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リアクション
そのころ、別の部屋では、本物の剣の花嫁を目覚めさせようとする者がいた。
エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)は、
いつもどおりの純白のスーツに白い手袋で現れる。
蒼空学園在籍ながら、薔薇学の教師なのではないかと思われるほど、
エメは普段から薔薇学に出入りしており、違和感はない。
それは、美術展示室の守護天使の像に逢うためなのだが、
今回は、金髪の剣の花嫁に会いに来たのだった。
「おー、エメ。
大河、薔薇学には慣れたか〜?
なんだ、アディーンも一緒か」
エメと一緒に入ってきた大河とアディーンを見て、
珍しく制服を着た変熊 仮面(へんくま・かめん)は言う。
「この方が、ファル君の言っていた剣の花嫁ですね。
きっと、精巧な人形のようにきれいなのでしょう……ね……!?」
エメが金髪の剣の花嫁の顔を見て絶句する。
「おい、なんつーことをするんだよ!」
「あはははは! 変な顔だ!」
大河とアディーンが言う。
変熊は、金髪の剣の花嫁の顔に、いたずら書きをしていたのであった。
「……ん? 最初からそういう顔だったぞ」
マジックを後ろに隠し、あらぬ方向を見ながら、変熊は言う。
「そうですよね〜。ブルーノ先生」
「おまえな……」
光学迷彩でこっそり隠れていたブルーノ・ベリュゲングリューン(ぶるーの・べりゅげんぐりゅーん)が姿を現す。
「変熊君! なんてことするんですか!
剣の花嫁や機晶姫は、私達と同じ、人なんですよ!」
エメは、変熊に真剣に怒る。
「いや、俺様は地球人だろうと剣の花嫁だろうと、
けっして差別せず、わけ隔てなく落書きするぞ!」
変熊は胸を張る。
「そういう問題じゃありませんっ!」
「こいつには俺からあとで厳しく言っておくので……」
エメと変熊の間をブルーノが仲裁する。
「本当にもう……」
エメは、布で、金髪の剣の花嫁の顔の汚れをきれいにふきとる。
「わはは! 水性だったのはせめてもの情けだ!」
「……アンタ、もう、黙れよ」
腰に手を当てて言う変熊に、大河は言う。
「やはり、長い年月、眠っているだけあって、
体温はひんやりとされていますね。
呼吸はどうでしょうか」
エメは、金髪の剣の花嫁にふれ、顔を寄せてまじまじと見つめる。
指先で、頬や目元、唇をなでてみたりする。
「ずるいぞ!
貴様はいたずらをしているではないか!」
「いたずらじゃないっつーの」
変熊を、大河は拳骨で殴る。
百合園生のレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、
一般人として、剣の花嫁の近くに紛れていた。
雪之丞には、警備を目的としていることを伝えてあるので、
パートナーのブルーノも承知している。
(現地の人と仲良くしなくちゃいけないのは、タシガンだけじゃないし。
ここで地球人は排除の動きが出て、それが各学校に飛び火しないとも限らない。
事は薔薇学だけの問題じゃなくなるかもしれない事を、天魔衆の人達は考えるべきだよ。
ボクはボクの居る学園の校長を困らせるような事はしたくないもん)
レキのパートナーのミア・マハ(みあ・まは)は、
両手いっぱいに屋台の料理や、タシガンの土産物を持ってきた。
「交流も重要な目的の一つじゃし、
他校生が遊んでいる図もタシガン市民に見せておいて悪くはないじゃろうからな」
「って、ミアは本気で遊びすぎなんだよー!
もう、真面目にやってよ!」
「まあまあ、レキも『一般人』を装うなら、
そう張り詰めた空気を出すものでない。
このザッハトルテでも食べてみるがよい」
サトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)の屋台で買ったザッハトルテを、ミアは差し出す。
「まったく、しょうがないなあ。
何かあったら、ちゃんと避難誘導をやるんだからね」
そう言いつつ、レキはザッハトルテを頬張った。
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