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世界を滅ぼす方法(第5回/全6回)

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世界を滅ぼす方法(第5回/全6回)

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第17章 メテオストライク


 その場所は、地面、もしくは崖であったところが大きく抉れていた。
 まるで巨大な鉢の底のようになっていて、そして、そこには、巨大な蛇が眠っていた。

 空峡の乱気流の壁の中を泳ぐ、あのドラゴンフィッシュにも比肩するのではと思われる巨大さの蛇は、何らかの封印によって眠っていた。
 そして、何か見えない空気の流れのようなものが、あの蛇に向かって流れていて、それが、瘴気なのだと気がついた。
 セレスタインで発生される瘴気は、全てあの蛇に流れ込んでいて、それでセレスタインの空気が多少ましな状態になっているのだ。

 鉢の縁に立ち、蛇を見下ろす人影がある。
 1つは大きく、1つは小さい。
 赤毛の女性と、老人だった。
「――あれは!」
 ついに見つけた。
 どうやら、飛空艇で向かっている間に、また先回りされたようだ。
 ”渡し”を使ったのだろう。
 指差す声に、老人は振り返った。
 レベッカの描いた似顔絵に、よく似た人物。
「おじいちゃん!」
 嬉しそうなハルカの叫びに、老人は、怪訝そうに首を傾げた。
「……ハルカ? まさか、どうしてここにいる?
 お前はわしが、殺したはずじゃ」


「……えっ?」
 きょとんとしてハルカは、走り寄ろうとしていた足を止める。
 信じられない言葉に、正義や野々達は言葉を失って立ち尽くした。
「何だって……?」
「……ハルカ、死んでたです?」
「――ハルカさん! 駄目!」
 何が駄目なのか。
 しかしはっとした野々は、咄嗟にそう叫んで、後ろからハルカを抱きしめた。
 何故か急に、ハルカの存在が曖昧というか、ぼんやりというか、薄れていくような、酷く不安な、嫌な予感がしたのだ。
 抱きしめた、その瞬間。何かが野々の脳裏に飛び込んだ。

 ごめんなさい。

 その女性は、崖の上から、赤毛の女性に体を地面に押さえつけられながらも、必死に崖下に向かって手を伸ばしていた。
 その傍らには老人が立って、何の表情もなく、下を見下ろしている。
 洞窟の中なのに暗くはなく、その顔が、身体が、崖下からの光で、赤く照らされていた。

 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ハルカ、あなたを護ると誓ったのに。

 泣き叫ぶ、守護天使。
 届かない手を必死に伸ばすその光景が、ゆっくりと遠くなっていく。

 ――泣かないで。
 ごめんなさいは、いらないのです。
 大丈夫、ハルカちっとも怖くないですよ?

「――――ハルカ、さ……」
 何てことだろう。
 これはきっと、ハルカの記憶だ。
 ハルカの、最後の記憶。
 ハルカは呆然としている。
 ハルカにも今の記憶が入ってきたのか、いや、ハルカが思い出したことで、それが野々に伝わってきたのだろう。
 死を伝えられ、死を自覚した。
 自覚したらハルカは、どうなってしまうのか?

「……なるほど、もしや、”種”を持っているのかの?
 ひょっとして、あの守護天使も”種”にできたんじゃな?」
 それは予想外だったわい、と、呑気な口調で1人呟き、老人は傍らの女性を見た。
「サルファ、奪え」
「了解しました」
「おじいさん……! どうして!」
 ソアが蒼白としながら叫ぶ。
「ひどい……ハルカさん、おじいさんが大好きで……!
 ずっとおじいさんを捜していたのに……!」
 ふむ、と、老人はソアを見やった。
「……わしも、ずっとハルカが好きじゃったよ。
 悪いが、今のわしは、違っていてな」
「どういうことだ!」
 正義が叫ぶ。
 やれやれ、と老人はとぼけた様子で肩を竦めた。
「空京に来て、契約をされたんじゃが、失敗してな。
 その後そやつは死んだのだが……。
 どうやら、それでわしはおかしくなったようじゃな」
 おかしくなった、などと、平然とした顔で呑気に言う。
 顔色ひとつ変えずに、愛していた孫を火山の火口に突き落とすような、孫から、彼女の持つ大事なものを平然と奪い取る指示を出せるような、そんな人物に、彼は変貌してしまったのだ。
「鏖殺寺院とやらで、色々この世界について学習したんじゃが……。
”種”の作り方についての記述を見かけて、試しにやってみたらできたのでな。
 それから色々調べて、ここに来てみたというわけじゃよ。
 ”虚無”に、この”種”を蒔いてみたらどうかと思っての」
 この種を、と、老人は懐にあったそれを取り出して見せる。
 赤褐色の、その鉱石は、間違い無く”核”だった。
 あれが、恐らくオリヴィエ博士の転移魔法であの2人をここまで転移させ、飛空艇の燃料となって2人を砂漠からヒラニプラまで運び、そして、ハルカの魂だったものなのだ。

 オリヴィエ博士は、”核”を生成する為に必要なのは、場所と時間、そして媒体とする為の純粋なる物だと言った。
 ジェイダイトは、ひとつだけ、純粋なるものを知っていたし、またそのひとつだけしか知らなかった。
『”核”を作り出す為の媒体』として、彼は孫のハルカを選んだのだ。

 だが、ついでで火口に落とした、ハルカのパートナー、アナテースもまた、同じように”核”となっていた。
 死んだはずのハルカは、気がつけば空京の中に佇み、何も憶えていなかった。

 生きていて。
 楽しいことだけ憶えていて。
 ――どうか。

 その手には、”種”。
 これが自分をこの世に繋ぎ止めているのだとは知らないまま、ただ手から離しては絶対にいけないと、それだけを理解して。

「ハルカさん! 駄目、お願い、消えないで!!」
 腕の中で、抱きしめるハルカの存在感が、どんどん稀薄になっていく。
 野々は必死でハルカを抱きしめる手に力をこめた。
「でもハルカ、もう、死んで……」
 呆然と、困ったように、ハルカが呟いた。


 ハルカ達のやりとりに気を取られ、気づくのが遅れた。
「うわっ!」
 衝撃に、地に倒れたコハクは、自分から離れて遠ざかる人物の、長い銀髪にぎょっとした。
 慌てて確認すると、”光珠”が無い。
「ちっ! しまった!」
 警戒していたはずなのにとラルク・クローディスが舌打ちをする。
 ”光珠”を手に、鉢の縁に立つ『カゼ』を見て、ジェイダイトは驚いた顔をした。
「何じゃ。わしはおぬし等と同じ場所に来ていたのか」
「そのようだ」
「それはつまらんことをしたの。
 ――世界を滅ぼす方法など、いくらでもあるというのに」

 知り合いなのか。
 早川呼雪は、その会話に眉を寄せた。
 ジェイダイトが契約した後に死んだと言ったパートナーと、『カゼ』がネフライトと呼んだ、彼等の黒幕。
 それは同一の人物ということなのか。
「あなたの目的も、シャンバラの滅亡なのか。一体、何故そんなことを」

「いや、それは厳密には違う。
 奴の願いはシャンバラではなく、地球の滅亡じゃよ」

 ジェイダイトは、事も無げにそう言った。
「は、あ!?」
「お主のものを使うかね?」
 ここまで、その目的の為に動いてきたのは『カゼ』だ。
 自分はたまたま、同じ場所へ来たに過ぎない。
 なのでジェイダイトは、自分がここへきた目的も、彼に譲った。
「そうさせてもらう」
 言葉と同時に、『カゼ』の手にある”光珠”が割れた。
 中から、赤褐色の鉱石が転がり出る。
 ”核”だ。

 『カゼ』は縁から蛇のもとへ近づき、”核”を額から中に埋め込んだ。
 吸い込まれて行くように、”核”は蛇の中へ消える。

「目覚めろ、同朋。
 虚無の蛇、モルダヴァイト」

 ゆっくりと、蛇の目が開いた。




 シャンバラの大地に、網の目のように、人の体内の血管のように、張り巡らされる地脈の力。
 その中で、歪み、禍となり、世界を傷つける存在と成り果てた為に、この地に切り離されて封印されたそれを、再びシャンバラに放つこと。
 それが彼等の目的だった。
 聖地の、ひいてはシャンバラの魔境化は、やがて目覚める虚無の蛇の為の糧。

 天空の大陸は虚無の蛇によって砕かれ、降り注ぐ巨大な岩石群は、地球のあらゆる国々も、壊滅させてしまうに違いなかった。
 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

九道雷

▼マスターコメント

ハルカ「5回目リアをお届けなのです! やっとでコハク達と合流できたのです!」
コハク「初めまして?(笑) いよいよ最終局面です」
リシア「あんた死んでたのね〜」
コハク「うわっ……いきなり直球すぎだよ……」
ハルカ「死んでたですね……。ハルカも解らなかったのです」
リシア「NPC登録無駄だったんじゃない? てゆーか何なのあの自由設定! 本気でやるとは思わなかったわ!」
ハルカ「えへへハルカは有言実行の女なのです」
リシア「ア! ホ! か! 言葉の使い方が間違ってるわよ!
 てゆーかあれじゃ自由設定じゃなくて自称設定!! 自称でどんな技を会得してようが神業修行積んでようが知らん知識があろうが、アクションで使えるのはステータスに載ってるのだけだから!!!
 アクション講座をちゃんと読みなさい! 仮にヒロイックアサルトでぐらぐらの実の能力が使えることにしても、レベル1のあんたじゃ自分の足元が一瞬揺れるだけよ!!!!」
コハク「お、落ち着いて、リシア……」
リシア「……はっ、いけない、あたしとしたことがつい興奮してしまったわ。冷静沈着さがウリの絶世の美女なのに!」
ハルカ「それは自称設定なのです?」
リシア「ど・の・口が言うのかしら〜?」
ハルカ「いたいいたいいたいです〜」
コハク「リシア、その辺でっ」
リシア「あらいけない、あたしとしたことがつい我を忘れてしまったわ。あたしを恨まず成仏してね!」
コハク「リシア〜〜〜」
リシア「何よ。
 それにしても次回って何処めくっても戦闘ばっかでつまんないラストになりそうねえ!
 あたしバトルってぜんっぜん興味ないわ!」
コハク「……直球すぎだよ……」
ハルカ「マスターはノリノリで書いてるのにです」
リシア「そんなのあたしの知ったことじゃないわ!」
コハク「……でもほら、戦闘以外のアクションをかけてくれる人もいるかもしれないし……」
リシア「まあそうね。でも通常アクションの他に、全て終わった後何がしたい、とかいうエンディング用アクションとかかけて貰ったらちょっとは幅も広がるんじゃないの?」
ハルカ「それはダブルアクションなのです」
リシア「最終回だし、カタいこと言わない! まあ採用されるのは概ね、どっちか片方だけどね!」
コハク「ううーん……えと、強制ではないので、やりたい人だけってことで……」
ハルカ「蒼フロ世界はこれからも続いて行くのですから、エンディングアクションなくてもいいのです」
リシア「いちいち反抗的ねあんた達」
コハク「それと、最後は、NPC対談も少し長めにして色々語ろうかという話も出ていますので、もしも何か質問などありましたら、ついでに書いてみてくださいね。どんなことでもいいですよ」
ハルカ「さぞくさん以外の人も来るですか?」
コハク「どうだろうね」
リシア「砂賊じゃないって何回言ったら……。馬鹿は死んでも治らないってやつなの!?」
ハルカ「そういうわけでまた次回なのです!」
コハク「ついに最後です。残り1回、よろしくお願いします」
リシア「全く、都合の悪いことは聞こえない耳ね!」