リアクション
○ ○ ○ ○ 「いやホント、ぽに夫さんマジすいませんでした。オレの勘違いで喧嘩吹っかけちゃって……。まぁその……水に流して貰えれば嬉しいッス」 ゴキを払い落とすメカダゴーン(めか・だごーん)と荒れ狂う人々を背に、死の淵から生還した陣は最敬礼で平謝り。 なんだろう、意識を失う前はもっと平和だった気がする。 「あ、いえこちらこそ。すいません。人違いでした」 ぽに夫の方も、陣と自分にヒールをかけ、炎が立ち上る中、陣にへこへこ頭を下げた。 「ごめんなさい……っ」 「申し訳ない」 クライスは、ローレンスや助けに来た友人達に諌められ、自分がとんでもない誤解をしていたことに気付き、コウにローレンスと共にひたすら謝罪をしていた。 「あんた達のお陰で、未知の生命体が逃げ出した。もう少し会話をしたかったんだけどなー。他にも会話がしたかった奴等もいただろうなー。契約が出来た者もいたかもしれないなー」 コウは腕を組んでじと目で呟く。 「ご、ごめん。みんなも、ごめんーっ」 クライスは真っ赤になって、事態収拾に走り回っている仲間達に頭を下げる……が、誰もきいちゃいない。場は大混乱中だ。 コウはくっと小さな声を上げて、笑顔を浮かべる。 「また会えるだろ。彼女達は目覚めたのだから……」 「別荘さん、どうか安らかに眠って下さい……。いえ、まだ安らかに眠れる状態じゃないですけどぉ〜。きっと、きっと平穏は訪れますぅ……」 混乱の極みにある別荘の残骸を背後に、シャーロットは涙を拭いながら、木の枝を立てて、別荘の墓とした。 側には、トメが作った「カレン」「ジュレ」の墓と、ファルが作った、「ネズミさん」の墓もある。 「……ん? もう一つお墓があるですぅ〜。お墓? お墓でしょうかこれ? まあ、いいですぅ。お花をお供えしておくですぅ」 最後の墓標には『とうまのばか』とだけ書かれている。 「……帰ろう」 「うん……」 アイリスは瀬蓮の手を取って、歩き出した。もう振り返ることさえしない。 「ああああっ! ミルミも大事なこと思い出した。ヴァイシャリー家のハロウィンパーティーに出ないと! 白百合団として騎士の子孫として、絶対外せないっ。さあ、帰ろうミクルちゃん、ラザン! 葵ちゃんもエレンディラちゃんも行くよ!」 「とりあえずここだけでも片付けようか……」 葵とエレンディラは、急いで休憩用のテントの片付けを始める。 「集落寄って、お菓子沢山買って、お土産も沢山持ってかえろうね。ミクルちゃん怖い思いしたから、沢山食べていいんだよ」 「……ありがと、ミルミちゃん」 2人が微笑みあったその時。 「ウフフ、キャッキャは俺が許さん! クライマックスは俺が登場してからにしてもらおうかっ!」 声が響き、現れたのは巨大な熊――きぐるみを脱いだイオマンテの肩に乗り、腰に手を当てて仁王立ちする美少年だった。 「あの……」 何かを言おうとするミクルに、ふっと甘い笑みを見せた後、その美少年は体を覆っていたマントの端を広げ、お嬢様式のお辞儀をする。 「それでは、皆さん御機嫌よう」 マントの下には何も纏ってはいない。 隠されていた裸体、下半身が百合園生の前に露になる。 「き、やああああああああーっ」 「へんたーーーーーーーーい!」 悲鳴が次々に上がり、物が投げつけられる。 「いかにも!」 堂々と言い、男は巨大な熊と共に高らかに笑いながら去って行く。 「黙って盗めばいいものを〜、予告するのは裸を見せたいからよ〜、僕は変態怪盗舞士〜♪」 去りながらの歌のような男の言葉により、今、ようやく全ての謎が解けた――。 「ぐぐっ、怪盗舞士グライエールは露出狂だったんだっ。早く、早くヴァイシャリーに戻ってこの事実を公にしなきゃー!」 喉を嗄らせながら、ミルミ馬車に向かって駆け出す。 「そんなことはどうでもいいー!」 どどどどどどっと、仲間の手厚い治療で回復したカレンが鬼のような形相で駆けてくる。 「どこに鏖殺寺院がいるってぇぇー!?」 「きゃーっ、ミルミ知らない、何も知らないんだらー!!」 「まだ言うかーっ!」 「ミルミはミルミじゃないんだよ、ミルミは3人いるんだから! ね、葵ちゃん」 「えっ……?」 「そっちが本物のミルミ・ルリマーレン!?」 「いや、そのえっと。とにかく逃げよう!」 葵とエレンディラも走り出す。 「待てーッ! 逃がすかーッ!」 大混乱の中。 ゴキブリも不良も踏み潰す勢いで、少女達の鬼ごっこが始まったのだった。 ――狙われた乙女〜別荘編〜全3回、大いに謎を残してすっきりすぱっとこれにて完!―― 担当マスターより▼担当マスター 川岸満里亜 ▼マスターコメント
担当マスターの川岸です。 |
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