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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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第一章 仲間を集めよう

 昼休み、蒼空学園の高円寺 海(こうえんじ・かい)が食堂に向かおうとすると、小柄な女の子とぶつかった。圧倒的な体格差に女の子が尻餅をつく。
「ごめんっ、考え事をしてたんで」
 無論、ソリレースのことだ。女の子の手を引っ張って立ち上がらせると、食堂に入ろうとする海を、その女の子が呼び止めた。
「海君!」
 不意に呼び止められた海は、振り返ってようやく杜守 柚(ともり・ゆず)に気付く。
「ああ、杜守だったのか。ホントにごめん、ソリレースについて考えてたもんだから」
「出場するの?」
「もちろん」
 しっかりうなずいたが、柚に「ソリは得意なんですか?」と聞かれると、口をへの字に曲げた。
「まぁ、練習すればなんとかなるだろ」
「そうですか……、私も乗ったことなくて……」
「ああ、そうなんだ。じゃあ、これで」
 時間が惜しい海は立ち去ろうとしたが、柚が再び呼び止める。
「私とチームを組んでくれませんか?」
 突然の誘いに、海はまじまじと柚を見る。
 自分より30センチも低い身長。先ほどぶつかったことを思い起こしても運動神経が良さそうには見えない。メリットがあるとすれば体重くらいか。
「1人じゃ不安なので、誰かいないかなって。もちろん誰でも良いわけじゃなくって、海君が良くて……」
 そこまで言って、あわてて方向訂正する。
「もちろん運動は海君ほど得意じゃないけど、軽いから邪魔にもならないと思うし、スキルとかでも頑張るから。それに賢狼や吉兆の鷹とかも用意してあるし……」
 賢狼や鷹の言葉に海は反応した。
「オレはシルバーウルフやパラミタセントバーナードを考えてたんだが」
「それも良いですね。あっ、1人で出るとか、誰か組む人を決めてたら……」
 海は首を振った。
「気持ちばかり先走って、チームのことは考えてなかった。せっかく誘ってくれたんだ。一緒に頑張ろうぜ」
 海が差し出した大きな手を、柚は両手でしっかり握った。
 その食堂はいつものように混雑していた。
 一角では白波 理沙(しらなみ・りさ)雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)がテーブルを共にしていた。
 ブロンドの美少女が2人並んで腰掛けているだけでも人目を引く。一方が他方を口説いているとなればなお更だ。
 テーブルの反対側ではペンギンのゆる族と獣人が、もくもくと昼ごはんを食べていたが、こちらに注目するものはほとんどいない。
「お願い、うんと言って」
「でも……私、一度も経験ないのよ」
 小さくちぎったパンを口の中に放り込むと、雅羅は視線をそらした。
「誰だって、何にだって、初めてはあるわ。でもそれをしない理由にするのはおかしくない?」
「それはそうだけど……」
「大丈夫、私達に任せてくれれば良いの。悪いようにはしないから」
 高飛車で積極的な態度が常の雅羅が押されている珍しい光景。理沙は煮え切らない雅羅を説得し続ける。
「せっかくの冬季ろくりんピック、応援するだけじゃつまらないわよ。それに見てるだけなんて雅羅らしくない」
「私らしく?」
 雅羅は考え込んだ。
「“カラミティ(疫病神)”って呼ばれてるの知ってて誘うのね」
 理沙はウンウンとうなずいた。
「OK! よろしくチームメイト!」
 雅羅と理沙はガッチリと腕を組んだ。

 空京大学図書館の閲覧室。
 本に夢中になっていたシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)の肩を、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が叩く。
「外で」とばかりにセイニィが出入り口を指差すと、シャーロットも黙って従った。
 図書館の入り口まで来ると、セイニィが「本気なの?」と尋ねる。
「もちろん、だって面白そうですから」
 シャーロットは笑顔で応えた。
 外のベンチに腰掛けると、シャローットはハッカパイプを口にくわえる。笑顔のままで、セイニィの反応を待った。
「ま、良いけどね。あたしも退屈してたトコだから。『Les Leonides』も楽しかったけど、こっちは派手にやれそうね」
 シャローットの笑みが大きくなった。
「ソリに乗るのは、あたし達2人?」
「グリムにも頼もうと思ってます。あの子なら、ウェイトでプラスになることなく、スキルが使えるのはメリットになりそうですから」
 シャーロットはパートナーであるグリム童話 『白雪姫』(ぐりむどうわ・しらゆきひめ)の名前を出した。
「なるほどね。三人寄れば……とも言うし、集まってもう少し決めた方が良さそうね」
 同じく空京大学の宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)を誘ってティータイム。
「いきなりですのね」
 祥子がソリレース出場を打診した答えがこれだ。
「そう? 少しは予想してたのかと思ったのだけど」
「そうですね」
 ティセラは微笑んだ。
「ランスロットと出るつもりだったけど、いろいろ考えたら、もう1人欲しいなって。それでティセラが浮かんだの」

 ケンタウロスの相手をしていた湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)が豪快にくしゃみをする。
「風邪? ……いや、祥子か?」
 
 少し考えた後、ティセラは祥子の誘いを受けた。
「冬のろくりんピックは楽しみにしてましたから、よろしくお願いします」
「ありがと、これで鬼に金棒ね」
「それで、わたくしは何をすれば良いのでしょう?」
「とりあえず私はシルバーウルフやケルベロスを用意してあるの。ランスロットはケンタウロス」

 ランスロットが再びくしゃみをする。先ほどに輪をかけて豪快だ。
「また祥子だな」
 鼻の下を軽くこする。
 
「ティセラには湖を乗り切るペットを用意して欲しいんだけど」
「すると軽いものか……飛べるもの……が良いですわね」
 その後のティータイムはペット選定で盛り上がった。