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【4周年SP】初夏の一日

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【4周年SP】初夏の一日

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2.散歩

 学校も仕事もお休みの日。
 たまにの重なったまるまる1日のお休み。
 桐生 円(きりゅう・まどか)は、恋人のパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)と共に、ヴァイシャリーの街を巡っていた。
 歩いて店を回ったり、ゴンドラにのって移動したり。
 ゆっくりのんびり、会話を楽しみながらの散歩だった。
「意外な食感だけど、しっかりした味で美味しいよ、これ。パッフェル食べてみて!」
 最近できたお菓子屋さんで購入したセミフレットを一つ、円はパッフェルに差し出した。
「……うん」
 冷たいけれど日本のアイスクリームとは違って、生クリームをメインとしたケーキのようなお菓子だった。
「うん、おいしい……」
 円から受け取って食べたパッフェルも、美味しいと頷いた。
「オープンしたばかりだから、混んでたよね」
「この味、なら……当分、混みそう」
「うん、商品が良いと客は絶えないよね……。商品が良くても知られてなきゃ、お客は増えないし」
 2人は将来サバゲーショップを開こうと約束をしている。
「宣伝の方法とか、商品の説明……接客とか、違いあるんだろな」
 どんな風に宣伝をして、集客をしているのか。
 客が入る店と、入らない店の違いとか。
 円は最近、そういったことを気にしながらショッピングをしている。
「やっぱり気遣いとかが大事なのかな」
 雑貨屋の前で立ち止まり、円はショーウィンドーに映る自分の顔と、斜め上のパッフェルの顔を見た。
 お互い、楽しいのだけれど――笑顔がない。
「やっぱり笑顔の練習した方がいいのかなー」
 そう思って、円はガラスに映る自分を見ながら、にかっと笑ってみる。
「な、なんかぎこちないかな。パッフェルも練習する?」
 円が尋ねると、パッフェルはショーウィンドーの自分の顔を見て、目を瞬かせた。笑顔は出ない。
「最高の笑顔で接客した方が、相手も、自分も気持ちがいいと思うよ。うん、きっと練習してた方が人気がでるよ!」
 そう言って、円はショーウィンドーに向かい「いらっしゃいませ〜、こんにちはぁ」とにかにか笑ってみた。
「いらっ、しゃい……こんにちは」
 パッフェルも挨拶の言葉を言うが、笑顔はごく微笑といったところだ。
「どちらの商品をおさがしですかぁ〜」
 笑顔で自分の顔を見ていた円は――その先の、雑貨屋の店員達の姿に気付く。
 店員達はこちらを見て、くすっと笑みを浮かべていた。
「うわっ、笑われちゃった」
 途端、円は少し赤くなる。
「ごめんね、笑われちゃったね」
 そう円がパッフェルを見上げると。
 パッフェルは練習の笑顔よりずっと自然な、穏やかな優しさを含む目で僅かな笑みを浮かべて。
「円、かわいい……」
 強引に円を引き寄せ、小さな唇に自らの唇を重ねた。
「ぱ、パッフェル」
 数秒のキスが終わると。
「……突然、び、びっくりした」
 ちょっと驚いた顔で、さっきよりまた少し赤くなって、円はパッフェルの腕に自分の腕を絡めた。
「次は、どっちに向かおうか?」
 そして、円が尋ねると。
「……本屋に、行ってみたい。それから、服を見に」
「そうだね。制服とかも考えなきゃなのかな?」
 円の言葉に、パッフェルはこくっと頷いた。
 先ほどの雑貨屋の店員は、店名の入ったエプロンをしていた。
「迷彩柄のエプロン……とか斬新かな。客層の幅を広げる為に、ちょっと変わったユニフォームもいいかもね」
 でも、と。
「サバゲーショップだけど、やっぱりかわいい感じがいい!」
 円がそう言うと、パッフェルも首を縦に振った。
「かわいい、もの、好きな、人にも……入ってもらえる、かも」
「うん、色々なお客さんに来てもらえるようにしたいね」
 それじゃ、まずは本屋で情報収集をして。
 それから、服を見て見ようと。
 円とパッフェルは、急ぐことなく歩いて行く。

 沢山の店を巡り、歩き回り。
 気づけば、夕日が辺りをオレンジ色に染めていた。
 帰りに立ち寄った公園で。
「ねーパッフェルー、キスしたい」
 今度は円から、パッフェルにお願いをすると。
 すぐに、パッフェルの手が円の顔に伸びて。
 円を仰向かせて、唇を重ねた。
 円は凄く嬉しそうな笑みを浮かべて。
「パッフェル、楽しかった……っ」
 ぎゅっと、パッフェルに抱き着いた。
「ええ。楽しかった、わ」
 パッフェルも円を愛しげに抱きしめ返した。