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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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6 ダークサイズの決戦! 月の港!

「そんなわけで、ゲートを開くために捜索隊に合流しなければならないのです! アルテミスさま、私たちはここで失礼します!」

 祥子と静かな秘め事が、急いで捜索隊のためにダークサイズを離脱する。

「ではでは、後は任せたわよ、皆の衆〜」

 とこんな具合で、残念ながら一時ダークサイズから離れるメンバーもちらほら。

「しまった。うっかりここまで来ちまったが、捜索隊と離れすぎたぜ。戻るぞエヴァっち」

 機晶姫も残りわずかとなってきて、あくまで共同戦線を張るために参戦した煉なども、殿から離れていく。
 さらに、ここまでの戦いで傷ついたイコンのいくつかは、やむを得ず殿から離れ、ティーパーティの物資の運搬係も兼ねてダークサイズを追っていく。
 殿では、敵機晶姫も10体を切ったところで、また拮抗した戦いを強いられる。

「くそったれ……エネルギーさえありゃあこんなやつら……」
「まだまだ……いけるさっ」

 リアトリスがヴェルデを励ます。

「調子に乗ってフルバーストアタック、早く使い過ぎちまったかな」
「フッ、分からぬか。あれがあったからこそ、今我らはここに立てているのだ」

 洋の言葉に、大吾が再度立ち上がる。

「とっととやっちまって、ティーパーティでしっかり労ってもらうとするか」
「名案だ」

 勇平と悠が傷ついたイコンの拳を握る。
 残った機晶姫も最後の激突だと認識があるのだろうか。再度隊列を組み直し、彼らを一点突破で撃破しようと不気味な静けさで立つ。
 殿のイコンは6体。敵機晶姫も残り6体。
向かい合う彼らの間には一陣の風。
 やるかやられるかの荒野の決闘の雰囲気を破るように、ここにまた新たな助け船が現れる。

『いやいや、そういうカッコイイ雰囲気、ダークサイズには似合わないでしょ!』

 元気な声と共に、ミサイルと銃弾が機晶姫部隊の横殴りに襲う。
 完全な不意打ちで機晶姫2体が餌食となり、残り4体が弾が飛んできた方向に反応する。
 黄金の機体をまばゆく輝かせ、イーグリット・アサルトグラディウスの赤いマントがなびく。

「じゃじゃーん! ロイヤルガード仕様グラディウスを駆る小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ちゃん、颯爽と登場っ!」

 美羽はこれ見よがしにマントをさばき、装甲とロイヤルガードのエンブレムを目立たせる。
 『カッコイイ雰囲気は似合わない』と言ったにも関わらず、美羽は、

「どーだ! カッコいいでしょー♪」

 と言わんばかり。
 機晶姫が向き直って美羽機を攻撃しようとしたその時、さらにもう一機のイコンが突っ込んでくる。
 飛行機型のゲイルバレットは、【20ミリレーザーバルカン】を撃ちつつ、なんとそのまま体当たり。
 直撃の直前にコックピットから桐生 円(きりゅう・まどか)が飛び出す。
 円は空中でくるくると回転し、

しゅたっ!

 片膝をついて左手を地面につき、右手はしゅぴんと斜め上に伸ばしたポーズで着地。

「待たせたね、みんな……!」

どかーん!

 円の台詞の直後、彼女の背後でイコンと壁に挟まれた機晶姫3体が爆発する。
 ついでにその爆炎を背に、シルエットの円が靴音を響かせて歩いてくる。

「うわーん、ずるーい! そんな映画みたいな演出!」

 お株を奪われて怒ったのは美羽である。

「美羽さん、助けていただいたのですから、怒らないで」

 後ろからベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が優しく諭す。
 円の後ろの爆炎にまぎれていた最後の1体が、煙から飛び出してライフルの残弾を全て使って撃ってくる。
 狙われた円の前に、美羽機が黄金の残像を残しながら盾となり、あっという間に機晶姫を撃ち落とす。
 すぐさま美羽はイコンを降りて円ににじりより、

「なーんで私のジャマするかなぁーっ」
「別にジャマしてないけど」
「というか遅いぞお前たち! どれだけダイソウトウ閣下がピンチに陥ったことか! 私も捜索隊に合流せねばならんというのに……」
「しょーがないじゃない。ボクだって忙しかったんだよ」

 洋の参戦に円がまた反論する。
 それで思い出したのか美羽が振り返り、

「サンフラワーちゃん! 私のカッコいい登場、見てくれたー?」

 と言うが、殿の6機以外は誰もいない。

「あれ? サンフラワーちゃんとダイソウトウは?」
「ボクのペンギン部隊は?」

 美羽と円が二人してきょろきょろする。
 今度はリアトリスが降りて来て、まっすぐ伸びる通路の奥を指さす。

「あそこにいるよ。向こうの方に見えるでしょ?」
『……ちぇっ、微妙に遠い……』

 美羽と円は、皆の前でカッコよく登場する目論見が少し外れて、つまらなさそうに舌打ち。

「おー、片づいたようじゃなー」

 ラピュマルを停めるところを見つけたらしいダイダル卿が、生活用ボディで合流してくる。

「あ、ダイダル卿。ボクのペンギン部隊、連れて来てくれた?」
「おお、大変じゃったぞ。おぬしがおらんと好き勝手動きよるからな」
「のんびりしてる場合じゃない。向こうにも加勢してやらねば」

 後ろの憂いを絶った殿組は、前進してダークサイズを追う。


☆★☆★☆


じゃー……

 オクタゴンの中央ゲートに向かう通路。
 トイレからお腹をさすりながらドクター・ハデス(どくたー・はです)が出てくる。

「ふう……ようやく腹痛が収まったようだな……」

 彼はメガネをくいと上げて、拳を握る。

「おのれ、蘆屋系美女陰陽師軍団め! 我ら秘密結社オリュンポスが世界征服を叶えた暁には覚えておれよ! あーんなことやこーんなことをしてやるっ!」

 蘆屋系陰陽師の恐ろしい呪いを受けて、捜索隊の戦闘から離脱を余儀なくされていたハデス。
 ハデスの隣には、かいがいしくもトイレ前で待っていたヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)が控えている。

「で、ヘスティアよ。状況はどうなっている?」
「はいご主人様、現状を報告いたしますと……」
「ヘスティア! 俺の事は博士と呼べと言っているだろう!」
「あ、はいハデス博士。捜索隊のブライドオブシリーズの設置は進んでいるようですが、月面にはダークサイズの皆様がやって来ているようです」
「なにっ! 我らオリュンポスの盟友ダークサイズだと!? 本当に月にやってくる力を持っていたとは……ククク。何を企んでいるか知らぬが面白い! それで、ダークサイズは今どこに?」
「はい、今まさに……」

 と、ヘスティアが報告を始めようとしたところに、猛然とダークサイズの一群が、二人の前を通り過ぎてゆく。

「……通過したところです」
「見ればわかるわ! なぜ早く言わぬ! ええい、追うぞヘスティア。ダイソウトウの目的を確かめるのだ!」

 ダークサイズが中央ゲートに迫り、すぐ後にハデス達、そして間をあけて殿組が続く。
 中央ゲートにさしかからんとした時、突如ダークサイズの進軍の勢いが落ちる。
 エメリヤンすらも歩みを止め、ダイソウは周囲を見る。

「……? どうしたのだお前たち」
「うぅ……お、おなかいたぁーいっ!」

 目的地は目の前だと言うのに、ほとんどのダークサイズがうずくまってしまう。
 同時に周囲からは、

フフフフ……
オホホホ……

 と、女性のものと思われる不気味な笑い声が響く。
 その正体を知っているハデスは、ぞっとして声を上げる。

「気をつけるのだダイソウトウ! 陰陽師軍団が迫って……うおおおお!」

 ハデスは忠告して、またトイレにダッシュしてゆく。

「陰陽師軍団、だと?」
「強ければ強いほど……あたしたちの呪いからは逃れられなくなるのよ」
「何者だ、姿を見せい!」

 ダイソウは空に向かって敵に問いかける。
 それを聞いた声たちは、こそこそと話し始める。

「姿見せろだって。どうする?」
「んー、まあいいんじゃない? 強そうなのは大体へばってるし」
「そうね。先輩のおねえさま方にも、あたしたちのカッコいいとこ見せてアピールしなきゃ」

 と、彼女らは自信があるのか自分たちを可視化させ、空間に滲むように姿を現す。
 3、40人ほどいるだろうか、蘆屋系美女陰陽師軍団の名にふさわしく、誰も彼もが素晴らしいバランスの肉体に、艶っぽい唇、足も胸元も露わなまさしく美女たちが立っている。

「お前たちが、陰陽師だと?」
「そうよ! あたしたちは、蘆屋系美女陰陽師軍団『アンダーガールズ』!」
「アンダー……ガールズ?」
「誰だか知らないけど、捜索隊よりずいぶん貧相な部隊だわ。一軍のおねえさま方が出る幕はなし! あたしたちで充分よ!」

 蘆屋系陰陽師にも、強さによるランク分けがあるらしい。
 アンダーガールズと名乗る彼女たちは、いわば二軍といったところだろうか。
 さらに戦いを強いられることに、ぐぐ、と歯噛みするダイソウ。
 その顔を見てアンダーガールズは嬉しそうに、

「おーほほほほ! もっと悔しがりなさい! ほーら、あんたたちももっと顔を歪ませるのよ!」
「私の幹部たちに何をした?」
「見ての通り、この呪いはお腹の新陳代謝を過剰促進させるもの。ほらほら、早くトイレを探さないと、とおーっても残念な目に合うわよぉ!」

 アンダーガールズの一人が、総司を踏みつける。

「ひぎいっ!」

 総司の苦しみは、変な声が出てしまうほど大きい。
 ダイソウは思わず、次のようなクレームを言う。

「なんだその呪いは。そんな設定聞いておらぬぞ!」
「聞いてようがいまいが関係ないのよ! せっかく月までやってきたんだから、もっといい顔見せてよねぇ!」

 アンダーガールズたちは主に男性の苦しむ顔を、嬉しそうに眺めている。

「なるほど……噂にたがわず、実にドSじゃのう」
「しかし、ちょっとばかしムカツクぜ。平気ってこたあ、俺様の強さが足りねえってことか?」

 ルファンとギャドルが、うずくまる面々を見た後、さらに鋭い目でアンダーガールズを睨む。

「あら、平気な子もいるみたいね……」

 数人が呪いを逃れているのを見るが、アンダーガールズの余裕は崩れない。
 ギャドルは苛立ちを隠さない舌打ちし、

「しかも、俺様を止めるのがアンダーガールズだと? とことん舐めてくれるじゃねえか!」
「アンダーガールズ……」

 ルファンの瞳は鋭さを増して、口からは冷静な言葉が出る。

「和訳すると、下女(げじょ)!」
「下女って言うなああああ!」

 なぜか突然キレるアンダーガールズたち。
 ルファンの言葉に激昂して、一斉に印を結ぶ。

「この距離で、のんびり呪術を待ってるアホがいると思うのかっ?」

 言うが早いか、ギャドルが堅いうろこで覆われた拳で、前列に立つアンダーガールズの腹を殴りつける。

「ふぐぅっ」

 振り向きざまにまた別の者の腹部を蹴り飛ばすギャドルに、

「ギャドルよ……敵とはいえ相手はおなごなのだぞ」

 ルファンが手刀で敵の首筋を狙いながら言う。

「おお、だから顔は勘弁してやってんじゃねえか」

 ギャドルは悪びれもせずに、三人目を狙う。

「二人とも、ラルムを頼むよ!」

 超人ハッチャンは、ラルムを頭から降ろして、『ハッチャン直属メイド隊』イブとアイリスに託し、巨体を生かしてルファン達の応援に出る。

「お前らあああ……ちーに何しとんねん……」

 お腹を抱えて泣いている千尋を介抱しながら、社は自分も腹痛を抱えながらも、それを忘れるほどの怒りに燃える。

「謎の闇の悪の秘密の結社・ダークサイズ幹部の一人の俺が相手やあああ!」

 珍しく声を荒げて前線に立ち、台詞もカッコイイ社だが、惜しむらくは顔が青ざめて内股になっている。
 彼は【神速】で間合いを詰め、【疾風の覇気】で強化した【轟雷閃】【鳳凰の拳】で連続攻撃をしかけるが、これも残念なことに緩慢な攻撃にならざるを得ない。
 そこに甲高い空気を切る音を響かせ、円機がアンダーガールズを狙って突進してくる。

「ちょ、あれ突っ込んでくるわよ」
「あぶな……!」

 と、伏せる彼女たちだが、突然円機はぐらついて狙いを外し、イコンの腹から不時着する。
 コックピットからそーっと円が降りて来て、

「待たせたね、みんな……!」

 改めてカッコイイ登場を狙ったが、これまた惜しいことに彼女の笑顔は真っ青である。

「こんなことくらいで……セクスィー☆ダイナマイツはくじけないわ。ネネ、セレアナ。いくわよ……っ」

 腹痛ごときに負けてなるものかとセレンフィリティは立ち上がるが、股を閉じて鬼気迫る表情、そして肌も露わな水着姿となると、これもある意味で垂涎もののレアショットの披露となる。

「ど、どうして私がこんな目に……」

 セレアナも立ち上がるが、どう見ても初めてビキニを着た女の子が照れながら局部を隠すポーズにしか見えない。
 そしてセクスィー☆ダイナマイツの中でも唯一呪いを受けていないネネだが、

「これがわたくしたちの新しいポーズですのね」

 と、キリッとした表情を作って、二人の体勢を真似ている。
 この三人がそういうポーズをとっているのは、何だかもう、すごい。

「ぱんだぱぱんだ……っぱぱぱぱーん!(待たせたな!……くっ、ぱんだ部隊参上だぜ!)」

 さらに、ダークサイズに援軍が現れる。
 ダークサイズの『怪人垂ぱんだ』こと朝霧 垂(あさぎり・しづり)が、【ジェットドラゴン】に乗って腕組み仁王立ちの上半身とうらはらに、足は痛みに震えている。
 ちなみに垂は、カリペロニアで実際に怪人化されており、本来の垂とパンダが混ざった半人半ぱんだの出で立ちである。
 垂の声に反応し、『ぱんだ部隊』のパンダたち約10体が、垂の元に馳せ参ずる。
 それに呼応するように、ダークサイズの『ペンギン部隊』が円の元にぺたぺた音を立てながら走る。その数およそ300。
 ダークサイズの主力怪人部隊であり、イコン戦でも活躍できず、地味に過ごしていたぱんだ&ペンギン。
 今こそ活躍の時と、隊長の垂と円を中心にアンダーガールズに立ち向かう。
 そして言うまでもなく、元気な隊員と腹痛に身体が震える隊長二人。
 隊長二人の指示と共に、猛然とアンダーガールズに突進するペンギンとぱんだ。
 動物の群れの突進に一瞬警戒する陰陽師たちだが、床からはぺたぺたもふもふ、横揺れしながら迫ってくる愛玩動物の姿に、腐っても女子、アンダーガールズたちはキュンとする。
 その隙を突いたペンギン部隊が、アンダーガールズの足に頬ずりしたり、胸元に飛び込んでだっこしてもらったり、さらにきゅいきゅいと甘え声でなつくという攻撃。
 ぱんだ部隊も負けじと笹をかじったり、どこから持って来たのかタイヤと戯れて、上目遣いでアンダーガールズを見る。

「かかか、かわいいわぁ〜!」

 戦闘を忘れそうになるアンダーガールズに、円の追加攻撃が加わる。

「あら、この子たちは優しい人にしか懐かないっていうのに……もしかしておねーさまがた、実は優しい人たち……?」

 と、円は意外そうな顔を作って、わざとらしく目を輝かせる。
 垂も円の隣で、ぱんだ語をしゃべる。

「ぱんだぱんだぁ」
「ふむふむ。ぱんだたちは気に入った人にしか媚を売らない? ぱんだはおねーさまたちとずっと一緒にいたいと思ってるって? つまりアンダーガールズなんて二軍やってないで、ダークサイズで一緒にもふもふしないかって?」

 合ってるかどうかは謎だが、円が垂の通訳をし、さらに勧誘まで始める始末。
 そんなペンギン部隊とぱんだ部隊の猛攻が、思いもよらない効果を及ぼす。

「はっ……腹痛が!」
「収まったぞ!」

 円と垂の罠にはまったアンダーガールズたちの気が逸れ、呪いの効果が薄れていく。
 ダイソウが皆の声を聞き、

「ティーパーティ組は前進!」

 戦闘を怪人部隊や戦闘要員の者に任せ、ダークサイズが進軍を再開。
 しかしその変化に気付いた陰陽師は、

「しまったわ!」

 と、再度呪いに魔力を割く。

「いたたたた!」

 またうずくまるダークサイズ。
 今度は円がペンギン着ぐるみを取り出し、

「ダークサイズに入ると、こんなにかわいい衣裳が無料で支給されます」

 と、円が実演で着てみせる。

「かわいい〜!」
「腹痛が収まった!」
「よし、進軍再開!」
「しまったわ!」
「いててててて!」
「ぱんだんだ(ダークサイズの次のイコンはぱんだデザインとペンギンデザインだぜ)」
「かわいい〜!」
「進軍再開!」
「しまったわ!」
「あだだだだ!」

 腹痛が収まっては進み、進んではまた痛みが走る。
 前に進みはするが、どうにも少しずつしか進めない。

「何をしておるのだ……」

 事情は分かるが、呪いを受けないルファンたちは、何とも滑稽に思いながら陰陽師との戦闘を続ける。

「サンフラワーさん!」

 奇妙な膠着状態が続く中、大岡 永谷(おおおか・とと)が向日葵を見つけて、腹痛に耐えながらゆっくり走ってくる。

「永谷くん!」
「まさか本当にここまでやって来ていたとは」

 ニルヴァーナ捜索隊の一員として、安倍 晴明(あべの・せいめい)を警護しながら戦っていた永谷は、引いては寄せる腹痛の波に、

(何かがおかしい)

 と辺りを捜索、向日葵たちを発見した。
 向日葵は急いで永谷に状況を説明。

「なるほど……戦況は捜索隊と似たようなものだな。それにしても、因果応報とはこのことか」
「え、何か言った?」
「いや、何でも」

 以前、ダークサイズを倒すために下剤の罠をしかけたことのある永谷。
 まさか自分が呪いとはいえ、やられる側に回るとは、と彼は過去を振り返る。

「敵の敵は味方、というのは俺の信念に反するが、仕方がない。ブラッディ・ディバインを倒したら、ダークサイズと決闘だな」
「もちろんだよ!」
「よし、そういうことなら」

 永谷は向日葵と捜索隊のために、ダークサイズとの共闘に参加。

「して、どう戦うのだ、ゾンネンブルーメ?」
「?」

 そしらぬ顔をして向日葵たちを盾に隠れていた大佐が、向日葵をなぜかドイツ語で呼ぶ。

「私も含め、呪いに襲われておる。あまり時間を取られると、ブラッディ・ディバインの応援が来るやもしれぬぞ、ヘバラキ」
「?」

 と、大佐は今度は韓国語で向日葵を呼び、

「さあパドソロネチュニク。ダークサイズにばかり頼ってないでヘリアントゥス、ジラソル、トーヌソル! チームヒラソルの力を見せてみるがよい」

 大佐はひたすら世界中の言語で向日葵の名を言い、

「何なのよそのいじめ! もうサンフラワーでいいからー!」

 と、大佐の不意打ちと逼迫した状況のため、勘弁してくれとばかりの悲鳴を上げる。
 ペンギン&ぱんだ部隊、呪いを受けない者、受けても耐える者の善戦があり、そして陰陽師軍団も二軍とはいえ、やはり蘆屋系は手ごわい。
 どうしたものかと攻めあぐねていると、今度は安い自動車のエンジン音が近づいてくる。