蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

夜遊びしようよ!

リアクション公開中!

夜遊びしようよ!
夜遊びしようよ! 夜遊びしようよ! 夜遊びしようよ!

リアクション


第3章 新しい発見

 窓から見えた月が、とても綺麗だったから。
「翔くん、今から出かけない?」
 夕食後、辻永 理知(つじなが・りち)は、旦那である辻永 翔(つじなが・しょう)を誘って空京の街を訪れた。
「空京にもネオン街、あるんだね。翔くんはつきあいとかでよく来てるのかな?」
「たまには……理知は行ったことないのか?」
「うん! だってまだ、未成年だからお酒飲めないし。二十歳になったら連れてってくれる?」
 少し先に、キラキラと輝く区画がある。空京の歓楽街だ。
 とても賑わっているようだけれど、自分にはまだ早いと理知は思っていた。
「うん。どんな店行きたい?」
「大人なバーとか興味あるんだ〜」
「そっか。それじゃいい店探しておくよ。なにかの記念日に行けるといいな」
「うん!」
 今日は歓楽街ではなくて、2人は百貨店や色々なお店の立ち並ぶ繁華街の大通りを歩く。
「あ、このお店……昼間はカフェなのに、今はちょっと雰囲気が違う」
 有名ブランドショップの隣にある小さなカフェは、友人と何度か利用したことがある。
 だけれど、今の時間はカフェという雰囲気ではなくて……。
「夜はバーになるみたいだな。入ってみる?」
「ううん。飲まなくてもバーに入ったところ見られたら、怪しまれるかもしれないしね」
 旦那の翔は教官だから。
 怪しまれる行動は避けないと、と理知は思う。
 妻とはいえ、未成年に酒を飲ませたと疑われるのは好ましくない。
「イコプラショップって何時まで開いてたっけ?」
「住宅街の店は、もう閉まってるかもな。デパートの中のは、9時頃まではやってるはず。あと、駅に近いあの店は、結構遅くまでやってるみたいだ」
「それなら帰りに寄れるね」
「遅くなり過ぎなかったらな」
「そうだね……あっ! 屋台が沢山」
 公園の中と近くに、屋台が立ち並んでいた。
 日中は店はなく、子供達が楽しく遊んでいる公園だ。
 おでんにラーメン、たこ焼き、焼きそばのお店があって。
 若者や仕事帰りのサラリーマン達が、ベンチに腰かけて食べたり、飲んだりしている。
「近くのレストランから見える公園の景色、キレイそう」
 少し離れた場所にはレストランがあり、外壁に電気が設置されている。
 窓からは公園の花壇や池を眺めることが出来るようだ。
「今度、一緒に入ってみようね」
「ああ」
 翔が自然に理知の手を引いて、公園の中を散歩して。
 反対側の出口から、商店街へと出た。
「この辺りのお店は、ほとんどしまっちゃってるね」
「けど、2階の電気は点いてる」
「家族と楽しい時間を過ごしてるのかな」
 そう言って理知が微笑むと、翔も笑顔を見せた。
 翔と理知は、今年の6月に結婚をして、2人でアパートで暮らし始めた。そう、家族になった。
 普通に一緒に過ごす夜もいいけれど……。
 こうして夜、出歩く時間は減ったかもしれない。
 でも今日は遊びたいというよりも、自分達が暮らし、過ごす街の、普段見ることのない夜の姿を観たかった。
「あっ、カラオケの音――昼間は静かなお店なのに」
 商店街にある小さな焼き鳥屋から、カラオケを楽しむ人々の声が聞こえてくる。
 仕事を終えた人々が集まって、楽しく過ごしているのだろう。
「ふふ、新しい発見ってわくわくするよね!」
 理知のそんな言葉に、翔は笑顔で頷いて。
 もう少し、一緒に夜の街を歩くことにする。

 勿論、散歩の最後にはイコプラショップに寄って。
 遅くなりすぎない時間に、2人はアパートに戻ったのだった。