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リアクション
【御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の一日】
―おはようございます。
「はい、おはようございます。……やっぱり、恥ずかしいですね」
「そんなことないわ。普段通り過ごせばいいのよ」
陽太の言葉に凄みを感じさせる妻、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が出迎えてくれた。
朝は子供の世話をしているらしい。
その手つきは非常に手馴れていて、優しいものだった。
「お邪魔します」
「お邪魔しますわ」
昼になると、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)とエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)がカメラの前に現れた。事業について相談をするらしい。
「――以上が現状の経過です。何かありますか?」
「そうですね。一点、気になったのだけど……」
三人の話し合いは至極淡々と、それでいて濃密に進められていく。
事業の手伝いをしてくれているパートナーたちと、慎重に打ち合わせをする陽太の顔は仕事人の顔つきだ。
話が一段落すると、三人の顔に柔らかみが生まれる。
―そういえば、この撮影に応募したのは陽太さんではないのだとか。
「ええ。実はエリシアが応募したみたいなんです。だから最初聞いたときはびっくりして……」
「でも撮影が今日だとは知りませんでしたわ。気まぐれな魔女よりも気まぐれですわね、この番組は」
いえ、前もってお伝えしておいたはずなのだが。
「とりあえず打ち合わせも終わったし、ティータイムにしましょう」
「ええ。僕も手伝いますよ」
「じゃ私はお茶請けを出すわね」
阿吽の呼吸。夫婦の絆。一切の介入を許さない陽太と環菜のやりとり。
陽太が愛妻家というのは紛れもない真実らしい。
美味しそうなお茶とお菓子がテーブルに並べられると、テーブルの周りには四人の笑顔が咲き乱れ、滞ることなく他愛のない世間話が続いた。
その中心は、世界で一番幸せを感じられる場所だろう。
「……舞花、いつもありがとう。本当にいつも助かっています」
「きゅ、急になんです?」
「いつも貴方は頑張ってくれている。私たちはそれに感謝してる、と伝えてなかったと思ってね」
「言葉で伝わらないこともありますが、言葉で伝わるものもあります。だから、ちゃんと伝えようと思ったんです。……なんか照れくさいですね」
陽太と環菜の労いと感謝を込めた言葉に、思わず舞花も赤くなる。
こうした素直な物言いが皆を引き付けるのかもしれない、我々はそう思いながらカメラを回した。
ティータイムも終わると舞花とエリシアは帰っていった。
時間も時間。家の中で喋るのは夫婦だけとなる。
「伝えられて良かったですね」
「そうね。……明日は何もなかったかしら」
「はい、特には。どこか出かけますか?」
「ええ。そうしましょうか」
さりげない会話の中でも相手の意を先に汲み取る陽太には感服ものだ。
その後も仲睦まじくゆっくりとした夜の時間を過ごした夫婦。
夜も更ければ、カメラに向かって「今日はありがとうございました」と言って寝室へと去っていった。
これが御神楽 陽太の一日――