓迎やで!」

 マイクを握って総合司会を買って出た泰輔。それとなく収益を増やす一言を入れておく。
 『はじめてのおつかい』DVDにも収録したいので、泰輔は自分でカメラを回しつつ、カレンらにも撮影を依頼している。
 最初に紹介するのは、やはり賑やかな曲芸がいいだろう。観客の心を掴むため、サーカスチームが活躍する。

ぴしぃっ!!

 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が女王様ルックで鞭をはじく。
 もともと凛とした姿勢の良い彼女には、それがやたらとよく似合う。

「この野獣が、今日は危険なアクロバットを披露するわ。さあ、刮目なさい!」

 『この野獣』呼ばわりされて紹介を受けるのは、クマに全身獣化したテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)だ。

(反対じゃねえぜ? こういう企画はよ……でも何で俺がこの役回りなんだよ!)

 早速玉乗りを披露しながら、テノーリオはすでに涙目。
 ミカエラの鞭の音を合図に、テノーリオは一輪車に乗り換える。
 ここで段取り通り、テノーリオは失敗しておどけて見せる。

ぴしいっ!!

「いてっ! ちょ、何で叩くんだよ!」
「何故って? 失敗したからじゃない」
「台本通りだろ。ここでコケて子供に笑ってもらわなきゃ……」
「ええ。でも台本通り、鞭は飛ぶわよ?」
「せ、せめて叩くフリにしてくれよ」
「問答無用」
「えー!」

 次の鞭で、テノーリオは火の輪くぐりを披露する。テノーリオは冷汗をかきながらくぐって見せるが、これに歓声が上がる。

「さあー! ここでお客さんタイムや。誰か鞭を振るって、くまさんに火の輪くぐりさせてみたい子はおるかなー?」

 泰輔が観客参加のサービスを案内する。

「はいですっ!!」

 と、観客席で観覧していた俺様の秘密ノート タンポポ(おれさまのひみつのーと・たんぽぽ)が速攻で手を挙げる。

「お! じゃあそこの元気なお嬢ちゃん」
「え、ちょ、タンポポちゃん、何で手ぇ挙げてんの。見るだけって言ったじゃん……」

 隣でタンポポを止めるゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)。彼はダークサイズではろくな目に合わないと思っており、できるだけ関わりたくない。エリュシオンへの旅にも参加せず、イルミンスールで普通に過ごしていた。
しかし、ダークサイズがイルミンスールに立ち寄ったのが運の尽き。
タンポポがどうしてもダークサイ座を見たいと言い出して、「見るだけなら」と、ゲドーはしぶしぶついてきた。
 ステージに上がってミカエラから鞭を受け取るタンポポ。
 しかし彼女は、ただテノーリオにやらせても面白くないと思う。

「おいゲドー。お前が火の輪をくぐりやがれなのです」
「はあ!? 何でだよ!」
「このくまさんなら、できるに決まってるです。それでは面白くないです」
「無理無理無理無理」
「あれー? ゲドーさん、まさか火が怖くってできないとかー?」

 ゲドーいじめには速攻で乗ってくるのがジェンド・レイノート(じぇんど・れいのーと)の真骨頂。泰輔のマイクに向かってゲドーを名指しし、会場の注目彼に集めさせる。
 いくらなんでも冗談じゃないと、ゲドーはいつもの手に出る。

「うっ、急にお腹が」
「すいたなんて通用しないです。さっきご飯を貪ってやがったです」
「ええー! た、タンポポちゃんー!」
「さあみなさん、ゲドーさんが面白いものを見せてくれますよ〜」

 ジェンドがさらに観客をあおる。出演者の仕込みだろうと思った観客席から、拍手が沸く。
 ステージに上がらざるを得ないゲドー。

ぴしいっ!

「みゅ。ほらゲドー、ビビってないでさっさとやりやがれです」
「ひいー!」

 意を決して理不尽にも火の輪に突っ込むゲドー。

「おおおー!!」

 客席からは大歓声。

「はあっ! はあっ!」

 何とか成功して息を切らすゲドーに、泰輔は駆け寄る。

「君やるなあ! どや、劇団に入らへんか?」
「冗談じゃねえよっ!」

 動物曲芸の後は、フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が軽快なピアノ演奏を披露する。
 さすがフランツ。英霊となったとはいえ、生前の天才的な演奏技術は衰えない。
 目隠しして自作曲を弾いたり、背中を向けて完璧な演奏をしたり、生前に貴族達に向けてやっていたパフォーマンスを軽々とこなす。
 もちろん、テノーリオ以上の喝采を得て、

「ああっ、気持ちいい! ダークサイ座ばんざい!」

 と、久しぶりの客前演奏を満喫する。
 続いて彼の演奏で、不穏な雰囲気を演出する。
 泰輔が観客に上を見るよう促すと、天井近くに張られたロープの上で、長いバーを持って綱渡りを始めているレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)

「ダークサイ座ですか。私は人様に披露するような芸事は何も持っていないのですが……」

 と言っていたにもかかわらず、せめて体を使ったパフォーマンスを考えてみたら、ものすごくスキルが必要な出し物をこなしていた。
 レイチェルはロープの上で、バーを投げ捨て、倒立やバク宙をし、泰輔が投げたボールでジャグリングなど、これまた観客を沸かせる。

「さあ! この綱渡りを体験してみたい人―!」
「はいです!! さあゲドー」
「た、タンポポちゃんーー!?」
「まさかゲドーさん、できないなんて言いませんよね?」

 レイチェルにサポートしてもらいながら、結局綱渡りをさせられるゲドー。
 また泰輔が駆け寄り、

「君やるなあ! 劇団に入らへんか?」
「冗談じゃねえよっ!」

 サーカスで観客の心をがっちりつかんだダークサイ座は、続いて渋いお芝居を披露する。
 その舞台裏で舞台転換の指示をしていたトマスの前を、ふらりと五月葉 終夏(さつきば・おりが)が通過する。

「あれ? こっち側は関係者以外立ち入り禁止……」

 と、トマスは注意するが、

「ああ、気にしないで。ただのヴァイオリン弾きです」

 終夏はバイオリンを掲げて、それとなくフランツの隣に行って、一緒に調弦をし始める。
 フランツは終夏を見て、

「どちらさま?」
「ただのしがないヴァイオリン弾きです。お芝居の伴奏がピアノだけじゃあ、ちょっと寂しいかと思ってね」
「おお! それは頼もしい。よろしく頼みますよ」

 トマスが呼んだ関係者だと思い込んだフランツは、何の疑いもなく終夏と伴奏の打ち合わせをする。
 転換中、ダークサイ座の公演は30分ほど休憩となる。
 休憩の間に観客が帰ってしまわないよう、シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)がおにぎりを握って、冬月 学人(ふゆつき・がくと)が販売の呼び込みをしている。

「今さら言うのもなんだけどよぉ……ピクニックじゃなかったのかよ!」

 シンはおにぎりを作りながら、ローズやヴァンビーノに聞いていたのと話が全然違うことに、今さら学人に八つ当たりする。

「僕に言われてもな……僕だって日帰りの捜索だと聞いていたんだ」
「けっ! 旅だって聞いてたらもっとまともな食材用意したっつーの!」
「腹を立ててるのはそこなのか?」
「不本意だぜ。具が16種類しか用意できねえ」
「充分だと思うぞ……」
「ふざけんな。1か月の旅だぞ? 3ケタパターン作れなきゃダメだろ」
「まあ、おにぎりの販売は好調だし、儲けでもっと食材は確保できるんじゃない?」
「まぁな……ロゼとヴァンも面白がってるし、そこそこ稼げそうだし、いいんじゃねえ?」

 ローズとヴァンビーノが楽しそうなのを見て、ため息をつきながらもシンは悪くない顔をする。
 学人は二人の事が気にかかり、

「そろそろ本番が始まるな。様子を見て来よう」

 と、テントの中に入っていく。
 シンが一人になった直後、イルミンスール生と思われる女子が三人ほどでおにぎりを買いに来る。

「ん? ああ……」

 こういう接客は決して上手くないシンだが、女子はきゃいきゃい言いながらシンを見る。

「何だよ。オレは見せもんじゃねえぞ」
「あのう、名前なんて言うの?」
「ぁあ?……シンだけど」
「キャー! シンちゃんかわいいー!」
「シンちゃんって言うんじゃねえー!」

 と、可愛いもの好きなイルミンスール生に意外な人気を得るシンであった。

「清水次郎長……森の石松」

 彼らが演目に選んだのは、何故か浪曲。
 さらに伴奏はフランツのピアノと終夏のバイオリン。
 ミスマッチのように思えるが、そこは技術で雰囲気をカバー。
 開演してまず語りを入れるのは魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)である。
 幕末の侠客・清水次郎長の子分となった石松は、『馬鹿は死ななきゃ治らない』と言われる愛すべきキャラで、人情に厚く飲んだくれ。博打に負けて次郎長に呆れられたりしながらも、次郎長に付き従って宿敵を討つ。
 子敬は堂に入った語りで、CDで聞いた広沢虎造の浪花節を真似て見せる。
 彼らはこの芝居の見せ場を、都鳥の吉兵衛の騙し討ちに石松が力尽きるシーンにし、大立ち回りを作った。
 そのシーンがローズやヴァンビーノの見せ場らしく、意気揚々と舞台に登場する。敵役の吉兵衛は、他に舞台に立てる者がおらず讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)が務めている。それに従う斬られ役は、何故か超人ハッチャンとクマチャン。
 浪曲での石松は隻眼というのが定番らしく、ローズは眼帯をまいて華麗な死に際を演じるべく登場。
 そして次郎長役のはずのヴァンビーノも、隻眼で出てくる。

「次郎長親分、おやぶ、え、なんで眼帯巻いてるの?」
「よく考えたらさぁ、この芝居で華麗に死ぬのはオレの方がサマになると思うだよねぇ。やっぱ石松はオレがやる。ロゼが次郎長な」
「いやだ。石松は私がやる」

 本番中の舞台上である。二人は平気で役の取り合いを始めた。
 ヴァンビーノは、

「じゃあこうしようぜ。オレ、ニセ石松な。勝った方が吉兵衛に斬られるってことで」
「よし、じゃあ負けた方はカナンまで荷物持ちな」

 と、二人はプライベートな賭けまで入れて、肩に木刀を当てたら勝ち、というチャンバラ勝負を始める。

「二人は何をやっておるのだ……」

 舞台袖で出番が回ってこない顕仁は、呆然と舞台上を見る。
 そんなことはお構いなく、二人はチャンバラ勝負を客前で始め、

ぱしんっ!

「やったぜぇ、オレの勝ち〜」

 と、ヴァンビーノが拳を上げる。

「当たってないし! かすっただけだし」
「手ごたえあったもんね〜。音もしたし」
「いつですかー。何時何分何秒―?」

 ローズは言い逃れをしながら、隙を突いてヴァンビーノの肩を攻撃するが、

「だーめ。勝ったから効きませんー。バーリア! フォースフィールド!」
「お前、スキル使ってんじゃん! きったねー!」
「……子供か」

 客席から学人がつぶやく。
 ローズとヴァンビーノはそのままスキルバトルを始めてしまい、顕仁がため息をつきながら舞台上に上がる。

「もうよい。二人とも死ぬがよかろう」

 と、さすが帝の英霊、高貴な剣舞をし、木刀で二人を斬りつける。

「ぐっはあー!」

 それを合図に二人は華麗に舞台に散る。
 舞台に残るは吉兵衛(顕仁)一人。
 困った子敬はアドリブで観客に語りかける。

「えーと……次郎長役で吉兵衛をやっつけたい人」
「はいです!」
「タンポポちゃあああああん!!」