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2023年ジューンブライド

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リアクション

「ああっ! 道に迷ってたせいで、式が終わっちゃったじゃない、この馬鹿ハデスっ! せっかく邪魔な兄嫁がいない世界に来れたと思ったのにっ!」
 息を切らせながら、叫ぶ結花。ぽす、と地に落ちたブーケに、結花の目が留まる。すかさずブーケを拾うと、さっと花を唯斗の方に向けた。
「唯斗兄さんっ! この世界では、エクスとリーズに、兄さんを渡しはしませんっ!」
「は? 兄さん? ……俺の妹ぉ!?」
「えええ!? 兄さんの妹!?」
 唯斗と睡蓮が驚きに目を見開いて、口々に叫ぶ。
「いやいやいやいや! 俺には義妹の睡蓮しかいないぞ!?」
「妹って、わ、私だけじゃ無かったんですか?!」
 --ふと、唯斗はすぐ近くから明確な殺気を感じた。
「……くくく、綺麗に纏まると思えばコレか? 唯斗……今度はどこで何をして引っ掛けてきおったぁ?」
「唯斗……あんたって奴は……! 実の妹に何をしたのよっ!?」
 エクスとリーズの体から、どす黒いオーラがにじみ出ていた。
「いや、だからエクスとリーズはマジで落ち着いて下さいお願いします!」
「いい加減にせんか弩阿呆がああああぁぁぁっ!!」
「この大馬鹿あああぁぁぁぁっ!!」
「何でだああああぁぁぁぁぁっ!!?」
 唯斗は弁明空しく、光条兵器とグーパンでぶっ飛ばされたのだった。

 そんな様子を、詩亜は呆然と、玲亜は興味津々に、翠はワクワク、サリアはハラハラしながら、思い思いに見守っている。
「あ〜、唯斗さん今日は厄日ね〜」
「はい?厄日ですねぇ?」
 ミリアとスノゥは達観したように頷き合う。
「い、一体何が起きているんでしょうー……」
 そんな中、メビウスはかなりまともに心配している。
「あれは、重婚--いえ、チンパンジー婚の素晴らしさを身を以て教えてくれているんですよ。勉強になりますね」
 ネメシスは感心したように頷いている。
「我らの結婚式には、このような邪魔は入れさせぬ。全て任せておくがよい」
「まだその話題続いてたのか……」
 そんな話をしながら、マネキとセリスも少し離れて唯斗たちの様子を見ている。

「こうなったら、戦闘員、ハデス! やってしまいなさいっ!」
 皆に見守られる中、唯斗たちに華麗にスルーされていた結花が、業を煮やしたように命じた。
「……え? それでも妨害するのか?」
 結花の言葉に、ハデスがぽかんと口を開く。
「と、というかですね! 邪魔するってダメですよ! 折角の式なのに!」
「まあいい、さあ行け! オリュンポスの戦闘員たちよ!!」
「ああ、聞いてない!!」
 正論を持ち出した睡蓮の言葉など聞かず、式場に乱入するハデスとオリュンポスの戦闘員たち。
「ええと、正体は分かりませんが多分悪い妹さんですよね!? 悪さはダメです!」
 式場内を埋め尽くすように、睡蓮の祈りの弓から矢が放たれた。
 --刹那、地に刺さった矢から爆風と爆音が轟いた。睡蓮が矢に込めた想いの力が強すぎたのだろうか。完全に爆弾並みの威力である。
「あー、すっかり忘れるとこだった」
 サリアが独り言のように呟いて、ポン、と手を打った。そして、準備しておいた無数の白鳥の群れを飛ばした。本来は退場する新郎新婦に向けて飛ばす予定だったのだが、ハデスたちの乱入で忘れてしまっていたのだ。
「白い! 白い!! 視界が白い!!!」
 起き上がろうとした唯斗が叫ぶ。唯斗に限らず、戦闘員たちも顔面を擦って行く白鳥たちを追い払うのに必死である。
 誰彼構わず皆の体にがつんがつん当たりながら飛び回る白鳥たちに、式場内は完全なるパニック状態に陥った。
「と、とにかく式場から脱出するぞ!!」
 唯斗がエクスとリーズの手を引いて、真っ先に扉へと向かった。
「折角だからわたげうさぎも行進させようかなぁ」
「やめてくれ!!」 
 サリアに突っ込みを入れつつ、唯斗が式場の外に飛び出す。その後に続いて、皆が一斉に式場の外へと飛び出した。
 皆の視界が開けた途端--全員の目に映ったのは、イコンだった。柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)の乗った、ラーズグリーズだ。
「重婚おめでとうございます(笑) さて、そんじゃ花弁投下っと」
 そう言いながら、恭也はイコンの容積一杯に詰め込んだ花弁を一気に投下した。
「安心しろよ、追加の花弁も用意してあるから」
 更に、花弁を目一杯に積み込んだ多弾道ミサイルを唯斗たち目掛けて放った。ミサイルが破裂すると共に、多量のフラワーシャワーが地上に振りそそいだ。
「--さて、喜んでもらえたかな?」
 花弁が散り終えた時、恭也たちの視界に映ったのは、結花とハデス率いる戦闘員VS唯斗たちの戦闘状態だった。
「……まぁ、平穏無事に終わる訳ねぇわな。つうか、よくあの花吹雪の中で戦闘に入れたな……」
「ふむ、オリュンポスが絡めば当然の結果か。私としては、あれに丁度いい薬だと思うがね」
 恭也と唯依は顔を見合わせる。
「仕方ねぇ、助け舟だすか。ラーズグリーズ寄せるぞ」
 式場の前にラーズグリーズは着陸し、恭也たちも乱戦に参加したのだった。

 一悶着あって、ようやく勝敗がついた。
「ま、まあいいわ。この世界には、私という妹は存在しない…。妹だけど他人という、おいしいポジションを利用して、いずれ兄さんを落としてみせます! 覚えていてくださいっ!」
 膝をついた結花はそう捨て台詞を残し、ハデスたちと引き上げて行ったのだった。
 とはいえ、状況としては何も解決してはいないことも確かだった。どうやら、唯斗の受難はまだまだ続きそうである。