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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

リアクション


【18】


……ろ、ロリコン!?
 人からどう見られてるかなんて実際聞いてみないとわからないものだが、聞き捨てならない自分の評価に佐野 和輝(さの・かずき)は激しく狼狽した。
 まだ20そこそこの人生。苦労もしてきたし、人から後ろ指を指されるようなこともしてきた。
 しかし、しかしである。そんな社会的に致命傷な後ろ指の刺され方は望んじゃいねぇし、実際違うと声を大にして言っておきたい。
 レアリティ【アンコモン】とか言われても困る!
「ちょっと待て、俺はロリコンじゃないぞ! 俺には妻子がいる!」
『勿論、確認しております』
 顔を真っ赤にする和輝とは対照的に、目の前に現れたAIはニコニコと微笑んでいた。
『ですが、調査によりますと奥様はまだ“未成年”のようですが……』
「うっ! そ、それはだなぁ……愛に年齢は関係ないと言うか、た、たまたま結婚相手が成人してなかっただけだっ!」
『なるほど。しかし佐野様は他にも「ハーレム王」という変態属性があります。パートナーの皆様も随分年端の行かない方々のようですが?』
「……は? ハーレム王?」
 一緒にこの世界に閉じ込められたパートナー達を思わず見る。
「まてまてまて!! いつ、どこで、俺がアニス達をはべらせてた!? あーもう!! 誤解だと言っているだろうが!!」
「そうだよ! 和輝は変態じゃないよ!!」
 ハーレム佐野の一員認定されたアニス・パラス(あにす・ぱらす)はムッとほっぺを膨らませた。
 外見年齢15歳。けれど見た目以上に内面は幼く、言動も「うにゃあ」とか言うし、その筋の人々に愛される逸材である。
「だから俺はロリコンじゃないって!」
「……嘘つくシステムなんて、もう壊れちゃえばいいんだ!」
 アニスは神降ろしと聖霊の力で魔力を蓄え、呑気に浮かんでいるAI画面に敵意ビシバシ、今にも爆発しそうである。
「こら! 攻撃準備をするんじゃない! スノーも黙ってないで止め……」
「と言うか、和輝がロリコン認定って、私も幼女に見えたって事? 良い度胸ね。一度、痛い目を見てみたいということね?」
「お前もかよ!」
 普段は暴走しがちな仲間をまとめる保母さん的存在のスノー・クライム(すのー・くらいむ)も、今は幽鬼のような表情で怖い。
 ロリコンハーレム野郎に囲われている=ロリと言う、適当なAIの評価により、スノーの横に表示されるパラメーターには堂々と『ロリ』の二文字。
 外見年齢18歳の彼女にとって、この二文字は屈辱すぎる。まるで「あたしロリだもん」と言い張る痛い奴のようではないか。
「久秀は大丈夫だよな……」
 とおそるおそるもう一人、同行する松永 久秀(まつなが・ひさひで)を和輝は見た。
 なにやらブツブツと、
 私がロリ? 和輝の趣味の所為で随分、私も若く見られちゃったわねぇ?
 大体、ロリコンじゃないって待機LC見てから抗議したほうがいいんじゃないかしら?
 うちの魔道書ちゃんも精霊ちゃんも見た目10歳以下なのに。ここに連れて来てたら言い逃れ無用よねぇ? 
 なんなら鷹型ギフトのあの子だって外見年齢1歳の女児だし。
 ……彼女には『ロリ』+『ドS』の変態属性が付いているようだ。
「……飛び火しそうだから、うん、関わらないでおこう」
 しかし世の中は広い。広い世の中に点在する変態を濃縮したこの世界には和輝の同志もいたりする。
 芦原の忍者紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だ。
「わかる、わかるぞ、佐野和輝。俺にはお前の気持ちがよくわかる」
「な、なにぃ……? って、だからハーレムなんか作っとらんわ!」
「わかってる、わかってる、俺たちは変態なんかじゃない、そうだよな?」
 唯斗はAIにビシィと指を突き付ける。
「聞け。俺には嫁さんが三人いる。脳内嫁とかそんなレベルじゃねぇ。分かるな? リアル嫁が三人だ! どうだ! 変態じゃあこれは無いだろう! 嫁さん三人貰えるなんて幸せ過ぎる話だがただの変態じゃ無理だろう!」
 うむ、ただ(通常)の変態ではなさそうだ。
「よって、俺は変態じゃない! 普通、普通の人ですよ!?」
「普通ではないと思う……」
 和輝は目を細めた。
「なんだ、嫁の話が聞きたいって?」
「言ってねぇよ!」
「ふふふ、そうまで佐野が言うなら教えてやろう」
「微塵も聞きたくねぇよ!」
「まず昴はな、美人で強くて巨乳でマジ癒しだし、もうすぐ恥ずかしがったりヤキモチ焼いたりと可愛いなぁもう帰ったらいちゃいちゃしよううんそうだそれが良い元気出て来たぁ!!
 エクスは料理上手いし元気だし堂々としてて気持ちいいよなぁ。最初のパートナーなだけあってよく分かってくれてるしツーカーって奴ですよねアレ。いつもありがとうございます。猫っぽくて小動物系なのも堪りません。帰ったら可愛がろううん滅茶苦茶可愛がろう。よーしよしよし、撫でまくっちゃうぞぉ!
 リーズは見てて和むんだよなぁ。ザ・真っ直ぐって感じ? なんだかんだで健気だしなぁ乙女ですよ、乙女。うん、それに髪綺麗だし狼状態でも毛並みもふもふで超気持ちいい。思わずこうぎゅっと抱き締めてしまうのが癖になってます、はい。だってもっふもふなんだもの仕方無いよね。帰ったら髪梳いてあげよう、うん。ポニテも良いけどたまにはおさげとかやってみようか、シニョンも良いよね」
 先ほどから、ピロリロリン♪ のSEが止まらない嫁自慢であった。
 和輝は卒倒しそうなほどにうんざりである。
「と言うわけで、俺は変態じゃないっ! 訂正しろ!」
『……なるほど。一夫多妻は法的にも許されていると。わかりました、紫月様、こちらのミスのようです。謹んでお詫び申し上げます』
「わかりゃいいんだ、じゃあ早く俺を嫁の元に帰して……」
『データを更新しました。紫月唯斗、変態属性「アラブ人」。こちらで間違いありませんね?』
「うおぉいっ! アラブ人じゃねぇし、アラブ人は変態属性じゃねぇ! アラビンの人に謝れっ!!」
 紫月唯斗、一夫多妻のアラブ人の変態。レアリティ【アンコモン】。
 とそこにもう1人、変ムスが現れた。
 傷痕の残るその迫力に満ちた顔面。肩を怒らせ歩くその姿。喋ればドスの利いた広島弁。
 完全に仁義なき世界に生きる風貌の清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)だ。
 おそらく極道の変ムスか何か……。
「わしは893ではない」
 そう言う彼の表情は世を憂うものだった。
「さっきからお主らの話を草葉の陰から聞かせてもらっとったが、ハーレムだ一夫多妻だと、軟派なことばかり。お前さんなんか、忍者の癖してその有り様。ニッポン男児の、侍の魂はどこに行ったんじゃあ!」
「だからハーレムなんて作った覚えはねぇ!」
「忍者にも国際化の波が来てんだよ。つか、人んちの問題に首を突っ込むな」
「この期に及んでまだ言い訳をするのか……」
 青白磁の憂国は頂点に達した。
「わしが、わしが思い出させちゃる! ニッポン人の……侍の魂をっ!!」
 何を思ったか、おもむろにズボンをガッと脱ぎ捨て、青白磁は股間のポン刀を露に。
「……なっ!?」
「わしらは侍じゃあ! ちょんまげを思い出せぇ!!」
 叫びながら、和輝の頭の上にちんこをびたんっ! 唯斗の頭にびたんびたんっ!!
「うわああああああああっ!!」
「ぎゃああああああああああ!!」
 男子に喝を入れた青白磁は、今度は女子を見た。
「男とおなごは表裏一体、男がダメになったのはお主らの所為でもあるんじゃあ! 歯ぁ食いしばれえ!!」
「きゃああっ!!」
 アニスとスノーの頬にびたんびたんっと往復ちんた。
「な、な、何するのよ! と言うか、下半身丸出しの侍がどこにいるのよっ!」
 熱くなる頬を押さえ、スノーは吠えた。
「これだからおなごは男のことが何もわかっとらんと言うんじゃ。もともと男子は、心身の全てが金玉に支配されるように出来とるんじゃけぇの。金玉っちゅうのが本体で、それにオマケがくっ付いとるのが男なんじゃ」
「……そうなの?」
 とアニスは和輝と唯斗を見た。
「んなわけあるかっ!!」
 清風青白磁、憂国のちんまげ変態。レアリティは当然の【レア】である。
 するとそこに久秀がやってきた。彼女は青白磁の前に行くとしゃがみ込み、そのちんこを見た。
「な、何を……?」
「これが侍の魂?」
「そ、そうじゃ! 大和撫子が自分から顔を近づけるな!」
「ふぅん……」
 そしてこう言った。
随分、ちっさいのね、侍の魂

 ヴァーチャル世界に王国が築かれつつあった。それもとても個人的な。
 国民の条件は一つ、ショタかロリであること。
 国王は、四天王の一角を担う黒髪清楚な乙女こと風森 望(かぜもり・のぞみ)
 この国で歓迎されるのはロリショタのみ。
 空京を模した町のある区画には、望自ら少年狩り・少女狩りで見出したよりすぐりの子ども達が集められている。
ふっふっふ、育成ですよ! 光源氏!!
 じゅるりとよだれを拭って、望は集まったロリショタをうっとりと眺めた。
 小動物のようにくりっとした黒目、まだ世の厳しさを知らない無邪気な笑顔、正直、たまりません。
 現実世界でこんなことした日にゃしょっぴかれて臭いメシを食う羽目になる事案なるも、この世界には警察も軍隊も依頼を出してくるウザイ校長達もいないのだ。
 その上、変態レアリティ【レア】の彼女に口出し出来る人間はほとんどいない。まさに楽園。理想郷。
「大きいお友達はどうしますの?」
 ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)は、檻に閉じ込められた大人たちを顎でしゃくって言った。
「決まってるじゃないですか! 年齢が外れてる変ムスは育成材料です!」
 檻の中から悲鳴が上がった。彼女、ロリショタ以外に与える一切の慈悲を持たない。
「合成させなきゃ! レッスンさせなきゃ! 近代化改修させなきゃ! 自分以外の変態を見せる事で刺激を与える事が、変態力のアップに繋がるんですよ、多分!!」
 と言うわけで、条件に適合しない大きなお友達は容赦なく引き立てられ、少年少女を強化させるための合成素材に。
「まぁ、アルバムに登録するだけで、手駒としては別にいりませんしね。育成材料で」
 この手の育成系ゲームには素材用キャラなんてよくあるが、こうしてリアルに見せ付けられると可哀想である。
 ま、そんなことはどーでもいい、望には。大事なのはロリとショタである。
「おねーさんがイチから、手取り足取り育成して差し上げますよぉ〜う」
 ロリショタを見るその目は牧場で、名馬を眺める……もしくは出荷前の高級和牛を眺める馬牛主のようだ。
 しかし彼女、こんだけ捕まえたら好き放題出来そうなものの、時々話しかけてお菓子をあげる以外はただ眺めるだけだった。
 慎ましいと言えば慎ましいけれど、不気味だ。
「当たり前です。ロリやショタを見つけて、即座にハグやペロペロに走るのは三流以下。ストーキングは三流、罵られて感じるようになれば二流、お菓子で釣ってきたら一流です。しかし、YESロリータ、NOタッチ! ストライクゾーンから外れるまで手を出さずに! 信頼を得る為に献身的に! 自分好みに育て上げ! ストライクゾーンから外れた所でポイッと捨てた時の、信頼を裏切られたあの! 無垢な笑顔が固まり! 崩れ! 泣き顔へと変わる瞬間を楽しんでこそ超一流というものでしょうよ!」
 なんという変態力(へんたいちから)の高さ、そしてスパンの長さよ。
「そのために、向こう3年はここに居座ります!」
 この普通じゃない時間感覚も変態たる所以である。
 ところが、その一点の曇りなき(曇りしかないとも言うが)ロリショタ王国に侵入者があった。
 眠たげな眼で虚空を見つめるその男、クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)だ。
 突然、見知らぬ世界に放り出されたクドだが、ここでするべきことはすぐに本能でわかった。
 男は下半身から出来ているとは本当で、自分にわかならいことでも、股間が真っ先に反応し教えてくれるのだ。
「お兄さんは、この世界に存在する三種の神器のうちの一つ『性剣エクスカリバー』を股間に秘めています。そしてはいているのはそれを納める鞘、エクスカリパンツ。つまるところ、お兄さんは三種の神器『剣』を司る変態だったのです!!」
 彼はぱんぱんと叩き、アツくなるその股間を押さえる。
「それは即ち! 己が変態であることを堂々と晒す事で! 常識をなぎ払い! 世の紳士淑女たちの導となる剣! 愛らしく艶やかな異性の体に興奮し! 無垢なる幼子の愛いかんばせに焦がれ! 己の裸体を他者へ晒す行為に幸福を感じ! この世全てのパンツを性の象徴として信仰する!」
「ちょっと! ここは私有地ですよ!」
 望は叫んだ。
「恥知らずの変ムスめ! かくなる上は取っ捕まえてロリショタちゃん達の栄養に……!」
「ここはわたくしにお任せになって」
 ノートが言った。
 彼女もまた変コレに支配された人間。彼女の名前の「シュヴェルトライテ」とは「剣を統べる者」という意味がある。
 変コレに支配された彼女は病的な刀剣マニアとなってしまったのだ。
「そう! わたくしは全ての剣を手に入れませんといけませんの!! 他人が持っている剣を奪って、奪って、奪いまくりますわよ!!」
 既にここに至るまで奪った剣が999本。電脳界の弁慶だ。
 そんな彼女が1000本目に選んだのは、クドの腰に光るその一振り。
「あなた、何を持っていますの? 隠したってわかりますのよ、わたくしには。さぁその剣を置いていきなさい」
「剣? 剣なんてお兄さんの装備欄には一つも……は! ま、まさか!」
 クドは股間の性剣エクスカリバーを見た。
「ちょっと待ってください! これは着脱不可なんですよ!?」
「呪われた装備ってことかしら? 俄然欲しくなってきましたわ」
「無理です!」
 逃げるクドを追って、ノートは走っていった。
 合成材料は彼女に任せ、望はロリショタの教育に戻る。
 その時、ロリの中に不思議な物体を抱きしめる女の子を見つけた。
 ピンク色の髪にラピスラズリのような翠の瞳、将来有望そうな美少女ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)だ。
 きゅんっと胸が高鳴った望は、コマンド→「会話」を選択。
「はぁはぁ……何をそんなに大事そうに抱えているんです?」
「あたしの大好きなもの」
「大好きなもの? 良かったらおねーさんにも見せてもらえるかしら?」
「……おねえちゃんもこれ好きなの?」
「ええ、勿論!」
「じゃちょっとだけ使わせてあげる」
 そう言って、ネージュがどいた先にあったのは……「便器」だった。
「……え?」
 頻尿体質という、女子が公言するにはハードな体質の彼女にとって、便器は日々の生活に欠かせない友。
 事実としては、他にパートナーが多いことからそれぞれ専用のトイレを用意している程度なのだが、AIによる変態解釈により、ネージュの変態度は上がりに上がってしまった。
 そのレアリティは【レア】。
 完全に変コレに支配されてしまっている。
「ほら、おねーちゃん使っていいよ?」
「え、こ、ここで……? ロリショタちゃんが見てるのに?」
「……嘘つき」
 ネージュははらはらと泣き出した。
「好きって言ったのに使わないんだ……おねーちゃんなんかきらいっ!」
 ネージュは携帯用ウォシュレットを取り出し、望目がけてロリ汁ぷっしゃあああああーーーっ!! ロリ汁は望の口を直撃! 
「がぽっがぽっ! わ、わかりました、つ、使いま……ごぽっ! 使うからやめ……げぽごぷっ!」
「本当?」
 ネージュはにっぱぁと天使の微笑みを浮かべた。
「え、ええ……」
 ウォシュレットで溺死という死因の中でも最高に情けない死に方をするところだったが、このロリスマイルを見られるなら、それも許せる。
 そして更なる笑顔を見れるというなら、多少の恥には耐えうる所存。
 望はスカートの中に手を突っ込み、するするとパンツを下ろすと、便座に腰を下ろした。
 ネージュは期待の眼差しで、他のロリショタちゃんも興味津々と言った様子で見てる。
 ーーああ、見られてる! 私のこんな姿が愛しのロリショタちゃん達に……! なんてことなのでしょう!
 これはこれで興奮してくる望だった。
 望は大人の汁をぷっしゃあああ……っと、あ、音消すの忘れた。
 ーーああ! 私の音が汚れを知らないあの子たちの耳に! あの無垢な耳を汚すのが私の尿音だなんて!
 それはそれでやっぱり興奮してくる。
 ひと通り終えて、パンツを上げると、ネージュはきらきらと目を輝かせていた。
 そうだ、この笑顔を見るためにこの公開おしっこプレイにも耐えたのだ(ちょっと喜んでたけど)。
「はぁはぁ……これで満足かしら?」
「うん、でもまだだよ」
「……え?」
「おしっこしたらその都度、素手でお掃除しないと。ただ水で流すだけなんてお便器に失礼なんだよ?」
「す、素手で……!」
 ーーこの子、どこまで私に辱めを……!
 しかし、若干の興奮を覚える望であった。

 さてその頃、クドとノートは壮絶なバトルを繰り広げている最中だった。
 2人ともレアリティは【レア】、一歩も退かぬ熾烈な攻防が続く。
 剣を向けられた以上、こちらも抜くしかないと、クドはズボンを下ろしてエクスカリバーを剥き出しに。
 それでもまだ“鞘に納まっている”という噂もあるが、まぁそこは追求しないのが情けというもの。
 ノートは距離を取り、轟雷閃やアルティマ・トゥーレで剣身から放出した雷電や冷気で攻撃してくる。
「折角コレクションしようという剣を刃こぼれさせたり、血糊で錆びさせたりするわけにはいきませんもの」
「そっちがその気ならこちらもエクスカリバーの放射攻撃『ミルクスプラッシュ』で応戦させてもらいますよ」
 刀身を素手で掴み、前後に動かすという剣術史に類を見ない奇妙な構え。
 気を切っ先に集め、発射……と思ったその時、ザンッ! と鋭さの突き抜ける衝撃が股間に走った。
 かすめるように走った電撃が、根元からエクスカリバーを焼き切り、剣がぷるんぷるんと宙を舞って、ちょんまげのようにクドの頭に乗った。
「うおおおおおおおお……!! お、お、お兄さんの剣がああああ!!」
 股間を押さえてうずくまった。
「ふふふ、性剣エクスカリバー。1000本目に相応しい剣ですわ」
 クドの頭に乗った剣にノートは手を伸ばす。
 ーーこのままでは三種の神器の一つが敵の手に……! しかし今のお兄さんにはどうすることも……!
 諦めかけたその時、お兄さんの胸に光るものがあった。
 それは天音が世界にばらまいた変態パワーアップ素材の一つ「グロ」だった。
 妖しい紫のオーラに包まれたクドの股間からもうひと振りの剣が生えてきた。
 実際のエクスカリバーの聖剣伝説にはこんな話がある。
 エクスカリバーとは聖剣「カリバーン」が一度折れ、復活した後の姿なのだ、と。つまりEX(エクス)カリバーなのだ。
 クドのエクスカリバーもまた一度の敗北から復活し、真なる姿を手に入れた。固く長く黒光りしたグロすぎる様はまさに男の魂そのもの。
「お兄さんはもう負けませんよ!」
「ふ、ならばその剣を貰い受けるまでですわ!」
 しかし、EXとなった剣は凄まじい強さだった。ノートの持つウイングソードを一撃で叩き折る。
「な、なんですってぇ!」
 これまでに集めた999本の剣で対抗するが、真・エクスカリバーに適うものはなく全て叩き折られてしまった。
「ば、馬鹿な……」
 ノートは折れた剣の山の前にガックリと膝をついた。
 勝利を収めた約束された勝利の剣は突如輝き(黒光り)を強めた。そして股間から放たれた閃光が町の一角を指す。
「あれは……?」
 そこは、空京の中心とも言うべき『シャンバラ宮殿』だった。
 クドは本能的にわかった、この光が指し示すものが何かを。
「この光の示す場所に、他の三種の神器が存在するはずです……!」