リアクション
本日、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、重婚する。 ◆ 唯斗たちの騒動の様子を、式場の受付の手伝いをしていたミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)とスノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)が目撃していた。 「……あらっ? 玲亜じゃないの。……唯斗さん、遂に犯罪に手を--、は冗談として、どうせ今日も迷子なんでしょ、あの子……」 玲亜の迷子癖を知るミリアは、すぐに詩亜に電話をかける。 「もしもし、詩亜? 玲亜、見たんだけど……」 『あっ、ミリアさん!? えっ、玲亜が結婚式場で新郎さんに連れまわされてたのっ!? ……えぇと、それって一体どういう状況なのよ……?』 ただ買い物に来ていただけの詩亜からすれば、結婚式場に連れ込まれる理由からして謎である。 『と、とりあえずその式場に向かうわね!』 そう言って、詩亜は通話を切った。 「はい〜、申し訳ありません〜。先方様の都合もありますしぃ〜、皆様の都合もおありですからぁ〜、このあたりは短縮する方向でお願いしますぅ〜」 唯斗が式場に遅刻してきた上にエクスの仕置きでぶちのめされたため、スノゥは式場側と時間交渉中だ。ミリアもスノゥも何故かメイド服姿で仕事して回っているため、式場側にはただの招待客だと気付かれていないようである。 一方、一向に式が始まらない式場内では、五十羽のわたげうさぎが大行進をしている。 「むぅ〜っ、普通新郎さんが遅刻するかなぁ……」 わたげうさぎを放った元凶であるサリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)は、わたげうさぎまみれの会場を眺めながらつまらなそうに足をプラプラと揺らしている。 「……とりあえず、暇なの。 サリアちゃん、何か面白いこと無いかなぁ?」 「む〜、面白いことなんて無いと思うよ? と言うか、本当に暇だよね、翠ちゃん……」 サリアと一緒にいる及川 翠(おいかわ・みどり)も、式場内を我が物顔で闊歩--否、転がり回る、モフモフとした無数の毛玉たちを退屈そうに眺めている。 純粋な興味本位で結婚式にくっついてきたサリアと翠には、暇つぶしの要素が圧倒的に不足していた。 「それにしても遅いなぁ……まさか、式中止です! なんて言わないよね……?」 サリアがそう言った瞬間、式場に詩亜が飛び込んできた。 「翠ちゃんお願い、そのHC貸してっ!」 「えっ、詩亜ちゃん、HCさん貸してほしいの? はい、どうぞなの!」 何やら鬼気迫る表情の詩亜に、翠はすぐ銃型HC弐式・Nを貸した。 「詩亜ちゃん、私もついていきたいの!」 翠は「何となく暇つぶしできそう、面白そう」と判断し、すかさず詩亜に申し出る。 「本当? じゃあ、翠ちゃんも手伝ってくれる?」 そう言って、詩亜たちはHC片手に飛び出して行った。 「いってらっしゃーい」 サリアは相変わらず、うさぎを大行進をさせることにしたようである。 「時間がたつのって早いわねー。私が唯斗に会ったのが三年前、告白されたのが二年前、口説かれて唯斗のトコに来たのが去年、か。ホント、あっという間ね……」 「今まで、どれだけ振り回されたことか。全く、いつも通り過ぎて困るわ」 「うん。あの馬鹿に口説かれてついて来ちゃったけど……何故か唯斗の不幸体質に巻き込まれ易い気がするわ。慣れてきちゃってるのが怖いトコよねー」 「良いよ、どれもこれも今更変わる性分でも無かろ? 妾達は妾達らしく、それで良いであろうよ」 玲亜の服に縫い付けた発信器を頼りに、式場内を駆けずり回った詩亜と翠がようやく辿り着いた先には。 唯斗との思い出を振り返るエクスとリーズと、二人の前に倒れている唯斗と、唯斗の頬を心配そうに恐る恐るつつく玲亜の姿があったのだった。 |
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