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世界を滅ぼす方法(第5回/全6回)

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世界を滅ぼす方法(第5回/全6回)

リアクション

 
 
「リシアさん、こないだは変な質問ばかりしてゴメンナサイ。
 師匠のトレジャーハンターとしての偉大さにビックリして、ワタシ混乱してました」
「は? 何? 何なのよ突然!? ってか師匠!?」
 夢見るダンボールロボット、あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)に迫られて、リシアは大いにうろたえた。
「筐子の夢は、トレジャーハンターになることなのですわ」
 筐子のパートナー、アイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)が、至近距離に迫るダンボールに悲鳴を上げるリシアに、穏和に説明する。
「そんなの誰に断らなくたって勝手になればいいじゃんよ!」
「いーえ、師匠の卓越したトレジャーハンティングセンス! 偉大な業績! ゼヒ! ご教授頂きたく弟子入りさせてください!!」
 正しく言えば、筐子の夢はトレジャーハンターになることではなく、宝探しの末にひと山当てることだ。
 その実体は、資金繰りに詰まって強盗に走っていたリシアだが、実際にお宝を掘り当てたリシアの姿は、筐子に忘れかけていた何かを思い出させた。
 何か、とは具体的に言うと借金返済である。
「何でもします! メイドになって家事全般だってこなしちゃう心意気だし!」
「……それはファイヤーウッドがいるから必要ないわ」
「お願いいたしますわ。私も微力ながら、お役にたてるよう頑張りますし。
 帳簿付けなら任せてくださいませ」
「……それはサンダーエッグがいるから必要ないわ」
 じりっじりっと後退しながら、リシアは筐子とアイリスの二段攻撃から逃げようとする。
 しかしそうは問屋が下ろさない。
 筐子はひしっとリシアにとり付いた。
「うんと言ってくれるまで離しませんッ!」
「ああああもう、わかったわよ!!」
 押しに弱いと踏んだ通り、強引に押せ押せ攻撃で行けば、ついにリシアはヤケクソのように叫び、やったーと筐子はガッツポーズをする。
「それでそれで! ワタシ何やったらいいですか!」
「好きなところに行って、好きに発掘しなさい」
「意味ない!!」
 再び泣き落としに入る筐子である。


「弟子入りはともかく……」
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)がリシアのところへやってきた。
 これから、自分達はセレスタインへ向かう。
 恐らく死闘になるだろうその時に備えて、リシアの力を借りに来たのだ。
「勝手なことだと解っていますが、あなたの持ち物で、戦いに使える物を全て貸して欲しいのです」
「……はあ!?」
 真摯な表情で迫るロザリンドと、パートナーのテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)に、リシアはきょとんとした。
「少しでも戦力が必要なんです。
 ここに至るまで、私達は沢山の犠牲を出してきて……そんなのはもう嫌なんです。
 失うことも、嘆くことも、もう二度としたくありません。力を貸して下さい」
「あんたそれ、他力本願っていうのよ!」
 リシアは顔をしかめて叫ぶ。
 それでもロザリンドは引かなかった。
 魔境化を食い止める為に、今も苦しみ続けるヘリオドール。
 呪詛を受けながらも、コハクの為に生き、そして死んだアズライア。
 今も背中に呪詛を抱え続けるコハク。
 巻き込まれ、犠牲になって死んだ、大勢の名も知らぬ人々。
 思い出す度に、苦いものが胸を刺す。
「何とでも言って下さい。
 私は超人でも英雄でもありません。
 私の力だけでは足りないんです。その力を、補いたい。
 だから、セレスタインで共に戦う皆さんに、道具の貸与をお願いします」
「ロザリーの言う通りよ。連中を放っておいたら、悪いことになるばかりじゃない。
 土下座でも何でもするから、力を貸してよ」
 この地に生きる一人として、彼等は徹底的に倒しておかないといけないと、テレサもリシアを説得するが、リシアは2人を見て溜め息を吐いた後、
「あたしだって超人でも英雄でも、ましてや何でも屋でもないわよ!」
と頭を掻いた。
「そうそう、悪者をばったばったやっつけられる都合のいいアイテムなんて持ってるものですか!」
「それは、使い方だと思います。
 どんな物でも、上手く使えば」
 了承の言葉を聞くまで、ロザリンドは一歩も引かない覚悟だ。
 呆れたようにロザリンドを睨み、リシアは急に真剣な表情をした。
「……あたしが持ってるのは、コレくらいよ。
 確かに使い方ね。何に使いたいの。
 それがきっちりしてるなら、あげるわよ」
 取り出したのは、”核”だった。
 それは紛れもなく、今迄散々、自分達を振り回して来たその物。
 武器や防具を想定していたロザリンドは、咄嗟に答えることができない。
 リシアは溜め息を吐いて、くるりと2人に背を向けた。

「便利な人物だとは、少し思っているかもしれないが」
 何でも屋とは言わないが、便利屋とはちょっとだけ思っているかもしれない。
 どう違うのだと突っ込まれたらそれは気持ちの問題なのだが、イレブン・オーヴィルは、問答無用でカッティ・スタードロップ(かってぃ・すたーどろっぷ)に引きずられてくるリシアを見て心の中でそう思った。
「それでこれからどうするの?」
とリシアに訊ねたカッティは、その返事が返ってくるより先に
「まあ旅は道連れ世は情けだしね。最後まで見届けるわよね。
 てゆーか、2回も一緒に行動したらあたし達ってもう友達じゃない?
 じゃあ一緒に行くしかないね!」
と勝手に結論付けて、リシアを引っ張ってきたのだった。
「セレスタインに向かうには、まず空京に行かねばならないが、何分距離があるし。
 ここまで使わせて貰ったスナネズミは移動にとても役に立った。
 まだもう少し力を貸してくれ」
「あんた達、強引すぎよ!」
 呆れて叫んだリシアに、イレブンはにっこりと笑った。
「協力に感謝する」



 かくして、モーリオンからキマクへと戻ってきたコハク一行は、旅の準備を済ませ、リシアの連絡で助手のファイヤーウッドが連れて来た、馬車等を使う者以外の希望者全員に行き渡る分の巨大な毛玉にまたがって、空京を目指すことになったのだった。

 惜しむようにモーリオンの方を振り返るコハクを、護衛する位置を取りながら、パートナーのフレア・ミラア(ふれあ・みらあ)アシュリーナ・セントリスト(あしゅりーな・せんとりすと)夢語 こだま(ゆめがたり・こだま)と共に、時枝 みこと(ときえだ・みこと)が見つめる。
 励ますことは、余計なことかもしれない。
 それは励ましではなくただの同情にしかならないかもしれない。
 みことはそんな風に思っていたが、それでも、
「……思うんだけどさ」
ぽつりと呟くように言うと、コハクが振り返った。
「あの人は、死んだからって、無責任にすぐいなくなったりしないんじゃないかな」
「……そうかな」
「不謹慎かもしれないけど、死んでも死にきれないってよく言うじゃん。
 まだ、近くでコハクを見守ってるって、そんな気がする」
 本当のところはみことにも解らない。
 けれど嘘でも、そう言うことでコハクを力づけてやれたらとみことは思った。
「……そしたら、僕は、もっとしっかりしなきゃね」
 気弱なところを見せていると、アズライアを心配させ続けてしまう。
「そうじゃないよ」
 こだまが笑った。
「無理してる方が、きっとアズライアは心配するよ。
 無理しないで頑張って、一番最後に笑えたら、いいんだよ、きっと」
 それでも、みこと達が本当に危惧していたのは、コハクがアズライアの死を自分のせいだと思って自分を責めることだったから、少なくとも表面、そういった様子はなく、アズライアの遺志を継いで前に進もうとする姿にはほんの少し、安堵もしていた。
 自棄になった行動だけは取らないで欲しい。
 それはこれからも気をつけて見守って行こうと思っている。
「……先に死んでも、後に残されても、辛いのは多分、同じだよね」
 こだまが静かにそう言って、コハクは僅かに俯く。
 アズライアの分まで。そう言いかけて、こだまはその言葉を飲み込んだ。
 コハクはコハクで、コハクとして頑張ることが、きっとアズライアに報いることだと思い直したからだった。