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第2章 歌いながら

「きょーぉは楽しいクリスマス。ランランラーン、リンリンリーン、クリスマス♪」
 その日。祥子・リーブラ(さちこ・りーぶら)は、キッチンで歌を歌いながら、料理に勤しんでいた。
 今晩は大切な伴侶と一緒に過ごす予定だけれど、2人だけの分ではなくて。
 パートナー達の分の料理も作っていた。
「楽しい楽しいクリスマス♪ 料理もるんるん作りましょう〜♪」
 陽気に歌っていたが、祥子の体も手も忙しなく動いていた。
 本命のケーキは、チョコレートケーキだ。
 スポンジがまだらにならないように、良く混ぜて形に入れて、オーブンに入れる。
「焼いている間にチキンとクリームの用意を!」
 チキンに下味をつけた後、クリームの準備を急ぐ。
 溶かしたチョコに生クリームを加えて混ぜる。
 片手を休ませておく時間はないため、祥子は二刀流で自動泡だて器を操って、調理を進めていた。
「教導団に居た頃や、大学時代と違ってパートナー達とバラバラに過ごすことが増えたから、こういう時は手間以上に大変ね」
 ピー
 そうしている間にスポンジが焼ける。 
「はいはいはーいはい♪」
 歌いながら祥子はスポンジを取り出して竹串を刺して焼け具合を確認する。
「よし、大丈夫♪」
 スポンジを冷ましている間に、クリームを完成させて。
「美味しい化粧をしようね♪ クリスマスのケーキになりましょう♪」
 スポンジケーキに、丁寧にクリームを塗っていく。
 クリームを塗った後、パートナー達の分を箱に入れてケーキの上に飾りを乗せて。
 それから、自分達の分も完成させながら……。
 ふと思う。
(噂に聞く未来人……私達のところにも現れたりするのかしら?)
 昔、子供の主人公の元に、未来から自分の赤ちゃんがやってきという、物語を地球で見たことがあったなと、祥子は思った。
(赤ちゃん、かぁ)
 自分の子供の顔を想像し、祥子の顔に笑みが浮かび、手が一瞬止まった。
「……っと、妄想してる場合じゃない」
 窓の外は暗くなっていた。
「そろそろ時間かな? あの子が受け取りに来たら、少し手伝ってもらおう」
 パートナー達に料理を取りに来てと連絡を入れてあった。
 チキンもケーキも第一弾が仕上がっただけで、まだまだ量が必要だし、サラダやお菓子やスープも作る予定だった。
「焼くくらいなら大丈夫だろうし、お店で買うと外れはないけどちょっと物足りないものね」
 チキンは下味をつけただけの状態で渡す予定だった。
「飾りを付けましょ、モミの木に♪ 鶏肉揚げましょ、竜田揚げ♪ きょーぉは楽しいクリスマス♪」
 陽気に歌を歌いながら、祥子はてきぱき料理を進めていく。

 それは――自分と伴侶と、パートナー達の楽しい時間の下拵えだ。