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砂上楼閣 第二部 【前編】

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砂上楼閣 第二部 【前編】

リアクション

優梨子はタシガンの町を事前に把握しており、
しかも、罠や、剣の花嫁の替え玉に警戒していた。
天音のみぞおちに拳を叩き込むと、
だまされたふりを続けて誘惑する。
「おはようございますー、剣の花嫁さん。
 でも、また少し夢を見ていただけますか?」
優梨子は吸精幻夜を行う。
「本物の剣の花嫁さんの居場所が知りたいですねー。
 教えていただけますよね」
天音はぼんやりと、酩酊したような心地になる。
吸精幻夜をあらかじめかけておくことによる吸精幻夜のカウンターはできなかったのだった。
しかし、天音は、尋問には抵抗する。
「しかたありませんね」
優梨子は柔道の技で天音を拘束しながら、
しつこく吸血を続ける。
「うっ……」
天音はそれでも口は割らない。

「天音殿、たすけにきたですよー!」
「黒崎!!」
あい じゃわ(あい・じゃわ)の連絡で、
鬼院 尋人(きいん・ひろと)が駆けつけたため、
優梨子は撤退する。
「途中から、血を味わうのが目的になってましたが……。
 残念ですね」

「僕がさらわれたってことは、うまくいったのかな?」
「……二度とこんなことさせないからな!」
怪我をしつつも余裕の笑みを浮かべる天音を、
尋人は涙を浮かべて抱きしめた。



ジャルディニエは、
アーダルヴェルトの自室の窓を割って現れた。
驚いている白菊 珂慧(しらぎく・かけい)ラフィタ・ルーナ・リューユ(らふぃた・るーなりゅーゆ)の目の前で、
アーダルヴェルトの身体を抱えあげる。
アーダルヴェルトは十代前半の少年の姿であり、
ジャルディニエは軽々と担ぎ上げる。
「この者の血を抜き取り、別の者に輸血することで、神子を作り出してやろう」
そう言って、ジャルディニエは破った窓から再び飛び出る。
「伯父上!?」
ラフィタは、叫んで窓に駆け寄る。
「……だと」
「ラフィタ?」
続いて隣に来た白菊は、もう空の上で小さくなっている二人の人影を見ることしかできなかった。
「伯父貴は、『逃げろ』だと。
 この俺に!」
ラフィタは、さらわれたアーダルヴェルトの口の動きが、確かにそう言っていたのを確認した。
二人が向かったのは、タシガン北西部の島の方角だった。