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リアクション
ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、ジューンブライドのイベントのチラシを眺めていた。去年は真田 佐保(さなだ・さほ)とイベントに行ったのだが、今年も見たいな、と思っていたのだ。
「えへへ、こんなところでぐずぐずしていられないです。急いで先輩のところに行かなくちゃ!」
佐保のウェディングドレス姿に思いを馳せるのを一時中断し、ミーナは佐保の元へと向かった。
「佐保先輩! ミーナと結婚してください!」
佐保を見つけるなり、人前だというのに突然そう叫んだミーナ。
「こ、こら! 誤解を招くようなことを突然叫ぶとは--」
と、会って早々、散々佐保に説教をされたミーナだった。
「今年も模擬結婚式で佐保先輩のウエディングドレス姿みたいです」
とはいえ、ミーナもちゃんとジューンブライドイベントのチラシを差し出し、佐保に了承を求める。
「去年は、とても恥ずかしかったのでござるよ」
「それでも! だめですか?」
「--なので、今年はミーナ殿に着せるでござる!」
「ええっ!? じゃあ先輩のタキシードも見たいです!!」
俄然やる気になるミーナ。こうしてミーナたちはそれぞれ選んだドレスに着替えて、模擬結婚式をすることとなった。
ミーナは可愛いウェディングドレスを、佐保はタキシードを着て模擬結婚式が始まった。ミーナはトレンドマークの大きな赤いリボンを外し、ポニーテールからストレートに髪形も変わっている。
(いつもと違う髪型のミーナのこと、先輩はどう思っているのかな?)
少しだけ、ミーナは胸をどきどきさせながら、模擬結婚式は進んで行った。
「先輩のタキシードかっこよかったです! えっと、ミーナのドレスどうでした?」
模擬結婚式の後二人で帰る途中、ミーナは佐保に訊ねた。
「可愛かったでござるよ。ミーナ殿は髪を下ろすのも似合っているでござるな」
ミーナはえへへ、と笑う。佐保がミーナ自身の気になっていたところを誉めてくれた、というのも理由のひとつだが、ミーナは佐保と一緒に模擬結婚式ができた、ということが満足だった。
「先輩、--ミーナは先輩といつか本当の結婚を挙げたいのですよ」
そう言って、佐保の頬にミーナは軽くキスをした。
「えへへ。また明日なのです」
キスをするだけして、ぽかんと棒立ちする佐保を尻目に逃亡するミーナ。
「……逃げなくてもいいのでござるのに」
佐保は、どこか少し物足りなさそうに、でも少しだけ頬を緩めてミーナの去って行った方向を見つめていた。