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魂の研究者と幻惑の死神1~希望と欲望の求道者~

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魂の研究者と幻惑の死神1~希望と欲望の求道者~

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 第14章 チッチーピンチ 

 ぴろん、という音が聞こえた気がして、綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)はスマートフォンを取り出した。思った通り、画面に新着メールの通知が出ている。何の気なしに開くと、それはチッチー・プリンプトという男性からの依頼メールだった。息子が巨大トカゲに浚われたから助けてほしい、という内容である。
「場所は、イルミンスール……あれ、ここじゃない」
 ちょうど、さゆみはアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)と一緒に用事があってイルミンスールにやってきていた。見知らぬ人物の依頼がどうして自分に届いたのかとかは思うが、子供が浚われたのなら大変なのは間違いない。
「行ってみますか?」
「うん、手伝った方が良いかもね」
 用事も済み、これから何をするかも決めていなかったさゆみは、救出の手伝いをすることにした。現在地は校門前。こっちが寮だったよねと歩き出しかけたところで、彼女はアデリーヌに手を掴まれる。
「さゆみ、寮はこっちですわ」
「えっ! あ、ごめんごめん」
 絶望的方向音痴であるさゆみは、どこで迷子になってもおかしくない。1人で行動させれば、あちこちうろついた挙句にドラゴンに捕まるような事態にもなりかねず、アデリーヌはしっかりとさゆみと手を繋いで寮に向かった。

「わたしもお手伝いするよ! 巨大トカゲってドラゴンさんのことかな?」
 そして、フランスから戻ってきたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)も予言ペンギンと共にチッチーの所へやってきていた。偶然見つけた依頼が気になり、移動してきたのだ。
「ドラゴン……? ああそうだな! ドラゴンだと思うぞ!」
 チッチーは息子が浚われた時の様子を思い出した。それを聞いて、ノーンは「じゃあ、空を飛ぶんだね!」と確認する。巨大なトカゲが子供を咥えてのっしのっしと去っていったか、ドラゴンが子供を咥えて飛び去っていったかの違いは割と大きい。ノーンは、チッチーが追いつけなかったのだから飛行可能な方だろうと予想していた。
「その通りだ! 息子を咥えて飛んでいってしまってな!」
 そうして、それは彼女の予想通りだった。目撃証言を探す時の手掛かりを得たところで、スキルを使うための動作を始める。
「無事に助かるように、幸運のおまじないをかけておくね!」

「お父様に速やかに帰ってもらう為には、『おとうと』を救うしかない! ぷ、プリム! 頼りになる助っ人は呼んだか!?」
「一応呼んだけど……別にオレは、ホレグスリ配りに付き合わされるんじゃなかったらチッチーさんが居ても困らないよ? 無理に早く帰ってもらわなくても……」
 プリム・リリムは、テンパりまくるムッキー・プリンプト(以下むきプリ君)に反して全くテンパらずにそう言った。むきプリ君との同居に慣れきっている彼は、そこにむきプリ君αのような存在のチッチーが増えたところで大して変わらないと思っている。
 勿論、それと子供の救出は別の話だが。
「駄目だ! いつまでもお父様が居るとどんな災難に巻き込まれるか分からないからな! お父様が居座るくらいなら、俺は山でホレグスリを作るぞ!」
 チッチーに聞こえないよう、語尾に感嘆符が付いている割には小さな声でむきプリ君は言う。その直後、彼は「ぶぉっ!!」と効果音のような悲鳴を上げた。何かに思い切り激突――というかまあぶっちゃけ、花琳・アーティフ・アル・ムンタキム(かりんあーてぃふ・あるむんたきむ)に轢かれたのだ。
「花琳ちゃん!」
「プリム君、あたしが来たからにはもう大丈夫! 早速子供を助けに行きましょう!」
 空飛ぶ箒シーニュから降りた花琳は、顔のど真ん中に箒の痕をつけたむきプリ君を全く気にせず元気100%にプリムに言った。そして、ノーンと話していたチッチーに笑顔で近付く。
「プリム君のお爺様ですか? プリム君のガールフレンドの花淋っていいます。末永くよろしくお願いいたします」
「おお、器量の良さそうな娘だな! 孫をよろしく頼むぞ!」
 ぺこりと丁寧に礼をする彼女を前に、チッチーは豪快に笑う。案の定、何か勘違いしたらしい彼と笑顔の花琳にプリムは慌てた。確かに、女の子の友達ではあるけれど。そして、ただの友達、ともちょっと違うかもしれないけれど。それを英語で言うと、少し意味合いが違うわけで。
「え、ちょっと待って、ガールフレンドって……ま、まだ……」
「え、ガールフレンドでしょ?」
「そ、それはそうなんだけど……」
 いつもの調子で花琳に言われ、プリムは顔を若干赤くする。
「ムッキー!! その顔どうしたんでぇ!?」
「う、うむ。まあちょっとしたアクシデントというやつだ」
 その頃むきプリ君は、花琳に轢かれた場所で恋人の秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)と抱擁を交わしていた。充分に熱いキスをした後、闘神は驚き覚めやらぬ声を出した。
「えれぇことになりやがったな……まさかチッチーに愛人がいてかつ隠し子がいるとは……」
 これって浮気だよな? という疑問が脳裏を掠めたが、それは考えない事にする。
「まさかの新事実だな。俺も驚いたぞ!? まさか、『おとうと』がいたとは……!」
「弟なのか。色々落ち着かねぇのも分かるが、兎に角、今はとりあえずそいつを助けに行こうってんだ。話はそいからだ」
「ああ。俺もまだ詳しいことは何も聞いてないのだが……」
「よし、チッチーから話を聞こうぜ!」
 2人の話を聞いて、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)がチッチー達の方に歩いていく。闘神とむきプリ君もその後に続いた。

「小さな男の子か、猿を咥えたドラゴンを見なかったか? どこに行ったか知りてぇんだ」
「ドラゴン? もしかして、浚われたのか?」
 チッチーの息子は、まだ4歳だった。彼曰く、女の子と間違える程に可愛らしく、ガチムチの要素が全く見えない子供だという。彼から聞くとどの口が言うのかという気分になりがちだが、スマホに保存されていた画像を見ると、確かに遺伝要素皆無の可愛らしい子供だった。坊ちゃん刈のその子供は、今日は猿の着ぐるみを着ていたという。
「子供を咥えてたかどうかは見えなかったけど、ドラゴンなら見たよ。あっちの方に飛んでいったな。かなり大きいドラゴンだったよ」
 聞き込みを始めて少し経ち。
 ラルクが次に声を掛けた男性は、空を見上げて回想しつつ一方向を指差した。彼の指の延長線上には、商店や住宅地で賑わう一帯も含まれている。今居るここは、それに比べたら民家が少なく緑が多い。
「その後は、気にしてなかったし分からないなあ」
 そう続けた男性に礼を言って別れると、ラルクは示された方向を見ながら電話を出した。
「確か、闘神達があの辺に行ってたな」
 チッチーに子供が浚われた時の詳細を聞いた結果、聞き込みは、広範囲に手分けして行う事になった。現場は四方が樹に囲まれた森の中で、ドラゴンはその中でも頭一つ大きい樹に子供を登らせていた時にやってきて去っていったのだという。花琳とノーン、合流したさゆみとアデリーヌを現場に連れて行ったチッチーは、ラルクにドラゴンの去った方向を訊かれて答えられなかった。周囲全てが似たような景色だったからだろうか。
『こっちだ! いやこっちか!? こっちのような気がしてきたぞ!』
 という全く役に立たない証言だけをし、集まった皆は、まずはどちらに行ったのか確かめる事にしたのだ。
 ちなみに、チッチーにはイルミンスールで待機してもらっている。
「闘神か? ドラゴンはそっち側に行ったらしいぜ! ああ、すぐに俺も行く!」

 その少し痕、闘神からラルクの報告を聞いたノーンは、町でファンの集いを使っていた。
「だから、ドラゴンさんがどこに行ったとか、どこに住んでるかとか知ってたら教えてほしいな!」
 彼女の要望に応えようとどこからともなく現れたファン達に、ノーンは事情を話して情報を求める。そのうち、1人2人と前に出て、ノーンに言った。
「そのドラゴンかどうか分かりませんが、ドラゴンなら見ました。町を越えてあっちの方に逃げていきましたよ」
「そういえば……口から何かはみ出てるように見えました。あれが子供だったのかなあ」
「えっ、は、はみ出てたのっ!?」
 それだけでは状況は分からないが、何だかまずそうな感じである。
「ここ1ヶ月程、奥の集落の方でよくドラゴンを見かけますね。そこに行けば、もっと詳しい話が分かるかも……」
「奥の集落だな!!」
 そして、この発言にむきプリ君がすぐに反応した。
「よし、すぐにその集落とやらに出発するぞ!」
 むきプリ君は、ノーン以外の他の面々を連れてどっかどっかという擬音がしそうな足取りで移動を始めた。よっぽど、チッチーに帰ってもらいたいのだろう。
「ありがとう! お礼に歌を歌うね!」
 残ったノーンは、リリカルソング♪を使った上で幸せの歌を披露した。集まった人々は、しばし彼女の歌声に聞き入った。

 集落では、何人かの歩哨が巡回を行っていた。最近、周囲に現れるドラゴンを牽制するためらしい。その数は1頭ではなく、複数であるという。
「それで、ドラゴン達はどの辺りを根城にしてるの?」
 たとえ大雑把な位置しか分からなかったとしても、それは貴重な情報だ。そう思ってさゆみが問いかけると、歩哨の1人はこう答えた。
「ここから北に進んだ場所に、泉がある。その近くの洞窟に住み着いたんだ」
 どうやら、場所は特定出来ているらしい。
「仲間の何人かで後を追って突き止めたんだ」
「洞窟か……そういうことなら、中に入るのに準備しといた方が良さそうだな。ムッキー、明かりとか食料を用意しといてくれねぇか」
「よし分かった、任せておけ!」
 闘神に頼まれ、むきプリ君は集落にある道具屋に走っていった。
「実際に討伐したことはあるんですの?」
 アデリーヌは歩哨に確認する。人間の子供を浚うくらいに巨大なドラゴンだ。この集落の人々にとって、それはかなりの脅威だろう。過去に討伐を行っていれば、特徴や弱点を何か掴んでいるかもしれない。
「いや、討伐はしてない。向こうには、まだここを襲う気が無いみたいだからな。上空を通過したり周りを歩いているのを見ることはあるんだが……1頭倒して、他の仲間を刺激するのもどうかと様子を見ているんだ」
 そして空を見上げ、「そういえば、いつも獣を咥えているな」と思い出したように歩哨は言った。
『…………』
 皆はほぼ同時に口を噤む。彼女達の脳裏に浮かんだのは、チッチーの息子が今日、猿の着ぐるみ姿だったということだ。
 もしかして、とプリムは思う。
「……人間は口に合わないのかな?」
 人里が近くにあるのにそこは襲わず、別の場所から獣を調達しているとなればその可能性もある。チッチーの息子が浚われた理由とも合致するし、そうであれば、人である彼が無事である可能性も高くなる。
「倒したことが無いなら、弱点や特徴は分からないわね……」
 さゆみが考え込みつつ言うと、歩哨はすまなさそうな顔になった。
「ああ、それは分からないが……そう特殊なタイプじゃないと思うな。赤いトサカのある、緑の目をしたドラゴンだよ」
「赤いトサカ……確か、チッチーさんもそんなこと言ってたわね」
 合流し、現場で状況を説明しながらチッチーが同じ事を口にしていた。ほぼ確実に、集落を悩ませているドラゴンと子供を浚ったドラゴンは同じだろう。彼女達は早速、皆と一緒に泉に向かった。

「あそこが住処か……」
「ついに見つけたな、ムッキー」
「うむ。あの奥にドラゴンがいるということだな……」
 むきプリ君はラルク、闘神と同じく泉を挟んだ先にある洞窟から目を離さずに2人に応えた。泉は静かだが、奥がイコールだとは限らない。
 ――思えば、ドラゴン退治などという冒険ぽいことをするのも、人助けをするのも初めての経験だ。
(何だかむず痒いものを感じるものだな……)
 助ける相手が会ったこともない弟、というのがまた変な感じだ。今ここにいるのが自分であって自分でないような、そんな感覚だ。
「大丈夫だ……我が必ずおぬしを守る」
 神妙な顔を見て緊張していると思ったのか、闘神はそう言ってむきプリ君の用意した松明に火を灯した。そして洞窟に向かっていく。ラルクとむきプリ君は彼に続き、さゆみ達とノーンもそれを追いかける
「プリム君、私達も行きましょう!」
「う、うん……」
 花琳も、プリムをシーニュに乗せて洞窟に入った。ドラゴンが巣にしているというだけあって、人からすれば幅も高さも余裕がある。仲間達の上を飛んで先頭に出た花琳は、分かれ道の無い洞窟を更に進む。やがて、ぎゃーぎゃーという鳴き声なのか泣き声なのか分からないような複数の声が聞こえてきた。空中停止し、少し塗れたごつごつした石壁の脇で様子を伺うと、赤いトサカを持つ緑の目をしたドラゴンが2頭、猿の着ぐるみの子供を取り合ってぎゃうぎゃう言っていた。右へ左へと繰り返し所有権が変わっていく中、子供もぎゃーぎゃーと泣いている。余程恐いらしい。当たり前だが。言葉が解れば、ドラゴン達は『これは俺んだ!』『ちょっとくらい分けろ!』『やだ!』『なら全部もらう!』とか言っているのかもしれない。
「お、思ったより大きいね。それに気が荒そうだけど……どうするの? 花琳ちゃん」
「どうする? それはね……」
「えっ、えっ?」
 プリムに訊かれた花琳は、気後れすることなくドラゴン達に近付いた。プリムが慌てる中で、元気に――
「アリスびーむからの!」
 目からビームが出た。ドラゴン1頭の側頭部に直撃する。
「シーニュでのひき逃げだ、おらー!」
 卓越の運転術を駆使して、今日の初めにむきプリ君にしたのと同じようにプチ交通事故を起こす。
 予想外の攻撃に、ドラゴンは鳴き声を上げながら頭部を両手でめちゃくちゃに掻いた。猫が顔を洗うような仕草にも似ていたがそれはともかく。
 ちょうどそのドラゴンが持っていた子供が支えを失って落下する。
「あぶないっ!」
 それを、さゆみが下でキャッチする。「アディ!」とアデリーヌに声を掛けて彼女は洞窟の入口に向けて走り始めた。
「よしっ、撤退しよー!」
 花琳も戦略的撤退をすることにする。だが、それをドラゴンが許すわけもなかった。攻撃されたドラゴンが怒りの形相で追いかけてこようとするのを、ノーンがヒュピノスの声で眠らせる。怒り一転、とろんとした顔で体を折って眠りはじめたドラゴンの一方、今度はもう1頭のドラゴンが怒りの鳴き声を上げて追いかけてくる。相棒がやられた驚きと、今日のごはんを奪われた怒りだろう。相棒の後ろに隠れていたせいか、ノーンの歌声はあまり聞こえなかったようだ。
「わっ! むきプリさん、お願い!」
 花琳は一度スピードを緩め、むきプリ君に特技の誘惑で声を掛けるとドラゴンの前に押し出した。囮にするだけすると、彼女は再び速度を上げて逃げていく。
「アハハ♪ 楽しいね、プリム君♪」
「え、えと、う、うん……?」
「お、お願い、だと……?」
 思いきり可愛く誘惑した花琳だったが、かつて、彼女を『ダサいまないたのガキ』と評したむきプリ君は、残念ながらあまり誘惑されなかった(ちなみに彼は自身がそう言ったことを忘れている)。だが、大口を開けて刻々と迫ってくるドラゴンは何とかしないといけない。というか、このままでは危険である。
「ムッキーあぶねぇ!」
 口を開けたまま、ドラゴンは鋭い爪が光る腕を振り上げてむきプリ君を襲った。それを間一髪のところで闘神が庇う。2人はそのまま倒れこみ、ドラゴンの正面に立ったラルクが雷霆の拳を叩き込む。戦闘は彼の本分だ。
「任せろ!」
 更に滅殺脚で回し蹴りをすると、怒り狂ったドラゴンは口の奥を赤く光らせた。炎を吐き出すつもりらしい。
「ふん、テメェはどのぐらい強いか楽しみじゃねぇか……アア?」
 炎を吐くだけでは終わらないだろう。ドラゴンの次の行動を予測しながら、ラルクは凄みのある笑みを浮かべた。

「……はい、撮れたよー!」
 ――無事に子供を助けてイルミンスールに戻ると、花琳は皆で写真撮影をしようと提案した。むきプリ君一家4人を真ん中にして撮ったカメラを持って、楽しそうに皆と画像を見合っている。チッチーの息子――ムッチー・ムースも、父と助けてくれた彼女達の前で嬉しそうだ。別に、女子4人に囲まれて(ハーレムハーレム!)と思っているわけではないだろう。まだ4歳だ。むしろ父が思っていそうである。
「ふう……これで一件落着、というところだな! お父様もこれで帰ってくださるだろう!」
 安心したのか、一点の曇りもない輝く笑顔でむきプリ君は言う。この数年間で、一番と言っても過言ではない改心の笑みだ。だが、何かを思い出したのか直後、口元が少し引きつる。
「ま、まあ、どこに帰るのかは分からないが、うちでないことは確かだろうからな!」
 誤魔化すようにわっはっはと笑うむきプリ君と、そしてチッチー達を闘神は見比べる。本当は堂々と浮気をしているチッチーを懲らしめたいのだが、割と最低でも最悪でもむきプリ君の父親に変わりない。ここは、息子に処遇を任せるべきだと考えて闘神はむきプリ君を見つめ直した。
「まあムッキー……怪我なく戻ってこれて良かったな」
「そうだな、闘神のおかげだ。助かったぞ!」
 心からの感謝を伝えるむきプリ君を、闘神は愛しさを込めて抱き締める。
「ムッキー……今晩空いてるか? なんてぇか……我はもう欲求不満でぃ」
「闘神……」
 いちゃいちゃしたいという彼の膨らむ想いが伝わり、むきプリ君は彼を思い切り抱き返した。
「ああ、今晩と言わず、今からもうずっと一緒だ……!」
「ムッキー……!」
 男2人はがっしりと抱き合う。その傍ら、ノーンは「あれ?」と予言ペンギンの動きに注目した。ペンギンが、プラカードに何か日本語で文字を書いている。
「えーと……?」
『間違いなく、ムッチーは
 大きくなったら可愛さを
 失い、兄
 にそっくりに
 なるでしょう。ま
 る。』
「ま、る……?」
 満足気にしているペンギンの隣からプラカードを覗き込み、ノーンは不思議そうにする。
「これ、どういう意味だろう?」
 ノーンはこの予言と今日の経験を合わせて、陽太達に報告することにした。