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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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「……曹操殿と酒を交わしたい」
 チョウコウの言葉に、ウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)は目を丸くした。
「ちょこさん、まともに喋れる自信ある?」
 その問いかけに、チョウコウは首を横に振ったが、ウォーレンはパートナーのために{SNL9998978#曹操 孟徳}に連絡してあげることにした。

「曹操様お久しぶりです。それから、淵将軍もいらっしゃい、相変わらずかわ……」
 可愛いと言いかけたウォーレンを夏侯 淵(かこう・えん)がじっと見つめ、隣にいた朝服姿のカクを指差した。
「その台詞はこちらに」
「なっ……」
 カクは何か言いたそうだったが、淵に見下ろされ、黙り込んだ。
 先ほど、曹操にチョコを投げつけようとして、止めてもらった恩がある。
 バレンタインは世話になってる人にチョコを投げつける行事だと勘違いしていたカクは曹操に会うなり、チョコを投げつけようとしたのだ。
「投げるものじゃないぜ☆」
 とウォーレンが言うと、小さい体でわたわたしながら、カクは動きを止めた。
「ばっ……馬鹿め! 知っていたわ! ワザとだワザと!」
 そう言ってしらばっくれたカクだが、すでに関羽にはすっごく苦いチョコをフルパワーで投げつけてきたところだった。
「まあ、良いだろう、あんな奴……」
 生前から関羽が嫌いだったカクは関羽に投げつけたことは後悔していなかった。
 それと同時に、張繍が英霊になっているなら会いたいと思った。
「……張繍殿 貴方に逢いたいですぞ……」
 ただの馬鹿だが、好ましい性格だった人だ。
 どこかで幸せにやってるといいのだがと、カクは思っていた。
「さ、それじゃ行きましょっか。その前に……」
「前に?」
「曹操様とちょこさんは着替え」
 バレンタインの街に鎧で現れた2人を、ウォーレンは服屋に引っ張っていったのだった。

 清 時尭(せい・ときあき)が予約してくれた日本風料亭に行き、曹操たちは酒を楽しんだ。
「女の子がいなくて申し訳ない☆ でも酒の味は保証するぜ!」
「ふむ……」
 曹操は、淵とカクを見て何か言いたそうだったが、言ってはいけないと思ったのか、黙っていた。
「チョコレートはありがとう。ミツエが臣下に渡すものだといっていたのに逆ですまないな」
 曹操の礼を聞き、カクは長い袖で口元を隠して笑った。
「毒など入っておりませんので、ご存分にご賞味を。ククク」
 笑うカクのそばで淵は窓の外を見ていた。
「どうされた司令官殿」
 チョウコウが淵のポニーテールの髪を撫でると、淵は月を示した。
「月は千年経っても変わらぬな」
「ああ……」
 料亭に来るまでの道々、曹操に空京にあるテクノロジーについていろいろと説明してあげたチョウコウだったが、静寂の中、酒を交わす光景が、何百年、何千年経っても変わらぬ風景なのを愛しくも感じた。
「我らの地も今は教導団の母体たる巨大国家。俺たちは死んだわけだが、ここにこうしていて、10年前に見つかった曹操殿の遺骨を見に行ったりも出来る」
「そんな話があったな」
「うむ。いつか訪ねてみんか、墓参りも兼ねて」
「楽しそうだな」
 曹操も笑ってくれて、チョウコウも頷いた。
「地球旅行、か。何れ共にと誓おう淵殿」
「ああ。またそのときは地球で一献交わそうぞ」
 淵が杯をあけると、急に抱き上げられ、ひょいと肩車をされた。
「ハハハ、可愛らしい」
 上質でラフなスーツを着た時尭が淵を肩車したのだ。
「はい、どうぞ、主」
 時尭は手配しておいた赤い薔薇8本をウォーレンに渡し、ラッピングしたものを師匠であるチョウコウに渡し、肩車していた淵を下ろして、黄色の薔薇5本を淵に渡した。
「お近づきの印ですよ」
 ニヤっと笑って時尭が淵を見る。
 その後、時尭も座り、酒の席に入った。
 ウォーレンの勧めるチョコがけ柿ピーを味わいつつ、みんなそれぞれの酒に合ったつまみを食べて、酒と友との語らいを楽しんだのだった。

 部屋に帰ると、ウォーレンは時尭からもらった3本の薔薇を飾った。
 チョウコウは赤の3本と4本に分けて包んだ薔薇を渡していて、時尭はウォーレンにこう言って薔薇を渡した。
「好きな方にでもどうぞ?」
「好きな方にでもか……。サミュも獅子小隊のみんなもそれぞれのデートを笑顔で出来たかな。愛は良いな」
 そんなことを思いながら、ウォーレンは想い人が好きなココアをいれ、彼の人を思って、バレンタインの一日を終えたのだった。