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栄光は誰のために~火線の迷図~(第2回/全3回)

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栄光は誰のために~火線の迷図~(第2回/全3回)

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 その後、生徒たちと蛮族の戦いは、ほとんど消耗戦を呈しつつ日没まで続いた。蛮族を操る黒い人影……『黒面』は複数いて、入れ替わり立ち代り攻撃して来たが、そのたびに魔法や広角攻撃などの範囲攻撃で対応し、倒すことは出来なかったが、日没と共に敵は退いて行くまで、どうにか拠点と遺跡を守り切ることが出来た。
 林は、見張りに戦況の一部始終を観察させていた。その結果、『黒面』は全部で20人ほど、全員が蹴りを主体とする体術と投げナイフのような武器を使う、極めて俊敏で身軽な敵だということが判った。
 「非常識に高レベルなローグだと思っておけば、間違いはないだろう。あのスピードを削がんと、太刀打ちするのは難しいな。明花に『黒面ホイホイ』でも作らせるか……?」
 冗談とも思えないような表情で林は呟き、遺跡から戻って来た楊明花に、わけのわからない下らんものを作らせるなと後頭部を思い切りどつかれることになった。
 さて、その明花を中心とした遺跡探索隊の方だが、『白騎士』に協力する生徒たちが、破壊した量産型機晶姫の残骸を入手。一方、李鵬悠ら風紀委員は、《工場》のコントロールルームと見られる部分に迫ったが、異常に守りが固く攻略を断念した。そして、明花は、妙な装置を装着して能力を増強した量産型機晶姫を発見した。
 「あの装置、あれは絶対に手に入れたいわ!」
 興奮気味に話す明花だったが、風紀委員たちが発見した中枢部に続く通路に戦力を集中して先に攻略することにし、戦力立て直しのために一旦戻って来たのだった。
 『白騎士』の協力者がほぼ遺跡の中に集中して功績を上げた一方、風紀委員の協力者たちは主に遺跡の外部で防衛戦に参加していた。『黒面』の侵入を防げたことには彼らも寄与しているが、前回の探索とあわせて、明花の評価は今のところ『白騎士』の方が高いようだ。

 そして、夜も更け、負傷者の手当てなどで戦闘が終わった後も騒がしかった拠点の中がようやく落ち着きを見せて来た頃。前田 風次郎(まえだ・ふうじろう)とパートナーの仙國 伐折羅(せんごく・ばざら)神代 正義(かみしろ・まさよし)は、林と妲己に呼び出された。
 「あなたがたには、義勇隊付きから外れてもらいます。理由は、自分自身が一番良く判っているでしょう?」
 妲己は残念そうにため息をついた。
 「そんなに危険な場所に行きたいのなら、懲罰部隊に入ってもらいましょう。懲罰部隊に入っている間は、士官候補生の階級を剥奪、一兵卒として戦ってもらいます」
 「義勇隊付きとなることがどういうことか理解した上で志願したにも関わらず、責務を果たそうとしなかったことは軍規違反に当たる。今回は大事には至らなかったが、もし後方でもっと多数の反逆者が出ているにも関わらず、お前たちが突出していたらどうなっていたと思う。……少し頭を冷やすんだな」
 林に言われて、三人はうなだれた。

 「これだけの敵を倒したんだ、敵も相当に疲弊していると見ていいだろう」
 夜半、蛮族の屍が累々と転がるバリケード前を見て、林は言った。
 「遺跡内の探索もあと一歩のところまで来た。あの『黒面』の連中を倒すことが出来れば、おそらく遺跡の内部を探索し終えて、中にあるものを運び出す間くらいの安全は確保出来るだろう」
 しかし、敵は数は少ないとは言え、蛮族のように簡単に倒せる相手ではない。三度目の激戦が繰り広げられることになりそうだった。