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秋のシャンバラ文化祭

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「そこの人たちもいかがですか?」
 アニマ・ヴァイスハイトが、そばを通りかかった源 鉄心(みなもと・てっしん)たちに声をかけました。
「あら、イコプラですね。鉄心って、こういうの好きですよね」
 ちょうど通りかかったうさみみ&うさしっぽをつけたティー・ティー(てぃー・てぃー)が、飾られているイコプラを見て言いました。
「そうか?」
 それほどでもなさそうな源鉄心の返事に、ちょっとティー・ティーがむっとしたようです。筏レースのときは、あれほど嬉々として筏を組み立てていたというのに……。これは、ぜひとも、秘められた趣味を顕わにしてあげなければいけません。
「買いましょう!」
「えっ? まあ、ティーが買ってくれるって言うんならいいけど……」
 突然の申し出に、源鉄心はちょっと戸惑い気味です。
「せっかくだから、買ってもらえばいいんです」
 すかさず、ネコみみ&ネコしっぽをつけたイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が言いました。
「それで、どのイコプラがいいんですか?」
 ティー・ティーが聞きます。
「うーん、イーグリットもいいが、ジェファルコンも捨てがたいな。扱いやすさから言ったらプラヴァーだし、ここは、変わったところで凄まじい枕とか……」
 源鉄心が、数々のイコプラを前にして迷います。
「悩んでる暇はありません。イコプラバトルで戦うなら、パーツはたくさんないと。そこのお姉さん、これと、これと、これと、それと……。ええい、ここからここまで全部ください!」
 ティー・ティーが、いきなり大人買いに走りました。
「毎度ありがとうございます!」
 上客です。カモです。アニマ・ヴァイスハイトが、ニコニコしながら、イコプラの箱を紙袋につめ始めました。
「ちょっと待ったあ! まとめ買いするのですから、もっと負けてほしいのですわ」
 あわてて、イコナ・ユア・クックブックが止めました。大人買いは、値引きのチャンスです。トレーダーの血が騒ぎます。
「ええっと、どうします?」
 ちょっと困って、アニマ・ヴァイスハイトが、アレーティア・クレイスの方を振り返りました。
「そうじゃのう……」
「何を言っているんですか。こんなにたくさん買ったんですよ。これは、絶対にディスカウントの対象です。ぜーったいに、勉強しなければいけませんわ。それでこそ、商人というるのですわ。あなたも、イコプラを売るのであれば、それくらいはしないと一人前とは言えないのです。ほら、ここっ! 箱のここの部分がちょっとだけ潰れています。これは、マニアにとって致命的ですわ。負けましょう。負けてください。ねえねえねえ。そうですか。これだけ言ってもダメですか。よろしいです。特別に、このパンプキンパイをさしあげましょう。これでどうです? さあ、あなたはだんだんイコプラを安くしたくなる……、安くしたくなる……」
 パンプキンパイを目の前にかざして、イコナ・ユア・クックブックが、アニマ・ヴァイスハイトにまくしたてました。
「ええっと、まだ負けないとは一言も……」
 アニマ・ヴァイスハイトは、ちょっと戸惑い気味です。
「まあ、そんないい物をもらえるのでしたら、さらに、この限定品モデルも一緒にしましょう」
 すかさず、柊 早苗(ひいらぎ・さなえ)が、ティー・ティーが選んだ箱の上に、さらにイコプラの箱を積みあげます。さすがはこちらもトレーダー、ただでおまけにつけるとは一言も言いません。しっかりと、売れ残りを押しつけます。
「いいじゃろう、二割引じゃ」
「もう一声ですわ!」
「お主も悪よのお。ええい、もってけ、泥棒、三割引じゃあ!」
 思いっきりイコナ・ユア・クックブックのペースに乗せられて、アレーティア・クレイスが叫んでいました。
「はあい、大会にエントリーする方は、こちらへどうぞです」
 隣の机で、大会エントリーを受けつけていた柊早苗が、周りに呼びかけます。ちゃっかりと、参加費で値引き分を穴埋めです。
「よし、やるぞ!」
 すかさず、源鉄心と葛城吹雪がエントリーしました。
「まったく、みんなどこ行ったんだろ……」
 はぐれてしまったパートナーたちを捜して、笠置 生駒(かさぎ・いこま)がそこへやってきました。
「あのー、この辺で……。おっ、イコプラか!」
 訊ねかけて、笠置生駒の目が、ワゴンの上のイコプラに留まりました。
「どうですか、一つ。イコプラ大会も開催していますよ」
 柊早苗が、笠置生駒を誘います。
「これなんかどうですか。クリアパーツ仕様のジェファルコンです。プレミア物ですよ」
 柊早苗が、笠置生駒の琴線をくすぐってきました。
「あと、残り一つです。先ほどのお客様も、これをほしいと……」
「買った!!」
 限定品に弱い笠置生駒でした。それとも、柊早苗の方が一枚上手なのでしょうか。
「うんうん、もうあいつらは放っておいてもいいよな」
 二つ返事で、笠置生駒が大会にエントリーします。もう、はぐれてしまったパートナーたちのことは、どうでもいいようです。
「ええと、ここでいいのかな?」
 完成したドラゴ・ハーティオンのプラモをかかえたコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が、そこへやってきました。少し前に、ラブ・リトルから、押しつけられるようにして渡されたものです。そのラブ・リトルは、見たいショーがあるとか言って、どこかへ行ってしまいました。
「これで、稼いでこいと言われたのだが……」
「大会参加ですね。優勝者は、第三世代イコンのイコプラ、先行予約券がもらえるんですよ」
 柊早苗に言われて、コア・ハーティオンがいそいそと参加申込書に自分の名前を書いていきました。予約券なので、購入は実費です。
 その近くでは、源鉄心と葛城吹雪が、買ったばかりのイコプラを組み立てていました。
 葛城吹雪の方は、アーテル・フィーニクスをオーソドックスに組み立てています。
 大人買いをした源鉄心の方は、ジェファルコンをベースにして、いくつかのイコプラから装甲のパーツなどを寄せ集めてオリジナルイコプラにしていきます。その組み立て方はちょっと特殊で、源鉄心が何もしていないのに、自然と彼の目の前でイコプラが組み上がっていくのでした。
 空中から突如カッターが出てきたかと思うと、スパーっとパーツのバリを切り落とします。ぱかぱかと組み上がっていくイコプラに、いつの間にか湿ったデカールがぺたっと貼りつきました。
 最後に、中にパイロットとしてちゃんとティコナちゃん人形が搭乗します。
 他は、コア・ハーティオンのドラゴ・ハーティオンと、笠置生駒が買いたてのクリアジェファルコンで参加です。
 イコプラは、等身大に近い1/12スケールの物もありますが、今回のバトルに使われるのは1/35スケールです。二メートル四方ほどのリングの中で、ラジコン操作で戦います。