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狙われた乙女~ヴァイシャリー編~(第1回/全3回)

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狙われた乙女~ヴァイシャリー編~(第1回/全3回)

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第1章 百合園女学院にて

 校長室の前にドラゴニュートの女性と、特注と思われる百合園女学院の制服を着た美しい女性が立っていた。後には百合園女学院の生徒会執行部に所属する女性が付き添っている。
「はい、挨拶は御機嫌ようから!」
「ご、ご機嫌よう!」
「語尾は優しく、微笑みを浮かべて」
 指導をしているのは、ドラゴニュートのブネ・ビメ(ぶね・びめ)。指導を受けているのはオレグ・スオイル(おれぐ・すおいる)。共にイルミンスールに所属している。
「ご機嫌よう」
 にこっと微笑んだオレグに満足の笑みを浮かべて、ブネは校長室のドアを叩いた。
 オレグは男性である。ブネは時間をかけてオレグに化粧を施し、百合園女学院の制服を着せてこの場までやってきた。
「どうぞ」
 返事を受けてドアを開ければ、華やかな乙女達が校長室に集っていた。
 部屋の隅に置かれたソファーに腰かけて、優雅にお茶を楽しんでる。
「イルミンスールから参りましたオレグ・スオイル(おれぐ・すおいる)です。ごきげんよう」
「同じく、ブネ・ビメ(ぶね・びめ)ですわ、よろしくお願いいたします」
「イルミンのまほー使いさんだね! 遠くから来てくれてありがと。あのね、静香ちゃんが危ないのっ」
 ラズィーヤの言葉を真面目に信じ込んで、白百合団の遊雲・クリスタ(ゆう・くりすた)は静香にくっついて護衛をしていた。
「んー、そうですね……。どうぞこちらにいらして下さい」
 遊雲の真直ぐな考えに苦笑しながら、パートナーのレイ・ミステイル(れい・みすている)が、ブネとオレグをソファーへと招く。
「よろしく……」
 もう一組、この場にイルミンスールの制服を来た女性がいた。メニエス・レイン(めにえす・れいん)と吸血鬼のミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)だ。
「このお菓子、とても美味しいですよ。さすが百合園女学院」
「いただきます」
 ミストラルが差し出した和菓子を受け取って、オルグはブネと共に、ソファーに腰掛けた。
「怪盗のターゲットは桜井校長かもしれないんでしょ? お2人の仲を知っておくためにも、普段どのように過ごされているのか教えて下さいます?」
 普段あまり言葉を喋らないメニエスが、さも心配気に興味津々静香に問いかける。
「えっと、こうしてお茶を飲んだり、話しをしたり、洋服を借りたりしてる。普通の女友達と変わらないよ、ねっ」
 ソファーの隅に腰かけていた静香が、テーブルセットの方にいるラズィーヤに相槌を求めるも、ラズィーヤは白百合団のメンバーとの相談に夢中であった。
「その鞭素敵ですわね、いい音がしそうですわ☆」
「ええ、なんでしたら試してみましょうか」
 静香は聞こえてきたラズィーヤと崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の会話から目を逸らす。なんだか今割り込んだら凄く悲惨な目に遭いそうな気がしてならなかった!
「ま、本当に僕ってことはないと思うから、大丈夫だよ。僕は「物」じゃないし」
 ソファーに座るメンバーに、静香はそう言って可愛らしく微笑んだ。